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平成狸合戦のこと。
「ぽんぽこの世界だよ。」
知人に何処へ引っ越したのかと聞かれると、
私はだいたいそう答えています。
『平成狸合戦ぽんぽこ』は、
スタジオジブリ制作のアニメーション映画。
1994年に公開された高畑勲監督作品です。
舞台は高度経済成長期の郊外。
具体的に言えば多摩市を中心とした多摩ニュータウンのお話。
高度経済成長といえば都市の人口が増加し、郊外に新たな住宅地を造成する、いわゆるニュータウン開発が盛んに行われていたといいます。
映画では丘陵地帯で暮らす狸たちの目線で,開発によって自分たちの住処を奪われていく状況が描かれます。実際に存在するニュータウンを舞台にしていることもって妙にリアルです。
始めてこの映画を見たのは小学生の頃。人間の身勝手な開発によってたくさんの生き物たちが住む場所を奪われていく描写が記憶に残りました。そして狸の暮らす豊かな自然はもうなくなってしまったのだと思っていたのです。
ところがどっこい生きている。
さて、こんな私も大人になって縁あって多摩の地で暮らすことになりました。
映画の中の狸たちは人間との抗争に敗北した結果、人間社会に適応化して細々と生きる道を選びました。里山を守りたい狸側の視点から物語を描いているため、全滅していないとはいえ結末は悲劇的です。
多摩は丘陵はぽんぽこ狸たちの末裔が暮らす場所。
私もこの地に越してから、緑道や歩道橋の上でハクビシンや狸に遭遇することがよくあります。私の思っていた以上に多摩丘陵には緑が多いのです。
私が裏山と呼んでいる「よこやまの道」の尾根をはじめ桜ヶ丘公園、貝取緑地など雑木林や森林公園が点在し、その規模が大きいことに驚かされました。
映画ではバットエンドとして終わった物語も、現実としてはまだ続いていて、決着という形を見せずに人間と自然との駆け引きが続いている。そんな風に思えてきます。
自然の中に人間が作り出した街。
そんなちょっと後ろめたい新しめの過去を背負ったこの街の良さってなんだろう。問題ってなんだろう、そんなことを考えながら日々暮らしています。
また思うことがあれば、別の機会に。
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