大歩危小歩危ウォーク
「歩く」のが「危ない」と書いて「歩危」(ぼけ)。大歩危・小歩危とも吉野川流域の有名な景勝地で、川が切り取った急峻な崖線にそそり立つ迫力のある奇岩怪石の様が魅力です。
昔の事情はよく知らないですが、現代では川沿いに鉄道駅もあり国道も通っており、名前に反して比較的訪れやすいし歩いて散策しやすい渓谷だと思います。
しかし訪れる人はたいていは車、もしくは鉄道で大歩危駅に訪れて周辺の散策、というのが多いのではと思います。理由は小歩危駅に停まる鉄道が少ないため。
そういう事情もあり、大歩危駅〜小歩危駅の間を歩こうとすると、基本的には綿密にスケジュールを調整して乗り継ぎやすい列車で訪れる必要があります。あと、歩きやすいとはいえ6km強の距離があるので歩き通すだけの体力ももちろん必要です。
私は以下のスケジュールで訪れてみて、世に名高い渓谷美を堪能してきました。大歩危〜小歩危滞在時間は1時間56分。この間に6km強を踏破する感じです。
やなせたかしワールド全開の後免駅とのビジュアルのギャップ。大歩危駅周辺は子泣き爺を筆頭に妖怪伝説が数多く残されている地域ということで、こういう感じのお出迎えになっていました。
大歩危駅の横は渓谷になっており、散策用にちょっとした遊歩道なども整備されていて、列車を下車してすぐに景観を楽しめるようになっています。
なお私が訪問したのは平日ということもあってか大歩危駅で下車したのは私一人でした。
駅の周りは人は少なく閑散としていましたが、その分まわりの自然の風景、咲き始めの桜の花、鳥の鳴き声や川のせせらぎの音を堪能できました。
とはいえ大歩危駅周辺にはそれなりに商業施設も揃っており、駅前すぐには「歩危マート」という土着のスーパーがあり、ちょっと離れたところには道の駅などもあり、色々と調達可能な感じになっています。
まずは橋を渡り、道の駅を目指します。おおよそ1kmくらい。
大歩危〜小歩危の間の国道沿いの道はこんな感じで歩道がきちんと整備されており、「歩く」のが「危ない」という事は感じませんでした。この辺を散策したいという人には安心ですね。
それでもこの辺は物流の要衝なのか、大きいトラックがなかなかの速度で頻繁に走り抜けていくので、道の横断は十分に注意が必要です。
国道からの眺めでも、大歩危峡の景観は素晴らしいです。奇岩怪石の迫力もそうですが、本当に川の水がきれいで透き通っており、ついつい立ち止まっては無心で写真を取りまくってしまい、自然と歩みが緩やかになります。
そんなこんなで道の駅です。売店のほかに石や妖怪に関するミュージアムも併設されています。
私はそこまで時間がないので軽食だけ軽くいただこうと道の駅内のカフェに訪れ、当地名産のジビエバーガーをいただきました。「イノシカバーガー」ということなので猪と鹿の肉が含まれているのですかね。20分くらいかけて作りたてを作っていただいたきました。なかなかのジューシーさで美味しかったです。
今回は乗り継ぎの関係で大歩危駅〜小歩危駅の間を2時間弱で歩いて行く必要があるのですが、道の駅を出たところですでに1時間を浪費していました。バーガーの出来上がり待ちの時間もありますが、ちょっとあちこちで写真を取りまくり、時間使ってしまったのが原因です。
ちなみに道の駅から小歩危駅まではまだ5kmほどあります。
大歩危駅〜小歩危駅を歩いて移動しようとする人が大歩危駅周辺でついつい時間を使ってしまうのは、おそらく大歩危小歩危ウォーク「あるある」の事態なのではと思います。いずれにせよここからは急ぎ目に移動する必要があるので速歩で小歩危駅まで向かいます。
この辺の道を歩いていると、頻繁に写真のような階段を見つけることができます。おそらく川の方まで道が繋がっているのだと思いますが、多分に私道的な雰囲気のところも多いですし、立て看板などの案内も皆無なため、迂闊に観光客が使用するのはちょっと憚れました。今回は時間も足らないため立ち寄らず道程を急ぎます。
道の駅のちょっと北側には観光遊覧船の乗り場もあり、雄大な渓谷美を間近で堪能することもできるようです。運航されているのは比較的近代的な船なので、船頭の舵が空振りして転覆するみたいな事態は起こりづらいとは思います。
歩いて追いつけないかなと速歩で追いかけたのですが、さすがに船のほうが普通に速いですね。
大歩危洞門というトンネルを抜け、鉄道の橋梁を超えると、ちょっとだけ風景が開けた感じになります。この辺から道の看板的には小歩危峡のエリアに入るようです。
小歩危峡の見どころは小歩危駅よりも少し北に行ったあたりのようですが、今回はちょっと時間が足らないので未訪。小歩危駅への列車到着に間に合わせるよう引き続き頑張って歩きます。
とかいいながら少し寄り道もしました。赤川橋は小歩危駅近くにあるつり橋です。元は個人が架けたつり橋ということで橋の袂に「観光で事故があっても責任はとらないよ」という強めの看板が掲示されていますが、大井川の蓬莱橋に比べればずっとしっかりした安全そうな作りでした。景観は素晴らしいの一言です。
そんな感じで小歩危駅に到着。着いたのは12時50分ころで、12時59分発の多度津行きにはなんとか間に合いました。
6kmで2時間なら余裕かな、時間が余るかな、と計画時は思っていたのですが、実際は見どころも多く、立ち寄る場所もそれなりにあり、全然時間が足らないくらいの感じでした。
大歩危駅〜小歩危駅の道中は、渓谷沿いなのに特に起伏も激しくなく、平らで歩きやすい歩道を歩いていくことができるので、散歩・散策のルートとしてもかなり安全です。静岡空港まで歩いて行くのに比べたらずっと楽だし、素晴らしい渓谷美を存分に楽しめる素晴らしい道中でした。
車で移動するのが一番楽だしスタンダードだとは思うのですが、車だとあらゆる風景が一瞬で通り過ぎてしまうので、時間と体力が余っているならこういう風にゆっくりとその土地を歩いて、景観のすべてを体いっぱいで吸い込むように旅するのも、楽しい体験だと思います。
そんなこんなで、各駅停車で三好市の中心地であり全国池田サミットの開催地でもある阿波池田駅まで移動し、特急南風に乗り換え、この地を後にしました。