日帰りで巡る函館裏街道の旅
私は函館が好きなので毎年のように訪れているのですが、今年も訪れました。3年連続です。
函館市街の主要な観光地は概ね訪れているので、今回は、私自身も足を踏み入れたことがないエリアを中心に旅をしました。端的に言うと、函館の東の端にある恵山周辺に訪れました。
恵山方面へは路線バスも存在していますが、今回は現実的な手段として空港でレンタカーを借りて車で巡ります。
基本的に反時計回りでぐるっと回り、一筆書き的に空港に戻ってくる計画です。
函館空港〜恵山
空港から恵山へは国道278号線を東進、基本的にはずっと道なりで進んでいけばたどり着きます。
函館は中心地以外は山が多い地形で、平らな土地が海沿いの狭いエリアに限られています。そのこともあってか海沿いをへばりつくように集落が存在しており、意外と切れ目なく人家や漁港が連なっている印象です。
お店はそこまで多くないですが、拠点拠点でセイコーマートなどのライフラインが存在しているので、そちらで栄養を補給しながら進みます。
沿線で目を引くのは、戸井線の廃線跡。正確には未成線なので廃線ではないですが、建築されたまま役割を果たすこと無く残された壮大な橋梁の跡が今も残されています。
橋梁跡は周囲に看板等も特になく予告なく出現するので、車で訪れる際はナビの設定などを事前にしておくのが良さそうです。
道の駅「なとわ・えさん」を超えた辺りで道の分岐点があります。国道278号を逸れて右折した先の道(道道635号線)が恵山につながっています。
ちなみに道道635号は途中で通行止めになっていて、反対側の恵山岬にはたどり着けないのは罠なので注意です。
登山口から急坂を登っていくと恵山道立自然公園の駐車場にたどり着き、振り向くと恵山の火口から絶え間なく噴煙が立ちあがる雄大な風景を眺めることができます。
函館中心地から1時間ちょっとでたどり着ける箇所にこれだけ荒々しい自然の風景が存在していることに驚きます。
恵山の火口付近は、遊歩道も整備されてますし、歩いていって良いのかどうなのかわからないのですが火口のすぐ近くまでも歩いて行けそうな作りになってます。実際、ちょっとびっくりするくらい近くまで歩かれている人も見かけました。安全か否かという判断は私には出来ません。
硫黄臭がかなり強いので、コロナが落ち着いた今でもマスクは持参していったほうが良いと思います。
私が訪れたのは平日だったのですが、それでも車がそれなりの台数停まっており、穴場的な人気の高さが伺えました。欧米系のインバウンド旅行者も見かけました。
恵山〜恵山岬
恵山の登山道から恵山岬へは直線距離ではすぐそこなのですが、道道635号線がつながっていないので遠回りして進みます。
恵山岬は見晴らしの良い景勝地でもありますし、近くに有名な、特に「藩士」たちには聖地的な場所でもある「水無海浜温泉」もある場所です。
水無海浜温泉には、恵山岬公園からさらに奥まった狭い道の先にあります。走行には注意。近くに駐車場があるので車を停める場所には困らないです。
私が訪れた時間は完全に満潮の時間だったので、ご覧の通りな感じでした。「闘痔の旅」よろしく荒々しい波が打ち付けるというほどではないですが、海水の比率が圧倒的に多く温泉のぬくもりは一切感じない水温でした。
驚くことに、この状況でも温泉(海水)につかろうとする猛者はいるようで、私が訪れる前に入水していたと思われる観光客の集団を見かけました。ちなみにこの日の最高気温は12度でした。
私の入浴体験は手を軽く温泉(海水)につける程度にしておきました。
なお私が訪れた時期はちょうど統一地方選挙の時期で、函館市の市長選挙も行われていました。大泉洋の実兄の大泉潤氏が出馬しており、この点でも聖地巡礼的な趣がありました。
今回の旅の道中、大泉潤氏には遭遇しませんでしたが、対立候補の工藤寿樹氏の選挙カーには遭遇しました。にこやかに手を振っていただき、旅行者で投票権の無い私としては気まずい思いでした。
恵山岬〜垣ノ島遺跡
恵山岬から北西に向かうと、垣ノ島遺跡があります。「北海道・北東北の縄文遺跡群」として近年世界文化遺産として認定された遺跡群を構成する史跡の一つです。遺跡の近くには良く整備されたミュージアムが作られており、道の駅も併設されているので、訪れてみました。
垣ノ島遺跡は縄文時代早期からの遺構を残す国内でも最大規模の遺跡とのことで、出土品も歴史の古いものが多く、価値が高い遺跡のようです。
国宝の土偶「中空土偶」も展示されていました。北海道に存在する唯一の国宝がこの土偶、とのことです。茅部の土偶なので「カックウ」という愛称がついているようです。
縄文時代は狩猟をし貝を食べては建物の中に打ち捨ててるイメージしかないですが、実際は海を舞台にした海洋貿易がすでに普及しており、ヒスイなどの装飾品が広範囲でやりとりされていたようです。
この時代の遺跡から出土したヒスイの大半は糸魚川で産出されたものとのことで、遠く800km離れた場所にまで装飾品が当たり前のように伝搬する当時の交易網の発達の様がうかがい知れます。
垣ノ島遺跡の近くには他にも多くの竪穴住居跡や盛土遺構が点在する大船遺跡もあり、函館は縄文時代の遺跡が好きな人には訪れる価値のある場所だと思います。遺跡のある一帯は交通アクセス的に気楽に訪れる、という感じの場所では無いのがネックですかね。
垣ノ島遺跡〜函館市熱帯植物園
道道83号線を経由して、ショートカット的に函館市の中心部に戻ります。時間もあったので、湯の川の近くにある函館市熱帯植物園に立ち寄ってみました。
「植物園」と名前がついていますが、ここで一番有名なのはサル山。湯の川温泉の近くに位置することもあり、冬の時期にはサル山に温泉が引き込まれ、猿の集団が温泉を堪能する風景を鑑賞することができます。
猿は水浴びは好きではないようですが、温泉は気持ち良いのか好んで入浴する猿が多いとのことです。温泉に入ると冬毛が抜け落ちてしまい、それだと寒いのでまた温泉に浸かって温まる、という循環で自然と病みつきになるとのこと。
薄毛の猿が温泉につかってると遠目には人間のお婆さんにしか見えず、人間も同じ猿の仲間なんだなと感じさせられる光景でした。
函館市熱帯植物園のサル山はとても人気で、この日も平日に訪れたにも関わらず多くの観光客が訪れていました。温泉に入る猿が見られるのは12月からゴールデンウィークの間、ということです。
函館市熱帯植物園〜函館空港〜志苔館
そろそろ旅も締め、ということで、函館空港に向かいレンタカーを返却します。函館市街から空港までは至近で、秒で空港までたどり着けるので便利です。
車を返した後も少し時間が余っていたので、空港近くの観光地である「志苔館」に足をのばしてみました。空港からは徒歩で20分ほどです。
函館空港の正面口から東側に向かって歩くと、空港の敷地をまたいで南に抜けるトンネルがあります。ここは歩行者も通行可能。一応歩道もあるので安心して歩けます。
トンネルの幅はギリギリ車1台分くらい。この狭い道を1分間に数台の車が通り過ぎていきます。結構な高頻度なので、相互のすれ違いどうするのだろう、と思って眺めていましたが、トンネルの中に数箇所行き違いができるスペースがあることはあるようです。
地元の人はトンネルの中で鉢合わせにならないよう、絶妙の間合いでトンネルに入るタイミングを調整し、阿吽の呼吸で行き違いをしていたようでした。慣れたものでトンネルの通過速度もかなりの高速で、車の衝撃波で突風が起こって吹き飛ばされそうにもなりました。
トンネルを抜けると海側の集落にたどり着きます。目の前の道路は元々は戸井線の廃線跡だったようです。
ここから少し進んだところに、志苔館(しのりたて)があります。志苔館は中世頃に用いられていたお城で、和人の拠点であり、アイヌとの戦争の舞台でもあったようです。
史跡としては、土塁と、昔の建物の痕跡を示す柱や井戸などの跡が残されています。高台にある広々とした空間で、海や函館山を眺めることもできます。私が訪れた時は地元の方含め誰もいない静かな環境でした。
志苔館は空港からカジュアルに歩いてたどり着けるので、フライトまで時間が余ってしようがないという時に訪れてみるのにはおすすめの場所だと思います。
函館というと明治以降の歴史ばかりが脚光を浴びますが、今回のようなルートで巡ると、函館は縄文時代から今にいたるまで常に重要な拠点であり続けている場所だ、ということに気付かされます。
そういう歴史的、文化的な背景が、函館を魅力ある街として形作る背骨になっているのかな、と思ったりもします。
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