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vivienne westwoodの死とpunkについて

若き日のヴィヴィアンはまるでジーンセバーグの様


昨年末にvivienne westwoodが亡くなった。
何故だかmalcolm maclarenが亡くなった時よりも悲しさが込み上げてきた。
好きなブランドと呼べるものがそんなにある方では無いがそれでもvivienneは好きだった。店に行けばテンション上がるし何より文化的なルーツを感じる事が出来るアパレルってそんなに無い気がするのですが気のせい?
vivienne westwoodの店に行くとramonesのポスターなんかが貼ってあったりして。
これって何気ない様で実は今日の日本で一般層へのロックに対する理解に一役買ってると思うのです。
全てのコレクションにアンテナを張り気にしていたわけでは無いにしろそれでもworld's endやseditionariesの洋服やグッズは少しながらコレクションしたりしていた。

有名なボンテージジャケットでキメる若き日のvivienne
ブティックSEXのスタッフjordan mooneyと真ん中は誰だ?
ブティックSEXの頃の有名なパラシュートジャケット。
戦時中のパイロットが着ていたジャケットのハーネス部分から着想を得たと言われこういったデザインには必ず過去の歴史的背景が含まれている


この機会に是非punkについて
書いてみたいと思った。
世間一般的なpunkに対するイメージは
どんなだろうか?
粗野でやかましくうるさい、何やら変な髪型、
変な格好した連中がやってる音楽?
もしやいまだにメタルとどう違うの?
なんて前時代的な事を言う輩はもう居ないだろう。。
実際この国におけるpunkのイメージは80年代〜2000年代ぐらいまではそんな感じだった。
たまたま見つけたこの動画を見て頂ければわかるだろう。

ホントにくだらないとしか言いようのない扱い。ダサいよね。この人達。。。
筆者はこの番組をオンタイムで見た訳では無いがpunkに対する冷ややかな(笑)な時代の空気を感じたしその度に腹が立ってしょうがなかった。
実際10代の頃は筆者もpunxだったのでその様な扱いも沢山受けた。何故なんだい?この国の多様性に対する拒否反応や島国根性による排他的な反応に心底嫌気がさす。
この変な国民性の事を遡るとそれこそ江戸時代の五人組や戦時中の非国民にまで言及しないといけないのでその話だけで一つのエッセイが出来上がってしまう。

単刀直入に書くがpunkとはエレガントで知的なアートフォームの一つだ。これは持論かもしれないが皆んなが思っている様な粗野で気のふれた様なイメージにはいささか誤解があると思う。
SNSを見てもいい歳こいたビールっ腹のおっさんがライダース着て髪を逆立てて変に顔を歪めて目をひんむいて映ってる。時には舌を出し、両手は逆ピースか何故か?!マハロー?!中指立てる?
そんな投稿も嫌という程見て来た。
筆者から言わせれば
"それがあなたのpunkですか? へえ"
で?
だ。
筆者注(筆者は全然punkではありません。少年時代はそうでしたが)
malcolmやvivienneが創造したのはそんな陳腐なものじゃなかった筈。
実際あんな風に写真に写っていたのはsidだけだ。アティテュードが邪魔になってその人の可能性を狭めてる場面によく遭遇する。そんなアティテュードなんか捨ててしまえばいい。自分の能力をジャンルのせいにするのもよくない。パンクだからこんなもんでいいとか論外。sid 以外で適当な演奏をしているpunk band、ミュージシャンなんて見た事ない。

演奏がテキトーなDAMNED これはもはやギャグ

もちろんsidだってこんなもんでいいだろう?適当に演奏しとけばいいやなんて思って無かっただろう。

右から2番目がシド、ファッションだけの人ですね。珍しくテッズファッションのジョニー

john lydonはロックミュージシャンの中でもずば抜けて知的な人だ。彼はお気に入りのアルバムとしてmiles davisのbitches brewを挙げているしお気に入りのミュージシャンとしてcaptain beefheartやCANなども挙げている。

筆者もフェイバリットな作品です。アバンギャルドjazzの最高峰

この作品もかなりアバンギャルドだと思う

ジャーマンプログレッシブロックの最高峰!まだボーカルがダモ鈴木になる前の作品。

punkにもちゃんとしたルーツがありそれは決してN.Y. dollsやramonesだけでは無いのだ。
前述した様なおっさんpunxには興味無いだろう。とりあえずCANぐらいは聴いとけ!
何故?talking headsやtelevisionにはフォーカスしないんだい?

psyco killerよりもあえてこの作品を挙げさせて貰う

激しさや早急さだけを求めるおっさんパンクスには理解できないのか?

そういったカウンターカルチャー、アートフォームとしての反抗、アナキズムに対しての理解、
その精神性を誰も受け継いでいない。
malcolmはandy warholのfactoryには懐疑的な様だったがjean cocteauには憧れていたらしいしアナキズムのルーツを辿って行けば必ずマルクス主義のギードゥボールやフランスのコラージュアートや活動家に行き着く。
ギードゥボールの率いたマルクス主義的思想を持ったアーティスト集団は初期は文化批判、後期は政治批判を中心に行いその活動が五月革命に与えた影響は大きいと言われていてmalcolmはかなりフランスの芸術家や思想家、主にコラージュアートに影響を受けている。そう、アナキズムとは哲学でありpunkとは物事の捉え方なのだ。

後年リリースされた彼のルーツ開陳アルバムその名も"PARIS"にはCatherine DeneuveやFrançoise Hardyも参加の一大スペクタクルラブレターフォーフランスな作品。

hiphopの黎明期にはこれまたコラージュ的作風全開のduck rockをリリースしていたし時代に対するアンテナの張り具合は凄まじく早い。

そういった諸々の影響源がありそれをramonesの様なシンプルでpopなロックンロールに爆音で落とし込んだのがsex pistolsだったのではないか?
当時10代で多感な頃に歳上だったvivienneの創造した洋服を着ていたjohnは確実に彼女の"言葉"にインスパイアされていた筈である。
vivienneのイデオロギー、メッセージはそのまま彼女の洋服にプリントされ、punkのセリフの一つ一とつとなりまるでプロパガンダの様に世界中に伝播して行った。

ブティックSEXのスタッフjordan mooneyとvivienne 
be reasonable demand the impossible
とプリントされたアナーキーシャツ

筆者はいつからかpunkに対してある種の神聖さを感じる様になったのも事実で、
心の中で"ああ何処か宗教みたいだな"
と思い始めた時期がある。
それは良い意味での宗教である。
anarchy in the u.k.で歌われたアンティクライストとかそんな陳腐なものでは無い。
否しかしjohnny rottenが偶像の対象である事は間違い無い。
それは代弁者としてであり、彼の事を盲目的に崇拝するものでは無いのも事実。彼自身そんな事は求めないだろう。

十字架にかけられたアンティクライスト

そうmalcolmやvivienneがクリエイトしたプロパガンダの触媒としてjohnny rottenが機能していた(いる)のではないだろうか?

そしてpunkとはnew waveの始まりであると共にGOTHの始まりでもあるのだ。

そんな途方もないカルチャーを脈々と生み出した音楽ジャンルが他にあるだろうか?
76年頃〜80年代〜そして現在に至るまでこのカルチャーはずっとずっと続いている。ずっとずっと誰かにバトンを渡して延命し続けている。
様々なジャンルの音楽、いたるところにその遺伝子を垣間見れる。
例えばそれは
house musicの早急なハイハットの荒さにその粒子を含んだものもあるかもしれないし、
drum & bassのアグレッシブなドラム、所謂"amen break"と呼ばれる激しいビートのビシバシ感かもしれない。
はたまたfrench electroのディストーションで歪みまくったノイズ直前のシンセにも。
the cureのスネアの音かもしれないし、shoegazerの紡ぎ出す爆音fuzzギターノイズにその遺伝子は受け継がれているかもしれない。
そうpunkのエナジーは
あらゆるジャンルの細部にその細胞として宿り血肉化している。
punkとは思想、姿勢であり型では無い。
筆者の友人、特に元々punkで育って今はpunkをやっていない友人達は皆その様な事を言っている。
そんな風に彼女の影響は間接的ではあれ至る所に垣間見れる。
自分の母親よりもかなり歳上だったvivienne westwoodがどれだけ知的な言葉を残して行ったか?どれだけの戦いをこの世の中に挑んでいたか?

自前の戦車に乗り首相官邸へ抗議に行った人を他に知ってますか?
こんな女性を他に知らない。

自前の戦車で首相官邸に抗議するおばあちゃん

彼女の様な人が居たから少しはこの国でも多様性が感じられる様になったと思う。
高級百貨店に入っているvivienne westwoodの店に行く度にそう感じさせてくれた。
そしてゴスロリの女の子達を産み出したのも彼女の影響があったからこそ。
今やnetflixのWednesdayに憧れてthe crampsの音楽をバックに世界中の女の子達がgothの格好して踊る姿がtik tokやinstagramで Buzzっている。

vivienneのgothドレス
イギリスではGOTHアメリカではエモ、日本ではゴスロリ

彼女が居たからこの世の中は少しだけ住みやすくなった。何十年もかけて。
そう思うのです。
そんな人がこの世界にはもっと必要なのです。
vivienne westwoodが亡くなってそんな事を考えていた年末年始でした。
rest in punk vivienne.


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