「全裸監督」を観て考えた、女性に不満を抱え込ませないコツ
※本記事は2018年4月〜2022年6月までcakesに掲載していた記事を加筆修正したものです。
8月8日からNetflixが配信開始した話題のオリジナルドラマ『全裸監督』。皆さん、ご覧になりましたか?
80年代バブル期に活躍したAVビデオ監督・村西とおるの半生を山田孝之の主演でドラマ化した全8話。総監督は内田英治。1話の予算なんと1億円。
セックスやAVが題材で、なおかつ成人指定なので観る人を選ぶ部分はあるかもしれませんが、ものづくりやビジネスの裏と表を抉っており、スリリングで、笑えて、揺さぶられる。文句なしに面白い作品です。
……といった、映像作品としての掘り下げは他の方がやってくださると思うのでお任せするとして。この連載ではもちろん、男女に焦点を当てます。
テーマは、「口にしたらおしまいの爆弾台詞を女性に言わせることなく円満にやっていくコツ」です!
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片方が悪者で片方が被害者?
この作品には、愛すべきダメ女とダメ男がたくさん出てきます(というか、ほぼ全員そうかも)。
村西とおるが幼少期を回想するシーンでは、アル中の父親が母親に暴力を振るいます。
20年前の自分が観たら、父親を「ヒドイ」と思い、母親を「かわいそう」と思ったかもしれません。
が、男女のあれやこれやを自分なりに理解した今は、片方が悪者で片方が被害者だとは思いません。
「この男性は惚れた女に暴力と支配でしか接することができず、この女性はそんな激しさを抱えたこの男性が好きなんだ」と捉えます。少なくとも別れない限りは。
周りから見たらなぜ一緒にいるのかが謎でしかない2人は、その2人にしか分からない理由で繋がっているものです。
一方で、周りから見たら円満な2人が、実際はいつ別れてもおかしくない冷めきった関係であることも、また星の数ほどある話。
「もうムリ」と爆発するのは、女性が多い
お互いに今は別れない方がいいなと判断する理由があり(経済面や子供を育てる上での環境など)、お互い合意の上で一緒にいるならいいのですが。
そうではなく、片方が我慢に我慢を重ねていて、もう片方はそれに全く気付いていない、というケースもありますよね。
あるあるあるある!と、女性の多くは激しく同意し、男性の多くは、そうだね……と少しうなだれつつ回想するかもしれません。
そう、我慢に我慢を重ねて、何かの瞬間に「もうムリ」と爆発するのは、なぜかいつも女性。もちろん逆パターンもあるでしょうが、さまざまな男女から悩み相談を受ける中でも、圧倒的に女性爆発パターンが多いです。
これは男性に比べて女性が相手との共感や共鳴を強く重視する傾向があるからだとワタシは考えています。さらに言うと、女性は言葉以外の要素、たとえば目線、仕草、声色などから相手の気持ちを察することに長けているため、察しない相手にすぐ不安や絶望を感じがちなのです。
つまり、どちらか一方が悪いという話ではなく、不満を抱え込みすぎる女性と、それに気付かなすぎる男性、どちらにも原因があります。
「あんたでイッたことないのよ、一回もね!」
『全裸監督』では、山田孝之演じる村西とおるに対して、妻が「あんたでイッたことないのよ、一回もね!」と吐き捨てる印象的なシーンがあります。
言われた村西とおるだけでなく、視聴者も「あぁぁぁあ……」と愕然もしくは呆然あるいは納得したことでしょう。
ずっと不満を言えなかった妻、気付かなかった夫。ある事件をきっかけに爆弾発言ドカン。そして離婚。
実際、離婚の原因の理由に多く挙げられる「性格の不一致」は、実際には「性の不一致」である、とはよく言われる話です。
確かにそうなんだろうなと思いますが、根本の原因はコミュニケーションをさぼったことだろう、とワタシは考えています。
女性は、「不満を言いたい、でも言ったら彼はショックを受けそうだし、気まずくなるかも」と、つい不満を飲み込み先送りする。そのうち改善されるかもしれないし、と期待しつつ。
男性は「何も不満とか言われてないし、俺たちうまくいってるよな」と安心しきって、仕事や趣味や友人関係に時間や気力を注ぐ。
言われなきゃ分からないよ!と男性が思うのは当然ですし、一方で、なかなか言えない女性の気持ちも分かります。
女性の「もうムリ!」を防ぐために必要なこと
これは超鈍感な同性の友人と接していて気付いたことなのですが、「相手が1%も気付いていない問題点」を指摘するには、とてつもないエネルギーを要します。
この人とは合わないから離れようと思うなら指摘せずに去ればいいわけですが、指摘するからには改善や何らかの着地点を求めているわけです。が、本人が全く気付いていないので、「言ったらショックだろうな」とか「怒るかな、傷つくかな」とか「理解してもらえないかも」とか「理解してもらうためにはどう説明しよう」とか、とにかく懸念事項が多いのです。勇気と根気と愛情が必須。
これがもし、相手も少し気付いてそうだな……とか、私が不満を抱いていないか心配してそうだな……と感じられる場合、ハードルはだいぶ低くなります。「あのさ、もしかしたら気付いてるかもしれないけど」と前置きのクッションを置いて話ができます。これからも一緒にいたいから、という気持ちをこめつつ。
ということは。
妻や彼女やデートを重ねている女性から、「もうムリ」といきなりの爆弾発言→関係終了、となるのを防ぐために必要なこと。
それは、相手が大切であり失いたくないという気持ちを自覚して、不安を隠さないでねと伝えること!!
具体的には、「自分は鈍感だから、不満とか不安とかあったら、すぐ言って。何でも言って」と日頃から相手に言っておくことです。言われても自分は大丈夫だから! そんなことで怒ったり傷ついたりしないから!と。
実際は怒ったり傷ついたりする可能性は高いと思いますが(笑)それでも言った方がいいです。
早めに伝えていれば2人で協力できる
爆弾発言が爆弾になるのは、相手が不満を長い間抱えすぎたせいであり、それこそ「1度もイケなかった」は、セックスをし始めた頃に「実はこの前イケなかった」と言われるだけなら、爆弾とまではいかなかったはず。
こんなに長い間、俺は偽りのお前を見ていたのか……という事実がショックなわけですから。
早めに伝えていれば、「そっか……よし、いろいろ試したりして頑張ろう」と2人で協力し合うことだってできるはずなのです。
それでもどうにもならないケースももちろんありますが、少なくともお互いやれるだけの努力をした場合、悔いは残らないはず。そしてその努力から学んだことは、今後に活かせるはず。
「全裸監督」での妻の爆弾発言は、ありのままを見せていないセックスなんて意味もなければ美しくもない、という村西とおるの信念に繋がっていきます。ショックを受けたことは、結果的には大きな意味があったのです。
だから、これまでに女性の爆弾発言に傷ついてきた男性の皆さんには、その傷、絶対無駄にならないし、無駄にしないで!と言いたい。
そして「自分は鈍感だ」「女心が分からない」「すぐ安心しきってしまう」と自認するのであれば、前述したように、早い段階で「俺は鈍感だから不満があったら何でも言って」と伝えることをオススメします。
それでもなかなか口に出せないのが女性なのですが(笑)、男性にこう言っておいてもらえると100倍楽になりますし、不満も伝えやすくなります。不満がなくても「この人は自分のネガティブな気持ちも受け止めようとしてくれてる」と心を動かされます。
ありのままの自分を受け止めてほしい。誰もが願うことです。パートナーに対してはなおさらです。すべてを完全に受け止め合うことは難しくても、伝えるための努力をサボらなければ、そのパーセンテージを上げることはできます。相手から「こういうところを直してほしい」などと言われたら、深刻に捉えすぎず、「しょうがないから合わせてやるわ、また度量が広くなったわ!」と自画自賛する精神も大事ですよ!(お互いに・笑)
※本記事は2018年4月〜2022年6月までcakesに掲載していた記事を加筆修正したものです。