第2話「激震の前兆」

SRを預けて3週間後、バイク屋の社長から購入希望の人が来たと電話があった。

いざ買い手がつくと、なんだか少し寂しい気もする・・・・・・
ような気がしたがそれは気のせいで、まだ名義変更の手続きすら終わってないのに、速攻で教習所の申し込みに行った。

ちなみに、この時点でまだ妻には話をしていない。

あとで面倒なことが起こるのは、少し考えれば分かるはずなのに、困難と思われる事は後回しにしてしまう癖があるオイラ。

ともすると、悪いことをする訳でもないのに、いつの間にか悪い事をしているかのような罪悪感を感じだし、それがコソコソした行動になりがちだ。

二輪教習を受けるには、ヘルメットの他に、グローブ、長袖と長ズボン、そしてくるぶしが隠れるブーツが必要だが、教習所には貸しヘルメットや貸しブーツもある。

もしかしたら、いい香りのする女性が被ったヘルメットをかぶれるかもしれない・・・
そんな甘い考えが一瞬頭をよぎったが、女性こそ真夏の貸しヘルメットなど借りるはずないわ。
そんな臭そうなヘルメットを借りるのは、きっと無頓着なオヤジだけに違いない。
無頓着なオヤジだから、きっと風呂に入ってもろくに体を洗ってないし、きっと加齢臭もきついはずだ。
そんなもん、とても使えん！

という事で、自分でそれら全てを持ち込むことにした。

しかし、ヘルメット、グローブ、長袖のブルゾン、バイク用パンツを教習のたびに持ち出していたら妻が変に思うに違いない。
少しでも見つかるリスクを減らすために、持ち出しは1回限りにし、免許取得まで車のトランクに入れておくことにした。

そして教習が始まった。
初めて触る大型バイクは、赤白のCB750（RC42）だった。
SR400とは比べ物にならない車格と重量にビビりながらも、憧れの大型バイクに乗れる嬉しさで教習はとても楽しかった。

嫌な事なんてほぼなかったが、しいて言えば車にしまっておいたブーツやヘルメット、そしてブルゾンなどから異臭がしはじめたことくらいだ。
きっと卒検の頃には、熟成されたそれらから出る香りが、待合室にほんのり漂っていた事だろう。しらんけどwww

こうして、結局妻にバレないまま、教習所を卒業する事が出来た。

そして念願の大型免許を取得。

次はいよいよハーレーの購入だ！と密かに意欲を燃やしていたある日の夜、
妻からの思いがけない告白に仰天する事となった。

いつものように仕事から帰ってきて、夕食を済ませリビングのソファーでVIBESを読んでいると・・・

「実はさ、伝えたいことががあるんだけど」と妻。

いつになく深刻な表情の妻に、事の重大さを感じずにはいられない。

「えっ？なになに？？」

しばらくうつ向いて何も話さない妻

「えええっ？だから何？どうしたの！？何かあったと？」

頭の中で最悪のシチュエーションが駆け巡る！

・・・なんだなんだ？？
「大型免許取得がバレたか？」

妻は黙っている・・・・・

えっ！？なんなんだよ・・・

借金も完済したし、パチンコもやめた。もちろん妻と結婚する前に身の回りの整理もした！
いまの俺には、何も非が無いはずだ！
あるとすれば、勝手に大型二輪免許を取得したことぐらいしか思い浮かばない・・・

しかし、その程度でこんなに深刻な顔するか？？

じゃあなんだ？

大型を買うために、こそこそと貯めこんだ貯金がばれたか！？

それとも、隠していた某アイドルの写真集が見つかった？

いや、そんな事ではこんなに深刻になるはずがない・・・

どれだけ考えても、離婚になる程のインパクトは無いはずだ。

もう無理だ！
勘弁してくれ！
頭がショートしそうだよ！

とその時、おもむろに顔を上げた妻が衝撃の一言を言い放った！

つづく