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死刑にいたる病 阿部サダヲの怪演に、背筋が凍る

あらすじ

理想とは程遠いランクの大学に通う雅也(岡田健史)は、鬱屈した毎日を送っていた。
そんなある日、彼のもとに1通の手紙が届く。
それは世間を震撼させた稀代の連続殺人事件の犯人・榛村(阿部サダヲ)からのものだった。
24件の殺人容疑で逮捕され、そのうちの9件の事件で立件・起訴、死刑判決を受けた榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよくそこに通っていた。
手紙の中で、榛村は自身の罪を認めたものの、最後の事件は冤罪だと訴え、犯人が他にいることを証明してほしいと雅也に依頼する。
そんな榛村の願いを聞き入れ、雅也は事件を独自に調べ始めるが……。
櫛木理宇による同名小説を原作に白石和彌監督が映画化。

解説と感想

最初に思ったのは、白石和彌監督がブレイクした作品の「凶悪」に似た構造だと思った。
「凶悪」では、ピエール瀧演じる死刑囚に山田孝之演じる雑誌記者が面会し、「先生」という共犯者が手動で起こした未解決の事件を告発したいので調査を死刑囚から雑誌記者が依頼され、調査する中で事件の闇に惹きつけられ、雑誌記者が闇に飲まれる。
この映画では、高校生の頃親しくしていたパン屋で連続殺人鬼の榛村大和が、高校生の頃親しくしていた雅也に冤罪の殺人事件を調べるよう依頼し、雅也が事件を調べ大和と交流する中で、大和の闇に少しずつ取り込まれていく。
メインは、秩序型殺人鬼である榛村大和の受験などに疲れている真面目な高校生などを少しずつ信頼関係を築き取りこみ、拷問した後に惨殺する、巧みな人たらしの善人からサイコパス殺人鬼に豹変する恐ろしさ、巧みな人たらしで周りの人達を操作するサイコパスぶりを、巧みに無表情さと善人を装う穏やかな物腰と光のない目で演じる阿部サダヲの怪演。
それに加えて、行きたかった大学に行けず父に存在を認められない鬱屈を抱えた承認欲求に、榛村大和につけ込まれて榛村大和の闇に堕ちて密かに抱いている欲望に、少しずつ目覚めてしまう雅人を演じる岡田健史の繊細な演技、キーパーソンをミステリアスに演じる岩田剛典の演技、榛村大和が冤罪を主張する事件を榛村大和に撹乱されながら雅人が調査するスリリングなサスペンス、何より「心の隙間を持つ相手に優しくして心を許させることで、相手を知らず知らずのうちに操作する洗脳」が病のように人に蝕む恐ろしさに最後まで背筋が凍るサイコサスペンス映画。

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