古本屋に依頼する
本を処分するのは難しい
人生には大きな本の整理が訪れる。小生の場合、転職のときと実家の整理が大きな本の整理であった。本の選別は、不要になってしまった本、読まないであろう本を中心に処分をしている。特に実家の整理の時は、時間があまりなかったこともあり、丁寧な処分ができなかったのは心残りではある。その際に重宝するのは、従来型の古書店である。ブックオフの場合、古い本はほとんど査定が付かないので、古書価値がある本はできる限り、既存の古書店に販売するのが望ましい。
ブックオフだと多分引き取ってもらえないタイプの本を引き取ってもらえることは、死蔵していた本が何らかの形で市場メカニズムに乗って販売経路に乗るので、まさに本を探している人のところに本が行く可能性が高まる。市場メカニズム万歳。オークションなどに出品する手間を考えると、古書店は専門知識を利用して古書市場へと仲介してくれる有難い存在だと言える。
実際、本を保有することは、場所や時間を考えるとコレクションでない以外(コレクションはコレクションという効用を個人にもたらすので、保有することからの満足がある)、資源の無駄になっており、定期的に本のダイエットはする必要がある。でも、なかなかできていない。数年に一度ぐらいは所有本を減らしているのだが、買う量も多くなってしまったため、本を減らすのが難しい。そのせいで、デスク周りがハードカバーと文庫本、新書の山になっている。コレクトした本、必要な本、そして不必要な本をどう分類していくのかも、年齢が変わるごとに行うのは重要になってくる。若い時に必要だったけれども、今はもう不必要な本など。逆に今だからこそ読むべき本など、整理を通じて再発見したのもある。整理や処分を通じて、本を読む優先順位が変わってくる効果も期待できる。年齢が上がってくると、老眼の問題も出てくるし、もう読まないでもいい本も出てくるからだ。
お付き合いのできる古本屋を見つける(過去から未来へ)
では、実際古書店とはどのように取引するのか。メルカリと同様に簡単である。基本的に現物を見てもらい、その後古書店あるいは市場でついた査定額を示してもらい、納得すれば書類にサインして、お金をいただき、取引終了する。古書店独自の査定と、市場での査定の両方を体験しましたが、古書店から現在の古書市場についての意外な情報が得られたりして面白いですよ。
本を引き取ってもらう際に雑談ができるのもなんとなく人と人とのつながりを感じるのでうれしい。現在、小生の場合、西荻窪の盛林堂書房の小野さんに大変にお世話になっているわけですが、過去を購入を通じて通じて様々な古書店主さんと交流があって、現在の蔵書が構築されました。
小生が学生のとき、良く会話に付き合っていただいたのは、当時大岡山にあった古書日月堂さん。店主の佐藤さんとはよくお話させていただいていて、こちらもおこがましいがSF文庫の当時相場などをなんとなく話したり、本の話をしていました。当時から気になる品ぞろえで、自分のコレクションの一部を構成している。のち、ロシア・アヴァンギャルドなどの方面に向かい、南青山に移転するなど、その後はあまりお会いしていませんが、いつかはご挨拶したい。
古書いとうさんの想い出
小生自身、過去神保町を含め様々な古本屋さんを訪問していますが、顔見知りの古本屋さんが増えると行きたいと思えるようになる。今は、西荻窪や吉祥寺あたりがまさにそれである。では、過去はどうか。先に挙げた古書日月堂さんと、当時学芸大学にあった古書いとうであった。ご主人の伊藤昭久さんは、サンリオで働いていてその後古紙業界から古本屋に転職した方でした。当時の古書いとうさんは、外国文学にも強く、レアな小説をそこでよく買ったものです。伊藤昭久さんは2014年8月に亡くなりましたが、当時大学生だった自分は伊藤さんとよく話をして、サンリオのことなどいろいろと教えてもらいました。その後神保町古本市などで存在感あふれた姿を拝見していましたが、2014年からはその姿もなく、とてもさみしい気持ちになりました。以下が唯一の伊藤昭久さんの著作。『チリ交列伝』(ちくま文庫)
今や、「ご家庭内でご不要になりました、古新聞、古雑誌…」というアナウンスもなくなり、ちり紙交換車の姿を見かけなくなってしまった。本も新聞を廃れていく中で、昔は古紙の事務所で古本が売られていて、そこでレアな本を見つけたりしたものでしたが、今はもうありません。古紙の回収価格が低下しているのも原因のようですね。以下の記事を参照すると厳しいことがよくわかります。
https://middle-edge.jp/articles/I0001103
古書店主との会話を通じて学んだこともあるし、個性的な店主との出会いが本の入手の記憶の断片にもなっていて、場の記憶とモノの記憶がつながることがあるのだなと改めて思ったのでした。
当時の目黒線沿線は、古書店が充実していて九曜書房、リサイクル系古書店、ぽんぽん船というリサイクル系の古本屋もありました。今やほぼ壊滅してしまい、残念な限りだが、お金があまりなかった学生時代貴重な本を結構見つけることができる状況にあったのは、幸いなことでした。そして学んだのは、新刊はいつか入手困難になるから、手に入れられるのなら、入手しておくという原則でした。ここ数年でびっくりしているのは、角川ホラー文庫の一部作家、特に日本ホラー小説大賞出身者のデビュー作が軒並み入手が難しくなっており、新刊で買っていてよかったと思うことが多々ある。
なので、本を買うことは自分の人生の一部だと思って、今日もまた本を買って読んでいる。