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海外大会のフォーマット? BO3/1BANについて

こんにちは、Nautilasuです。
僕はアメリカ在住のシャドバプレイヤーで、Shadowverse Open (SVO)という大会に去年の2月から出ています。

SVOでの実績はこんな感じです
2023.2月 SVO West 優勝
2023.8月 SVO West TOP8
2023.11月 SVO West Contenders Cup 優勝(この大会はBO5)
2024.6月 SVO Masters Cup プレーオフ進出

SVOではBO3/1BANというフォーマットが採用されていますが、これはRAGEやJCG、レートといった環境では見ることのないフォーマットかと思います。僕はBANのあるフォーマットが結構好きなので、自分の大会戦績を振り返りながらこのフォーマットでのデッキの選び方や、戦術を解説していこうと思います。


BANとは?

まずはBO3/1BANというフォーマットがどういうものなのか説明していきます。
このフォーマットではデッキを3つ用意してお互いが相手に使用してほしくないデッキを選択し、BAN(禁止)します。その後は、残った2デッキでBO3をやります。

ちなみにBAN選択時にデッキは開示されるので、このフォーマットでは強制的にオープンリストになります。なので、アーキタイプがわからないクラスの強みは活かせなくなっています。

雑な図で申し訳ないですが、こういう流れです。

通常フォーマットとの違い

環境の変化

BANがあるとマイナーデッキが少し勝ちやすくなります。Tier1相手に致命的な不利相性を持っているTier2、3のデッキが苦手デッキをBANできたりするので、通常のBO3だと弱いデッキにもある程度の人権が与えられます。

僕が予選を抜けた8月のSVO West (HOR)、何故かチェスウィッチが3人も予選抜けてます。ちなみに機械ネメシスが優勝しました。

プレーオフにマイナーデッキが勝ち上がったりはしますが、全体を見ればデッキの分布は実際通常のBO3と大して変わらないです。これはデッキ選ぶ時に参考になる競技環境のデータがJCGやRAGEだからですね。BANありのフォーマットはSVOでしかやらないので、独自の環境はあまり煮詰まってないです。

実質BO5?

BO3/1Banだとデッキが3つ必要になるのでBO5と同じ分の練度が求められます。ですが、毎試合1つのデッキは使えなくなるので、せっかく稼いだ練度が無駄になることもあります。
どうやって自分の練度を最大限に発揮するかというのもこのフォーマットで戦術を組み立てるのに重要になってきます。これは僕が1年かけてたどり着いた核心ですので、後で詳しく語るから覚えておいてください。

BANの駆け引き

僕がこのフォーマットを好きな理由なんですけど、BANの段階で既に勝負は始まっています。BANで勝てると有利なBO3に持っていけるので、持ち込むデッキを選ぶ時にBANの戦術を決めておくと勝ちやすくなります。

戦術とデッキの選び方

デッキの話をする前に注意点ですが、無理に相性のいいデッキを選ぶより、練度に自信のあるデッキを持ち込んだ方がいいです。策に溺れないように気をつけましょう。

ここからはデッキの選び方と、BANの考え方を3通り、派生も含めて解説していきます。

  1. 環境TOP3

  2. 特定のデッキをBANする

  3. 特定のデッキを狙う

1 シンプルに強いデッキを3つ選ぶ

1つ目のデッキの選び方は環境TOP3を使う、です。
主なメリットは単純にデッキパワーが高い持ち込みになる事ですね。自分が一番信用できるデッキを選べばいいのでメンタル面でもメリットがあると思います。

僕は個人的にはこの持ち方は避けたいと思っていて、その理由としてデメリットが2つあります。

  1. BANの噛み合い
    BANは基本的に不利相性を避けて有利対面を作るために使いますが、自分の持ち込みが相性関係バラバラだとBANしたいデッキもバラバラになって一貫性がないです。一貫性がないとBANを選ぶのが難しくなり、最悪対戦相手とジャンケンをするような状況になります。

    このデメリットに関しては相手との駆け引きを上手くやればなんとかなるとは思ってます。BANしたいデッキに一貫性がない時は僕の場合、対戦相手の視点で考えて自分だったらどのデッキをBANするか考えてみます。

    対戦相手がBANしてくるデッキを予想できれば有利に自分のBANを選べるし、相手が予想通りのBANをしてくれると気持ちいいのでメンタル面でも有利になれます。

  2. 狙われやすい
    こっちの方が僕としては大きいデメリットだと思っていて、先程触れた3つのデッキの選び方「特定のデッキを狙う」を選んでいる相手に自分のデッキが狙われる確率が高くなります。

    基本的に「特定のデッキ」は使用率の高いTier1デッキになるので、自分がTier1デッキを使っていれば狙われる確率も高くなります。なので単純に環境TOP3を選んでいると、不利対面を押しつけられるリスクも高くなります。

    これに関しては、デッキパワーでゴリ押せたり、そもそもそんなに不利相性がなかったりする事もあるので環境次第にはなりますが、デッキが3つあれば全部完璧なデッキというわけがないと思います。なので安直に環境TOP3を使うというのは避けたいと僕は思っています。

1.1 TOP3からの派生

これは僕が直近の大会(HOS)で落ち着いたデッキの選び方なのですが、強いデッキ3つ選んだ所から1つか2つ入れ替える形です。
BANの噛み合いはそこまで考えていないので2つ目のデメリットの「狙われるリスク」のケアの方が大きいと思います。

当時の環境は雑多環境で、ヴァンプ、ビショ、ネメ、ウィッチから選ぶのが基本だったと思います。実際僕も最初はビショネメヴで出るつもりでしたが、あまり信用していなかったネメをネクロと入れ替えて5-2、結果的にOW%で一次予選を突破しました。

ネクロの採用理由としては、流行っていたAFネメシスに強く出れるのと、狂乱のエレナが減っていたので環境に刺さっていると思っていました。ビショとヴァンプはJCG優勝した時のリストなので信頼してました。

この持ち込みでのBANの方針ですが、基本的には機械ウィッチやU10みたいなOTKデッキを避けて、アミュビショやAFネメシスといった真面目にゲームをしてくれるデッキと正面から対決するつもりでした。あまり極端な相性が無い環境だとこういったBANをする事もあります。

2 特定のデッキをBANする

あらかじめBANするデッキを1つ決めて持ち込みを選びます。

メリットとしては一貫性があるのでBANを選ぶのが簡単になるのと、自分のデッキの不利相性が一致しているので、BANのジャンケンで不利対面を押しつけられる展開を避けられます。

僕は最初の頃はこの選び方が丸いかな、と思っていましたが実際この選び方はオススメしません。

あらかじめBANを決める場合、基本的にTier1デッキを選ぶ事になると思います。使用率の高いTier1デッキを避けるのは圧倒的1強環境でどう足掻いても勝てないなら仕方がないかもしれません。ですが、圧倒的というほどではないならデメリットの方が大きいと思います。

ここで先程の「どうやって自分の練度を最大限に発揮するか」という話に戻ります。

Tier1デッキとの対面はBANがあるフォーマットかコントロールの効く壁打ち以外だと基本的に避けられません。なのでTier1相手の練度は嫌でもある程度稼ぐ事になるし、レートのような環境に潜っていると必然的にTier1対面の練度が一番高くなります。
そのTier1デッキをBANするという事は、せっかく稼いだ練度を棒に振るという事です。自戒を含めて言いますが、ただの逃げでしかないです。Tier1デッキは対戦して対策を練る機会が一番多いのですから、BANしてしまうのはあまりにも大きな損になります。

実際僕はこの選び方で持ち込みを決めた大会で、良い結果を残した試しがないです。

3 特定のデッキを狙う

狙うデッキを一つ選んで、有利なデッキを持ち込みます。個人的にかなり好きなデッキの選び方です。
BANするデッキは、それ以外のデッキから選ぶ事になるので、一貫性は残しつつ、柔軟性もあるデッキの選び方になっています。

BANがあるフォーマットはデッキを3つ持ち込むので使用率の高いTier1デッキと当たる確率は通常のBO3より高くなります。なので、特定のデッキをメタる持ち込みの再現性も高くなっています。

デメリットは、Tierの低いメタデッキを採用すると当然デッキパワーが下がります。狙いたいデッキを相手が採用していない可能性もあるのでリスクは付き物です。

ハイリスク、ハイリターンのようなデッキの選び方ですが、環境によっては上手く噛み合う事もあるし、無理にリスクを上げなくても大丈夫です。完全にメタる必要はなくて、Tier1デッキに対して五分かそれ以上で戦えれば良いと思っています。それで他のデッキに対してもちゃんと戦えるなら十分有利な状況を作り出せています。

また練度の話に戻りますが、Tier1デッキとの対面はいくらでも練習できるので、相性が五分以上で挑めるなら狙い得です

2023年8月のSVO West (HOR)、僕は当時Tier1だった結晶ビショップを狙う持ち込みで予選を7-0で突破しました。(プレーオフ1没)

当時の環境だとビショップはミラーなので5分、ウィッチも先攻ゲーにはなりますが大体五分、ネクロはビショップに微有利ぐらいの認識でした。結晶ビショップに対して五分以上の相性で戦えて、デッキパワーも高い、理想的な持ち込みだったと思います。

当時はレートでウィッチネクを使っいて、結晶ビショップと正面からやり合ってたので練度にも自信がありました。その結果予選で無双できました(なお、プレーオフ1没)。

3.1 最凶戦術?相手にBAN”させる”

これは本当に環境次第になるので再現性が低いのですが、上手く噛み合えば相手にBANを強要して有利にBANを選ぶ事ができます。

これを僕は大会初参加でやってしまったので変に味を占めてしまったみたいな所はありました。

SVO West 2023年の2月(EAA)です。この時がSVO初参加で初優勝でした。戦績は予選で6-1、プレーオフで4-0です。

この時の持ち込みの意図としては、八獄ウィッチを狙う形でした。ガン有利を取れるホズミエルフ、ウィッチメタでリストを改造した人形ネメシス、最後にミラーの練度には自信があった八獄ウィッチという感じです。

なんとこの大会、ホズミエルフが11回中9回BANされました。そして、僕はウィッチとネメシスに有利なBANを選ぶ事が出来たので、暴れ散らかして優勝まで行けちゃいました。この持ち込みが上手い事噛み合った要因は二つあります。

まずはホズミエルフというデッキがTier1の八獄ウィッチにガン有利で、Tier2レベルのデッキパワーもあって、他のデッキから見ても不快な凶悪デッキだった事です。八獄ウィッチを持ち込んでいる人から見たら絶対にBANしたいデッキだったと思います。実際僕もエルフはガン拒否してました。

二つ目は、当時の環境が八獄ウィッチ、財宝ロイヤル、ラスワネクロの3強で、丁度デッキが3つ必要なこのフォーマットでは八獄ウィッチと遭遇する確率がかなり高かったという事です。

この要素がうまく噛み合った結果、ほぼ9割の確率でエルフがBANされ、自分の思い通りにBANで有利を取る事が可能になりました。ここまで上手く噛み合う事は多分2度とないんじゃないかと思います。

3.2 最凶戦術からの学び

このレベルでの噛み合いは再現性が低いのですが、学べる事はちゃんとあります。

「どうやって自分の練度を最大限に発揮するか」という話にまた戻りましょう。

これは極論なんですけど、一つのデッキが100%BANされると知っていれば、そのデッキは練度を稼ぐ必要がありません。残りの2デッキに練習時間の全てを回せます。
実際は、ホズミエルフのように噛み合った場合でも11回中2回は出す事になったので練度を稼ぐ必要がないなんて事はありえません。ですが、練度を平等に稼ぐ必要は無いです

通常のBO3やBO5だと全てのデッキが毎回抜ける必要がありますが、BANがあると話が変わります。高確率でBANされるデッキがあれば、それは他の2デッキが高確率で残されるという事でもあります。なので練度がある程度低くてもBANされる確率が高いデッキを採用する事によって、練度の高いデッキが残されるようにするという事も可能です。

ここでHORの持ち込みに戻ります。実はこの時の大会、ビショップの練度はそこまで自信がありませんでした。普通に回せるぐらいには使っていましたが、ウィッチネクと比べると明らかに練度は低かったと思います。それでもこの環境だと結晶ビショップはかなり強くて、高確率でBANされると思っていたので練度に自信のある二つのデッキを強く通すために採用しました。この大会でビショップは8回中5回BANされているのである程度は思惑通りになり、予選7-0という結果を出せました。

どうやって選ぶ?

デッキの選び方は毎回同じようには行きません。使えるデッキは自分次第だし、デッキの噛み合いも環境次第です。
とりあえず大事なのは意図を持ってデッキを選ぶ事だと思っています。

僕がデッキを選ぶ時は相手が使ってくるかもしれないデッキ構成をいくつか想定してBANをシミュレーションします。相手と自分のBANを予想して、自分にとって有利になるのか考えてみます。こうやって遭遇する可能性の高いデッキ構成に対して有利を取れる構成を模索していきます。

ルムマで複数人と対戦してBANの傾向を調べるのも有意義です。

BANの考え方

実戦でBANをどう選ぶのか、いくつかパターンを紹介していきます。

不利相性で選ぶ

デッキの選び方その2で使うBANです。自分のデッキが不利なデッキをBANして不利対面を避けます。不利相性が一致していれば自分のデッキはどれをBANされても不利相性を避けれます。

パターン1

有利相性で選ぶ

デッキの選び方その3で使うBANです。有利相性以外をBANして、確実に有利な対面を作ります。

パターン2

この場合はドラゴンを残せば良いのでエルフBANでもいいです。

相性が一致しない時

最初に紹介した二つは相手のBANを気にせずに自分のBANを選べますが、ここからは相手との駆け引きになります。

パターン3

特定のデッキに対して二つが不利で一つが有利なパターン。この場合は相手のBANが予想しやすいです。

パターン3のBAN

ウィッチがBANされると、残されたデッキが両方ドラゴンに不利になるのでドラゴンをBANします。

パターン4

このパターンは相手のBANが読みにくいです。ドラゴンを残して、ウィッチかネクロがBANされると、出し順ジャンケンのBO3になるので面倒です。できればこの状況は避けるためのデッキ選択をしたいですね。

絶対に避けられるという事はないので、この状況になったら割り切って相手の横のデッキ等、他の条件を優先してBANを選んで良いと思います。

パターン5

一番ダメなヤツです。全然噛み合ってないのでそもそもこのパターンになる持ち込みはやめた方が良いと思います。

想定外のTier2以下編成と当たってこういう状況になったりしたら、仕方ないですけど。その場合はネクロBANされてウィッチは残されそうなので、ドラかビショップBANになるかな。相性無視したBANをした方がいい可能性もありますね。

相性以外で選ぶ

最近の僕がやりがちなBANの選び方です。

ハンドレスやホズミエルフみたいな壊しデッキを避けて、実力が出やすい対面を選ぶ感じです。Tier2以下のデッキをBANして、ちゃんと練度を稼いできた対面を選ぶという事もあります。

要するに「有利な対面」よりも「自分の練度を出せる対面」を作るBANの選び方です。

これが僕が「特定のデッキを狙う」デッキ選択が好きな理由です。しっかり有利対面を作りつつ、変なデッキを避けれるので自分の練度も発揮できます。

パターン2を作れると理想的。エルフかビショで面倒な方をBANします。

最後に

このフォーマットで考えるべき事について要点をまとめると

  1. 意図を持ってデッキを選ぼう

  2. 相手のBANを想定して考えよう

  3. 自分の練度が発揮できる状況を作ろう

といった感じです。

安定して勝つにはBO5レベルの練度に加えて、環境デッキの相性関係の理解度が求められますが、うまく持ち込みが噛み合えばダークホースが勝ち上がる可能性もある奥の深いフォーマットとなっています。

僕が約一年半を通して学んできたBO3/1BANというフォーマットについて解説してみましたがいかがでしたか?

本当はビヨンドがリリースされてSVOが再開するタイミングで日本の方達にSVOに興味持ってもらえたらな〜という感じで出したかったんですけど、ビヨンドと共にSVOも延期されてるので僕の記憶が薄くなる前に書き留めました。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。BANのあるフォーマットに興味持ってもらえたら嬉しいです。


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