DAISY JAINE インタビュー
Daisy Jaine :Rio
インタビューアー:OE
OE:この前ライブ会場で話した時、2、3年前にDaisy Jaineの事を知ったと話していましたが自分のSNS投稿を遡って調べたところ2017年9月にはこの様な投稿をしていました。

あれからもう4年も経つのですね。。
時が経つのは早いですがバンド結成からここまでまだDaisy Jaineの事を調べてもあまり出てこないのでバンドの事もっと知りたいという人が沢山いると思いこの様な機会を設けさせていただきました。まずはバンド結成のいきさつから教えて下さい。
Rio:僕がアメリカ留学から帰国した後、高校の軽音楽部で一緒にバンドをしていたYokoyama(Ba)とDaisy Jaineを結成しました。
OE:メンバーの紹介をお願いします
Rio:Rio(Vo/Gt)、Yokoyama(Ba)、Juon(Dr)の3人です。
OE:メンバーそれぞれの好きなアーティストやDaisy Jaineにとって外せない影響源などありましたらお聞かせください
Rio:Daisy Jaineで共通している影響源となるアーティストはTame ImpalaやTemplesですね。僕は他にArctic Monkeysや60年代の音楽から大きな影響を受けています。Juon(Dr)はThe Horrors、Yokoyama(Ba)はOasisやR.E.Mを愛聴してます。
Mind Mischief / Tame Impala
OE:The Horrorsいいですね。Arctic MonkeysやR.E.Mの名前が出てくるのはちょっと意外でした。これも時代なのかもしれませんね。
Mirrors Image / The Horrors
Brian Storm / The Arctic Monkeys
Orange Crush / R.E.M
OE:バンド名の由来を教えて下さい。
Rio:ネットで検索しても出てこない造語にするというのが絶対条件でした。Daisy Jaine結成前にMary Janeという仮のバンド名があったのですが、そこへ60年代のヒッピーの女性が付けているイメージのあった“デイジーの花冠”という意味を持つ“daisy chain”という単語を組み合わせてDaisy Jaineにしました。
OE:正直、そこまで60年代へのイメージで考えられていたとは思いませんでしたので驚きです。
カッコいいし素敵なバンド名だと思います!
ファーストEPを聴いた時にその完成度にビックリしたのですが、ここまで世界基準の音楽をやるバンドが日本から、しかも関西から出てきたんだと嬉しかったです。その辺りについて自覚はありますか?

彼等のファーストEP
UNDER THE SUN / DAISY JAINE
Rio:日本の音楽にあまり精通していなかったので、正直なところ自覚はなかったです。Daisy Jaineを始めた当初から、海外に目を向けた作曲やサウンドアレンジを意識してきたので、ある意味そういうガラパゴス化したところがDaisy Jaineの個性や曲の完成度に繋がっているんだと思います。
OE:そうだったんですね。正に思っていた通りです!
ファーストEP『Under the Sun』制作の経緯や制作期間、制作時のエピソードなどがあればお聞かせください
Rio:ファーストEP『Under the Sun』に収録されているほとんどの楽曲は、僕がアメリカのボストンに住んでいた時に作ったデモを日本に帰国してから完成させました。一から日本で作曲したのは「Deep Inside of the Blue」だけです。自分たちの理想を追求するためにレコーディングからミックス、マスタリングまで全てを自分たちで完結させました。
OE:もうすでに4年も経ってしまいましたがファーストEPをリリースした事でバンドの動き方に何か変化はありましたか?
もっと早くに出会えてたら良かったです。
Rio:Juon(Dr)が加入したことでライブ活動の頻度が増えたのは一つの大きな変化ですね。福岡のインディーレーベルDead Funny RecordsからファーストEPをリリースさせていただいたおかげで僕たちのことを知ってくれていた方々もいて、本格的に動き出してからは点と点を繋げるような感覚があります。
OE:英語で歌われていますが今アメリカではなく日本で活動されていて英語で歌う事に関して何か拘りなどがありましたら教えてください。又Rio氏はボストンで過ごした経験があるそうですがボストンの音楽シーンについて教えて下さい。
自分的には勉強不足で申し訳ないですがボストンと聞くとAerosmithぐらいしか出て来ません(笑)
Rio:英語で歌うこだわりに関しては、“海外を目指している”というスタンスがDaisy Jaineの根底にあるというのが理由の一つです。基本的に海外の音楽しか聴かないので、僕から出てくるメロディーが日本語の語感にフィットしにくいと感じたのも大きいです。英語は世界の共通言語なので、リスナーの母数的に考えると英語で歌う方が有利なのかなとも思います。
ボストンの地元のインディー・シーンは基本的にライブハウスではなくベースメント・ショーと言って自宅の地下室で行われるライブでした。ジャンル的にはマスロックが印象的でした。
ボストンは主要都市ということもあり、UKやオーストラリアからも大好きなインディーバンドが多く訪れるので、憧れのアーティストに触れる機会が多く、とても素晴らしい音楽環境だったと思います。
OE:へえ〜マスロックというのも意外ですね。またその土地で過ごした経験などが楽曲制作に何らかの影響を与えていたりしますか?
Rio:アメリカでの生活は間違いなく僕の作曲スタイルに影響していると思います。例えば、壮大感のあるサウンドスケープは、アメリカの自由さや土地の広大さであったり、無意識に感じてきたものが音として昇華されていると思います。
OE:日本とアメリカどちらが好きですか?
Rio:アメリカの方が好きですね。アメリカにいた時の方が音楽に限らず表現することに関して自由だったなと感じます。世界レベルのインディー・シーンを多く味わえる部分もやはりアメリカならではだと思います。便利な生活や食事に関しては圧倒的に日本の方が好きですけど。(笑)
OE:(笑)そうでしょうね。
昔のサイケデリックや60年代の音楽が好きだと仰ってて若いのに珍しいなと思いました。
(筆者も若い頃、同じ事を言われてました(笑))
その辺の趣向がDaisy Jaineの音楽性の核となっており新しい音楽の取り入れ方も自分達なりに上手く咀嚼していてこれが他の国内のバンドには無いオリジナリティだと感じます。
そういった音楽への憧憬は元々日本に居た時から抱いていたのか、アメリカで生活した事により得たものでしょうか?
Rio:60年代の音楽を掘り下げ始めたのはアメリカに渡ってからだったと記憶しています。音楽を掘り下げていくにつれて自然と60年代に辿り着いていました。60年代は音楽だけでなくファッションやアートの黄金期だと思うので、色んな側面からインスパイアされています。
OE:実際にお会いしてそういうオーラを感じましたしそういう若者が居るんだという事が何だか嬉しかったです。具体的にどういうバンドが好きですか?
(昔のバンドで)
*(因みに余談ですが筆者はその辺だと
Pink Floyd、Syd Barrett、Soft Machine、
Jefferson Airplane、The byrds、Strawberry Alarm Clockなんかが好きです)
See Emily Play / Pink Floyd
Rio:60年代だとThe Beatles、The Beach Boys、Pink Floydはもちろんですが、Margo Guryan、The Association、The Millenium、The Lovin’ Spoonful、The Flying Burrito Brothers、Marmaladeなどが好きです。
筆者の好きなThe Lovin' Spoonfulの名曲
"Didn't Want To Have To Do It"
OE:マニアックで最高ですね!(笑)
The AssociationやThe Flying Burito Brothersの事を話せる若者が出て来た事が単純に嬉しいです。そういう話って60代のおじいさんとしか、した事なかったので(笑)
実際にライブを見させて貰って感じたのは非常に音楽性が高く、このバンドはもう次のステップに向かってるな。(良い意味で)ある意味出来上がってるなと感じました。
バンドが出している音がもうこのバンドにしか出せない。やり方も自分達なりの独特なやり方があると感じたからです。
鍵盤奏者が居ないのにシーケンスでクリックを聞きながら演奏していたり。この前ライブ会場でその様な質問をしたのはそういうふうに感じたからでした。
(このニュアンスを伝えるのは難しいのですが、例えばLEEVE ROSELYNがまだ結成一年とかの段階で初期衝動を感じるのに対してDaisy Jaineにはある程度余裕があり、自分達が今やりたい事がハッキリと分かっているのではないかと感じました)
例えば新しいシングル「Banksia」ではよりエレクトリックでダンサブルなアレンジがされていたりしてこういうファーストEPとは違う音楽性は何処から来たものなのでしょうか?
Banksia / Daisy Jaine
また、音楽性が高いが故にお客さんがついて来れない様な状況にジレンマを感じたりしませんか?
Rio:「Banksia」は、これまでのDaisy Jaineの枠組みを越えてより現代にフィットした音楽にチャレンジしようというテーマのもと制作しました。結果として、“四つ打ちのダンサブルなサイケデリック”という方向性を提示できて、アーティストとして世界が広がったように感じます。
音楽性の高さに関して言うと、“アーティストが好きなアーティスト”という立ち位置と、“音楽に詳しくない方でも楽しめる”という立ち位置、つまり玄人も素人も楽しめる音楽を作る努力はしています。
音楽理論を用いた作曲者目線で聴いても楽しめ、サウンドの心地良さや乗れるリズム、キャッチーなメロディーといったような、知識がなくても楽しめるような要素も共存させています。
確かにジレンマは多少あるかもしれないですが、実際にライブに来ていただいだ際には、それぞれ自由にDaisy Jaineの音楽を楽しんで欲しいですね。
OE:なるほど。音楽以外でバンドに影響を与えているものがあれば教えて下さい。例えば映画であるとか
Rio:バンドは音楽だけでなく見た目やイメージも深く結びついているので、映画やファッションも大きく影響しています。曲を聴いて情景が浮かぶという感覚も大切しているので、記憶にある場所や景色も影響しています。
OE:歌詞について、曲によって違うとは思いますがどういった事に主観をおいて歌われていますか?
Rio: :歌詞で表現したいことは曲ごとに異なりますが、人生を通して自分が感じたことや、乗り越えたことを昇華して歌詞を書いています。ネガティブなことは書かないようにしていて、“アートは希望”になるという信念を持って歌っています。
OE:素晴らしいと思います。新しいシングル「She’s a Glow in the Night」はプロダクションもさる事ながらメロディが凄く進化していると感じました。
ここまでメロディアスな楽曲は日本のアーティストでは未だに聴いた事が無いのですがそういった自負はありますか?
She's a Glow in the Night / Daisy Jaine
Rio:「She’s a Glow in the Night」は自分の中でも特にメロディアスな楽曲だと自負しています。最初に降ってきたアイディアがサビのメロディーだったこともあり、それを主軸に制作したので一際メロディアスに仕上がったんだと思います。全ての楽曲について言えることですが、キャッチーなメロディーを作るということは常に意識して作曲しています。
“歌が命”という日本の音楽文化の中で、「She’s a Glow in the Night」がとりわけメロディアスと言ってもらえるのは嬉しい限りです。
OE:ボーカルスタイルが独特ですね。中世的で自分もそう言う歌を歌う人が好きだったりします。この前のライブで見た中ではダントツに叫ばないタイプだと思うのですが(笑) 歌う際に心掛けている事や理想のボーカルスタイルについてお聞かせください
Rio:ジョン・レノン、ジェイムス・バグショー(Temples)、ケヴィン・パーカー(Tame Impala)など、透き通った高音を活かしたサイケデリックなボーカルスタイルが好きで、それはおそらく自分の声質には高音が適しているという感覚が無意識下にあったからだと思います。
OE:国内のアーティストやバンドでシンパシーを覚える人は居ますか?
Rio:BROTHER SUN SISTER MOONやPROCYONなどは、同じサイケデリックの要素を持った関西のバンドとしてシンパシーを感じます。
OE:LEEVE ROSELYNと出会った時の事を教えてください
Rio:LEEVE ROSELYNとの最初の出会いは、東京のSisters In The Velvetというバンドのリリースパーティーで対バンしたのが最初ですね。そのライブの前からLEEVE ROSELYNの2nd EPのレコ発企画にはお誘いいただいていました。海外のストーナー・ロックの雰囲気があってかっこいいバンドだなというのが第一印象です。
OE:この前Templesの話を少ししましたが海外のそういったインディ系バンドではどういうものを好んで聴いてますか?
Shelter Song / Temples
Rio:Temples以外だと、Arctic Monkeys、Tame Impala、Blossoms、Babe Rainbow、FUR、Melody’s Echo Chamber、Unknown Mortal Orchestra、The Lemon Twigs、Inhalerなどですね。
これでもごく一部なので、ジャンル問わず幅広く聴きます。
OE:なるほど。Melody's Echo Chamberや
Melody's Echo Chamberのアルバムは
Tame Impalaのケヴィン パーカーが前面プロデュースした傑作!
The Lemon Twigsは僕も大好きです!
As Long As We're
Togeher/ Lemon Twigs
因みに2016のTame Impalaの来日公演は行かれましたか?今思い出したんだけど、この時セットリスト貰ったんですよ!
今でも額に入れて飾ってあります。
同じライブ会場に居たかもしれませんね(笑)
話がそれましたが「Under the Sun」のPVについて制作秘話などありましたら教えて下さい
Under the Sun / Daisy Jaine
Rio:ボストンやニューヨークで撮影した動画をかき集めて制作しました。「Under the Sun」のテーマが、“アメリカへの想起”や、“アメリカの友人たちとの繋がり”なので、僕のアメリカ時代の親友たちも登場しています。
OE: Moonage Studioについて教えて下さい
Daisy Jaine live at Moonage Studio
Rio:Moonage Studio(ムーンエイジ・スタジオ)は兵庫県にある僕の実家にあるホームスタジオです。楽器類はもともと揃っていましたがレコーディング機材がなく、個人練やたまにバンド練で使う程度だったんですが、今回2nd EP『Banksia』のレコーディングに差し掛かった際に、スタジオを借りるよりも自宅でレコーディングできるようにした方が安いんじゃないか?と考え、レコーディング機材を揃えました。結果的にレコーディングだけでなく、スタジオライブ映像も撮影できたので良かったですね。
OE:Daisy Jaineが表現したい事、音楽を通じてどういう人達とコミュニケーションを取っていきたいですか?
Rio:Daisy Jaineで表現したいことは音楽への追求心です。たとえ歌詞の内容が分からなくても、情景の浮かぶ音楽を創り出していきたいです。
音楽を通じて、僕らと近いマインドを持った人や、Daisy Jaineの音楽性やアート性に共感してくれる人達と繋がれたら嬉しいです。
OE:共感。正に僕ですね(笑)
今後どの様な活動をしていきたいですか?
またリリースなどありましたら教えて下さい
Rio:2022年にはファーストアルバムをリリースしたいと考えています。拠点を東京に移すことも視野に入れつつ、海外へのアプローチも展開できたら良いですね。
個人的な音楽活動としては、楽曲のプロデュースや映画のサウンドトラック制作などのお話が来たら嬉しいなと思います。
2021年11月17日(水)に2nd EP『Banksia』がリリースされます。“日本のサイケデリック・シーンの夜明け”に相応しい一枚だと思うので、ぜひ聴いていただけたら幸いです。
OE:確実にそうなりますよ!
今から楽しみです!
2000年以降、Tame ImpalaやMGMTがばら撒いたサイケデリックの種は確実に世界中で極彩色の花々を撒き散らしながら萌芽し、マーブル模様の様に混じり合っている。
最初に彼等の音楽を聴いた時に感じたピュアな印象そのままに、言葉で、これ以上無いくらい真摯に語ってくれたのが嬉しいし、彼等がどれだけ真剣に音楽の事を考えているのかが伝わって来た。
今回のインタビューを通して色々と考えさせられた。筆者がこの様な若者達が日本から現れ活躍しているのを喜ぶのには理由がある。
"自分が好きなものを当たり前にあるものとして感じられる世界の方が住みやすいからだ"
そして世界は確実にそうなりつつある。
彼等の存在自体がその最たる証左ではないか?
ライブ会場で実際に会った彼はすらっと背が高くSyd Barrettの様な雰囲気を持つ超イケメンだった事も付け加えておきます。
今回インタビューに快く応じてくれたRio氏に感謝します。new EPのレコ発でこの様な出会いを与えてくれたLEEVE ROSELYNのtakumi氏にも感謝です。
2021.9