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第11話「ツーリング前夜(前編)」

さあ華の金曜日だ!
こんなにウキウキする金曜日はいつ振りだろうか。

当然昼間は仕事なわけだが、気もそぞろである。

そしていよいよ退社時刻の18:00まであと10分というところで、スマホが鳴り出す。
おいおい、何だよ!
俺はあと10分で本日の業務を終える予定なのに。
スマホには、とあるクライアントの担当者名が出ている。

これは嫌な予感しかしない・・・
この時間に、このクライアントからの電話という事は・・・

「あっ!忘れてた~!18時から打ち合わせだった」

なんという失態、浮かれすぎてアポイントを忘れていたとは!

慌てて電話に出て開口一番
「はい!もしもし、今向かってるんですが、ちょっと渋滞で」

すると、電話口のクライント
「あー、やっぱりもう出ちゃってますね!急で申し訳ないんですが、
今日の打ち合わせ19時からにしてもらえませんか。戻りが遅れちゃって」

おお!なんという奇跡!
アポイントを忘れていたのに、クライアントが恐縮しているではないかwww

「気にしないでください!19時OKです!それではよろしくお願いします。」

電話を切って、自分の強運にニヤついていたのだが、
ふと冷静に考えると、これまた大変な事を思い出した。

今晩はバイクをレンタルする日だぞ!
レンタル店は営業時間が20時までだった気がする。
大慌てで調べると、閉店時間はやはり20:00だった。

OH MY 神様~

そんな殺生な~

明日のツーリング、集合時間は「朝7:00」だ。
それに対して、レンタルバイク店のOPENは朝10:00。
とにかく絶対に今晩借りないと、ツーリング仲間に迷惑がかかってしまう。

慌ててレンタル店に電話して、事情を説明するも
「20:10くらいまでなら」という返答。

とにかく打ち合わせを早く終わらせて、閉店までにバイクを借りに行くのだ。そう心に誓い、いざ打合せへ向かった。

18:50にはクライアントの事務所に訪問し、19:30までしか時間が無いことを告げ、打ち合わせをスタートさせた。

そして打ち合わせは終盤に差し掛かる。
時は19:30。

「あの、すみません、一旦持ち帰りますので、今日はこの辺で、申し訳ありません」

「いやいや良いですよ!私が遅れたのがいけないんで。ではよろしくお願いします」

「引き続きよろしくお願い致します。それでは失礼します」

ゆっくりとクライアントの事務所を出て腕時計を確認。
時刻は19:40

ヤバイ!会社に戻る暇はないぞ!どうするどうする・・・・・
打合せには社用車できている。
でも、このままレンタルバイク店に行かないと間に合わない。
一回家に帰ってヘルメットを持っていかないと!
いや、それじゃ間に合わない!!!!
こりゃヤバいぞ!

あーっ!背に腹は代えられん!
こんな時は嫁さんに電話だ!

「あっ、もしもし俺だけど。今打合せ終わって、今日レンタルするバイク店に向かうんだけど時間が無くて」

「はぁ?だから?」

今日は妻の機嫌の悪さなど気にする余裕が無い

「いや、レンタルバイク店までヘルメット持ってきてくれないかな!?」
もはや泣きそうな声である。

雰囲気を察したのか、妻から意外な一言が
「じゃあ、場所をLINEで送って。いまから出れば良いんでしょ!」

「あっ!ありがとう~♥♥♥すぐ送るよ」

社用車でレンタルバイク店に向かう道中少し冷静に考える。

そっか、バイク借りたらそのバイクで家に帰る訳だよな、
そうすっと、社用車はバイク店に置き去りになるわけだ。
そのまま置き去りにして、車上荒らしにでもあったら目も当てられんぞ。
という事は、一回バイクを置きに帰って、またバイク店に社用車を取りに行く事になるわけだ。

あれっ?
じゃあ、どうやってバイク店まで行くんだ?
当然うちの自家用車だよな。
でも~、今度はうちの自家用車が置き去りになるわけだ。
そりゃいかん、無防備な駐車場に置き去りはいかん!

そうなると・・・・
今一度妻に同行願うしかない訳だ!
ああ、憂鬱だ。

でも仕方ない。
ここまで来たらお願いするしかない。

バイク屋に到着すると、まだ妻は来ていなかった。

俺はといえば、レンタルの手続きを済ませ、待望のCB1300SBとのご対面だ!
目の前に現れた赤白ツートンのSBは光輝いていた。
うっとりするようなスタイルと、フラッグシップモデル然とした存在感。
なんという美しさだろう!
自然と顔の筋肉が緩むのを自覚しながら妻を待つ。

10分後。いよいよ妻が登場だ。

ヘルメットを受け取り、更に往復してもらう必要がある事を説明すると
「そうだよね。どうするんだろうと思ったのよ。」
とすでに状況を把握していた様子だった。

うん、結果的には今日も良い日だったってことだよね。

その時オイラは、明日のツーリングが素晴らしいものになると信じていた。

続く

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