忠臣蔵外伝四谷怪談 忠臣蔵と四谷怪談の合体映画、深作欣二監督がブチかます豪華絢爛な時代劇映画
あらすじ
元禄14年、江戸城松の廊下で吉良上野介に刃傷を起こした赤穂藩藩主・浅野内匠頭(真田広之)は切腹、赤穂藩は取り潰しとなった。
堀部安兵衛(渡瀬恒彦)、高田郡兵衛、片岡源五衛門ら江戸詰の藩士たちは大挙して赤穂城へ舞い戻るが、家老・大石内蔵助(津川雅彦)の反応は冷ややか。
浪人となった藩士には厳しい生活が待ち受けており、2カ月前に召し抱えられたばかりの民谷伊右衛門(佐藤浩市)も父親譲りの琵琶を奏で、仲間の勘平や右衛門七らと共に門付けに立ち生計を立てていた。
そんな伊右衛門は彼を熱い視線で見守る湯女・お岩(高岡早紀)に出会い、ほどなく一緒に暮らすようになる。
お岩に魅かれている湯女宿の番頭・宅悦(六平直政)は彼女を強引に連れ戻そうとするが不首尾に終わった。
その頃いつものように鬼子母神の境内で琵琶を奏でていた伊右衛門たちは、打ち掛けを羽織り、笛や太鼓を鳴らす侍女たちを従えたお梅(荻野目慶子)の一行に出くわす。
一行にからんできた酔っ払いを一閃のうちに倒した伊右衛門を、恍惚の声を挙げ見つめるお梅。
その夜、お梅の祖父・伊藤喜兵衛(石橋蓮司)が大金を持って伊右衛門の家を訪ねてくるが、喜兵衛は吉良家の家臣であった。
刃傷沙汰から1年、内蔵助はようやく討ち入りする腹を決め、江戸にいた安兵衛や伊右衛門たちにも招集の声がかかる。
お岩は伊右衛門の子を身籠ったことを打ち明けるが、仇討ちが待っている自分はいずれ死ぬ身と伊右衛門は拒絶。
だが、強行派の郡兵衛が仲間から脱落することを知り呆然となる。
同志たちが次々と京に集まり、決起の宴を開いている頃、伊右衛門は喜兵衛の家にいた。
彼はお岩と別れお梅と一緒になる交換条件として、吉良家の家臣に推挙してほしいと告げた。狂喜するお梅。
一方、お岩のもとには宅悦が現れ、伊右衛門から預かったという安産の薬をお岩に飲ませる。
だがそれは、喜兵衛の策略による顔を溶かす毒薬であった。もだえ苦しみ、息絶えるお岩。
その日のうちにお梅と祝言を挙げた伊右衛門の寝間に、そのお岩の亡霊が現れた。
吉良家の清水一学(蟹江敬三)は伊右衛門に、仕官の土産として川崎の平間村に入った内蔵助を倒せと命じる。
浪士たちが警護する中、伊右衛門は半ば死ぬ覚悟で内蔵助と対峙するが内蔵助は斬れず、また自分も浪士たちに襲われながら逃げのびる。だが彼はもう半ば死んだ身であった。
討ち入り当日、吉良屋敷へ内蔵助以下赤穂四十七士が押し寄せるが、伊右衛門の姿は彼らには見えない。
そして、その討ち入りを亡霊となったお岩が手助けしていた。
無事討ち入りを果たした後、互いに死んで晴れてお岩と一緒になった伊右衛門の奏でる琵琶の音のみが、かつての同志たち四十七士のもとに届いた。
深作欣二が、江戸時代に2本立てで上演されていた忠臣蔵と四谷怪談を組み合わせて、今までにない独自の解釈で描いた異色作。
感想
単なる色悪ではなく、琵琶の門付けで浪々の暮らしの中で辛酸を舐め、豊かで心安まる暮らしと立身出世を同時に求めて揺れ動く人間味のある男性としての民谷伊右衛門を演じきった佐藤浩市、伊右衛門を一途に愛し抜く愛すべき女性としてお岩を演じきった高岡早紀、伊右衛門に横恋慕するお梅を演じた荻野目慶子のエキセントリックな怪演、石橋蓮司や六平直政のコミカルな演技も見応えがありました。
狂犬を斬った罰金を作るために伊右衛門たちが辻斬りにやむなく手を染めてしまうなど、今までの忠臣蔵では描かれなかったダークサイドが描かれたり、津川雅彦が今までになく人間味のある大石蔵之助を演じていてユニークだし、クライマックスの討ち入りでは、伊右衛門とお岩が霊力で加勢していて見応えがあります。