ギリシャ神話イカロスの自滅〜King Gnu『IKAROS』考察〜
約4年ぶりとなるKing GnuのNEW ALBUM『THE GREATEST UNKNOWN』が11月29日にリリースされた。収録曲のうち、インタールードを除くほとんどの楽曲がタイアップ曲のアルバムだが、唯一のノンタイアップ曲が『IKAROS』である。発売日まで謎のヴェールに包まれていた本楽曲について、考察していきたいと思う。
ギリシャ神話に登場するイカロスとは
『IKAROS』の歌詞を読んでいくと、ギリシャ神話に登場するイカロスという人物がモデルなのではないかと気付く。イカロスは、ギリシャ神話の中で以下のように語り継がれている。
King Gnu『IKAROS』楽曲構成
『IKAROS』は、古い機械のような音とともに始まる。この音は、今にも壊れそうな翼の音を表現しているのではないかと思う。井口さんの透き通った歌声で歌われる歌詞には、太陽の熱によって翼が溶けて、堕ちていくイカロスの心情が映し出されている。
波打つようなベースの音色と、チルな空間を演出するビートは、雲の間からゆっくりと堕ちる様子を連想させる。
太陽に魅せられ、その欲望のままに近付いてしまったイカロス。ギターを含め様々な音の数々が、パラパラと溶けていく翼を表現しているように思える。
美しいコーラスに包まれたイカロスの祈りの言葉は、澄み切った歌声で天まで広がっていくようにも感じられる。
King Gnuの楽曲の中では珍しく、井口さんの声が大幅に加工されており、だんだんと意識が薄れていく様子が目に浮かぶ。
ボーカルが交代し、常田さんがメイン、井口さんがコーラスになる。攫ってよ、誰も知らぬ、何処かへと、という歌詞がメロディーと調和し、美しく響き渡っていく。
井口さんと常田さんの高音・低音ボイスが絶妙に混ざり合う。最後には泡が弾けるような音が鳴り、静かに海に沈んでいくような感覚を残していった。
イカロスへの鎮魂歌
King Gnu『IKAROS』は、ギリシャ神話イカロスへの鎮魂歌とも言えるだろう。この神話は、人間の傲慢さを戒めるという意味がある一方で、人間の勇気を讃えるという意味もある。本楽曲の解釈では、泥臭い欲望を勇気と讃え、それによってもたらされる死に美しさを見出しているように思える。清濁を併せ呑んで、混沌を受け入れるKing Gnuの姿勢とも重なるように感じられた。
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