犬神家の一族 佐清と珠代のラブストーリー色が強い市川昆監督セルフリメイク版
あらすじ
信州・犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛(仲代達矢)は、不可解な遺言状を残して永眠する。犬神家の顧問弁護士である古館の助手・若林は、遺産相続にまつわる不吉な争いを予期して金田一耕肋(石坂浩二)に助けを求める手紙を送るが、何者かに毒入り煙草で殺害される。
犬神佐兵衛は生涯にわたって正式な妻子を持たず、松子、竹子、梅子という腹違いの三人の娘がいた。松子には佐清、竹子には佐武と小夜子、梅子には佐智という子供がそれぞれいる。
そして、犬神家には佐兵衛が今日の地盤を築いた大恩人である野々宮大式の孫娘・珠世(松嶋菜々子)も住んでいた。
問題の遺言状は佐清の復員を待って公開されることになっていたが、戦争で顔を負傷した佐清は、仮面をかぶって一族の前に現われた。
遺言状の内容は、犬神家の全財産と全事業の相続権を意味する三種の家宝、斧(よき)、琴、菊を、佐清、佐武、佐智のいずれかと結婚することを条件に、珠世に譲渡するというものだった。
だが、佐武は花鋏で殺され、生首だけ菊人形の首とすげかえられ、佐智は琴糸を首に巻きつけられ、そして佐清も斧で殺された。
犯行現場付近には、いつも珠世とその忠実な従者・猿蔵の姿があった。
やがて金田一耕介の推理によって全てが明らかになる。
76年に映画化された横溝正史のミステリー小説「犬神家の一族」再度の映画化。
感想など
犬神佐兵衛翁の妾筋の三姉妹を富司純子や松阪慶子や萬田久子とベテラン演技派女優が繰り広げるドロドロの遺産争い、復員服の男と佐清の入れ替えトリック、犬神家に隠された因習と怨念の秘密、犬神家の家宝「斧、琴、菊」を使った残酷美が際立つ殺人、犬神佐兵衛翁に愛されなかった三姉妹と愛された野々村珠代の愛憎劇、特に佐清を一途に愛する珠代と佐清の純愛が組合わさり、特にラブストーリー色が増したことで、よりロマンチックな味付けがされ、キャラクターの表情を雄弁に捉えた緊張感を盛り上げるテンポの良いカットバックや金田一耕助と旅館の女中のコミカルな掛け合いやより自分の意思を持ち犬神家の財産争いに翻弄されながら佐清との愛を貫く強いヒロインにアレンジされた珠代がハマった松嶋菜々子の演技と魅力など、よりエンタメ度が増した傑作ミステリー映画。
珠代さんや猿蔵たちが、金田一耕助を見送りに来た時の「あの人のことが忘れられない」というセリフにほっこりさせられる後味も忘れ難いリメイク版。