万引き家族 最初に捨てたのは誰か
あらすじ
再開発が進む東京の下町のなか、ポツンと残された古い住宅街に暮らす一家。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、生活のために“親子”ならではの連係プレーで万引きに励んでいた。
その帰り、団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つける。
思わず家に連れて帰ってきた治に、妻・信代(安藤サクラ)は腹を立てるが、ゆり(佐々木みゆ)の体が傷だらけなことから境遇を察し、面倒を見ることにする。
祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家は、JK見学店でバイトをしている信代の妹・亜紀(松岡茉優)、新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていた。
だが、ある事件をきっかけに家族の絆は引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と願いが次第に明らかになっていく。
死去した老人の家族が、老人の死を報告せず年金を詐取していた事件を核に映画化。
解説と感想
年金やパートや日雇いの給料だけでは生活していけず万引きで足りない生活品を賄って生きている家族を通して、「万引きしか生きていく術を教えられなかった」と貧困の連鎖によって日雇い労働と万引きで生きている治や虐待家庭に育ち貧困の中を生きてきた信代や育児放棄の犠牲になりそうになったところを治と信代に救われた祥太や虐待されているところを治と信代に救われたゆりや家出して出会い喫茶でアルバイトしている亜紀など家族の育児放棄や虐待や貧困の連鎖などにより福祉制度など法律の網から抜け落ち社会の底の底で生きざるを得ない人々の家族のぎりぎりのラインで生きているリアルな人生模様と血縁を越えた強い絆を描き、家族制度や福祉制度から抜け落ちた人々が人知れず苦しむ日本の現状を問う社会派的な部分、リリー・フランキーや安藤サクラや松岡茉優や樹木希林や佐々木みゆなど日本を代表する演技派俳優のアンサンブル、是枝監督が家族をテーマに描いてきた作品で問うてきた「子供を生んだだけで母になれるわけでは、子供を持てば父になれるわけじゃない、血縁で繋がった人々が一緒にいるだけで家族になれるわけじゃない。では本当の家族とは、家族の絆とは何か?」を描いたファミリーヒューマンドラマ映画の傑作。
「棄てられたのを拾っただけ。棄てたのは他にいるんじゃないですか?」