春になったら菫を摘みませんか?
春になったら菫を摘みませんか?
心安らぐ瞬間はベンチでサンドウィッチを食べている時で、一番楽しいのは寝る前の読書、そしてこれから始めてみたいのはバドミントン、こんな感じでいいですか?
うん、いいですよ。あなた明日から来てちょうだい。
えっ、本当ですか?
採用。
そうして、私のスミレ売りの生活が始まった。
すみません、ここにスミレ置いてもらえませんか?
ダメですよ、ここは八百屋だから。
そうですか、わかりました。
すみません、ここにスミレ置いてもらえませんか?
ダメですよ、ここは肉屋だから。
すみません、ここに。
帰って、帰って、ここは市場だ。
私は、どこにもスミレを置いてもらえないまま帰る日々が続いていた。
どうしようかな。
何本もスミレを抱えて帰っている。
ねえ、そのスミレ一本ちょうだい。
あ、いいの?
うん、僕スミレ、欲しいんだ。
はい、どうぞ。
爺や、お金払っておいて。
はい。
こんなに、いいんですか?
ええ、坊っちゃんのご好意ですから。
私は、貰ったお金で、スミレ屋さんを建てた。
スミレ売ってますよ。
スミレですよ。
今の時代にスミレなんて買うやつはいないぜ。
これが私の仕事なんで。
だったら、牡丹を売ればいい。
嫌です。スミレを売ります。
そんな態度じゃ、誰もスミレなんて、見やしねえ。
何を言われてもスミレを売り続けた。
すると、徐々にスミレが売れ始めた。
スミレ買います。
スミレください。
僕もスミレが欲しい。
超人気のスミレ屋さんになった。
すみません、スミレは?
売り切れなんです。ごめんなさい。
スミレは、ありますか?
売り切れです。
スミレ。
ないんです。ごめんなさい。
何ヶ月も何ヶ月も、スミレを売っているうちに内面まで変わっていった。
私は誠実に仕事をする人間になった。
私はある日、スミレを街に探しに行っていた。
すみません、スミレ売りの花菱さんですか、私はこういうものです。
え、こんな大層な。
あなたスミレの広告とか興味ありますか?
ええ、でもそんなのごく一部の人しかなれないんじゃ。
あなたウチに来なさい。
いいんですか?
ええ、素質があるからやってみる価値はある。
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