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ジェネレーティブAIツールの、隠れた最先端ソリューションを発見する。

こんにちは!Dawn Capitalインターンの八並映里香です。
本稿では、国内・海外企業におけるジェネレーティブAIの開発・活用事例を紹介しています。
【読了時間目安:7分】


本稿は単体でも読むことはできますが、
・まずはジェネレーティブAIの定義や仕組みを知りたい!
という方は前々回記事(読了時間目安:5分)を、

ジェネレーティブAIの具体的機能や使用リスクを知りたい!
という方は前回記事(読了時間目安:7分)を読むと、
より当該AIについての理解を深めることができます。

国内企業

国内事例においては、まだ一般的な知名度は少ないものの将来性が高く、サービスローンチが最近である/近年大企業に注目されている会社を2社ご紹介します。


株式会社デジタルレシピ

-  謝罪文や忘年会の断り文句までAIが丸ごと考案。人間を超える『チート級』キャッチコピー生成

(引用:公式HPより)

Twitterで3万いいねを記録した『謝罪生成AI』や、人間関係を傷つけず、丁重に忘年会を断るための『忘年会お断り文章生成AI、果ては『ヒットする少年漫画の設定生成AI』まで。

2022年6月末から株式会社デジタルレシピはAI文章作成ツール『Catchy』を使用し、商品・サービスの名称や特徴などを入力するだけで、AIがキャッチコピー・記事文章・資料・セールスレター等をアウトプットしてくれるというサービスを開始しました。

上記のようなユニークなサービスをローンチするかたわら、Catchy本体のキャッチコピー作成サービスは導入企業のネット広告獲得単価を半減させるなどの実績を出し、
公開からわずか2ヶ月で会員数1万人を突破、導入企業も複数社抱えるといった勢いを見せています。

(引用:公式HPより)

料金プランで一番人気なのは9800円/月の無制限プランですが、0円/月で使える無料プランや、独自生成ツールをオーダーできるプランまで幅広くマネタイズ展開をしています。

広告媒体に応じてメッセージ性を変更可能/特定のターゲット層に刺すためのメッセージを作成可能というコピーライティングのコアとなる機能もまたアップデート実装されており、
キャッチコピー制作時間は約10倍速にもなる一方で、
・トライアンドエラーをこなせる回数が劇的に増やせるという利点が期待されます。

そして当サービスの一番の凄み、自分のワードセンスを超えた新たなアイデアを得られるという利点を筆者のユーザー体験を交えてご紹介します。

(引用:Dawn Capital公式HP

こちらは当ファンドの公式HPの紹介文です。
これを当ツールにコピペし、キャッチコピーを生成すると…



もはや人間が考えたキャッチコピーと遜色ない文章がいくつも生成され、非常に驚きました。
ちなみに本記事のタイトルも、Catchy考案のコピーを複数組み合わせて作成したものです…!
私たち人間にありがちな、『頭が煮詰まって何もアイデアが出ない…』『独創的なアイデアを出そうとするほど、ありきたりになっていく…』そんな状況を、本サービスは覆すことでしょう。

海外企業も含めどこの企業も印象的なキャッチコピーを持っているのが通例ですが、いずれはその発案元がジェネレーティブAIになるのかもしれません。


株式会社PLUG

-  カルビーのポテチ売上を1.3倍に。岸田総理から表彰を受けた、大手食品メーカー続々導入の東大コラボAI

カルビー・日清製粉・味の素・森永など日本を代表する食品メーカー各社が、マーケティングリサーチとパッケージデザインを展開するPLUG AIリリースの『パッケージデザインAI』を続々と導入し始めています。

同社は、
・1,000万人の学習データをもとに、AIが商品のパッケージデザインをたった10秒で評価するサービス
・より消費者に好まれるパッケージ・ロゴのデザイン作成ツール
を提供しています。

東京大学・山崎研究室との共同研究で作られた評価AIは徹底して客観的な指標から商品を俯瞰するほか、一定期間が過ぎれば画像は消去されるなどデザイン案の漏洩にも配慮しています。

(引用:公式HP

パッケージデザインAI10秒〜数分で最大1,000枚のデザイン案を生成し、消費者が好むデザイン案を作り上げます。
デザインを消費者の好意度順、かわいい順などにランキング化し、視覚的にどのデザインを優先すべきかわかりやすいのが特徴です。

(引用:公式HP

ちなみに本稿の見出し画像はジェネレーティブAIで『ドーナツ』というキーワードで出力したものですが、AIが作ったスイーツ画像、全く違和感がなくてお洒落ですよね…

このような利点を活かし、カルビーのポテトチップス『クランチポテト』はリニューアルにおいてパッケージデザインAIを活用したことを2020年9月に発表していましたが、リニューアル前のデータと比べて何と売上が1.3倍に増えたといいます。

デザイン評価AIは1画像あたり15,000円の単発利用や、1年間50万円の使い放題サブスク型などから選択可能。
デザイン生成機能は2~30万円から使用可能であり、ロゴ作成は最大2枚作成で15,000円とマネタイズ体制は既に万全です。

直近では、なんと岸田総理大臣からの表彰を受けたとのこと…!

当サービスは
・商品開発の期間短縮を図れる
・デザイン改良のヒントを得られる

といった点が評判を呼んでいるほか、

消費者調査を行った際のデザイン仮説検証・商品開発吟味の回数には限界がある』という従来のペインを解消するものとして、活躍する見込みです。


海外企業

海外事例においては、誰もが知る知名度を持ち、市場規模が巨大/真新しいソリューションとなりうる開発を行う会社を2社紹介します。


Microsoft

-  競合相手はAmazon、Google。三つ巴のコード生成市場で、世界規模のソリューション構築に挑む

Microsoftは、AI Lab Projectと銘打ち独自のAIイノベーションを作り上げてきました。
開発の例としては、知能を有するロボット汚染水浄化に特化したAI、最もユニークなものだとパンやコーヒーなどの様々な匂いを識別できるスマートデバイス『人工鼻が挙げられます。

(引用:https://www.microsoft.com/en-us/ai/ai-lab-artificial-nose)

そんなMicrosoftは、現在ジェネレーティブAIのコード生成分野で最も注目を集めている企業の一つです。

Microsoftは2018年10月、非常に有力なソフトウェア開発プラットフォームGithubを75億ドル規模で買収していました。
そうしてMicrosoft傘下となったGitHubは2022年6月21日に、プログラマーが書きたいコードをAIが推測して自動的に補完する『GitHub Copilot』をローンチしています。

数十億桁のコードでトレーニング済みのCopilotは関数の実装や単体テストをまるごと提案できる場合もあるほか、Python・JavaScript・TypeScript・Goといった数十種類のプログラミング言語に対応しています。

本サービスの凄みは、ソフトウェア開発者に関する
・近年上昇中の雇用コスト
・人材不足
・生産性の低下

といった普遍的かつ大規模な課題の根本的ソリューションとなりうる点です。

(引用:https://devskiller.com/true-cost-of-recruiting-a-developer-infographic/)

Upworkによればコード開発人材の平均雇用時給は、初心者: $25/時間、中級者: $41/時間、上級者: $80/時間です。

加えて2021 年の労働統計局のレポートによるとソフトウェア開発者の平均離職率は 57.3%(自発的離職はうち25%) であり、離職者の穴埋めのための再雇用には最大で$60,000を払う必要すらあります。

対してCopilotは、開発チーム用料金は一人当たり$44/年、企業用料金は$231/年非営利団体は割引価格学生や教師は無料で使用可能など社会貢献を意識した良心的な料金設定がなされています。

(引用:https://socialimpact.github.com/)

最低賃金が急上昇している欧米諸国(US平均時給は約$32!)においては、離職率が高く雇用コストが一定以上かかるコード開発者を少しでもAIで自動化したい、という意図は特にテック企業では切実でしょう。
他にも、資金的問題からソフトウェア開発者の雇用・維持に頭を悩ませるスタートアップ企業にとっても、本機能は有利に働くかもしれません。

ドミノピザのアシスタントマネージャー職の求人に$3000の入社祝い金が提示されるなど、特にアメリカでは賃金の高騰が著しい
(引用:https://www.businessinsider.jp/post-253985)

生産性の面でも、コード開発を自動で大幅アシストしてくれる機能があれば、煩雑な処理に気を取られることなくより本質的な開発に人間が向き合える時間が多くなります。
従業員がワーク・エンゲージメントを感じている場合の企業の収益性は 21% 高くなるとの調査も発表されており、当サービスが提供しうる生産性の向上は直接的な企業利益に繋がるでしょう。

以上のような事情からか、当該分野におけるビッグテックの開発競争のスピード感には目を見張るものがあります。

競合他社としては、Copilotローンチのまさに3日後の2022年6月24日に、AmazonはCopilotと同様のコード生成サービス『Amazon CodeWhisperer』を発表したTechcrunchが伝えています。

(引用:上記記事)

さらに、Googleが秘密裏にコード生成プロジェクトを推進していることをBUSINESS INSIDERが2022年12月1日にリークしました。

両社のサービスとも詳しい価格設定などはまだ明らかにはなっていませんが、Microsoft・Amazon・Googleというビックテックによる三つ巴の競合が今後どのように動くのか注目です。


NVIDIA

-  4年後の市場規模は47兆円。ジェネレーティブAIがゲーム市場の『ゲームチェンジャー』になる未来

andreessen.horowitzジェネレーティブAIについて、『リアルタイム3D以来、ゲームにとってこれほど革新的なテクノロジーはなかった』と興奮気味に語っています。それはなぜなのでしょうか?

(引用:https://nativebyte.co/2022/03/30/time-cost-and-quality-triangle/)

従来のゲーム業界には、『コスト・品質・スピードの三角形のうち、実現できるのは二つまで』といった共通認識がありました。
しかし当該AIは、それを打ち砕くというのです。

実例を追って説明していくと、まずジェネレーティブAIは自律的な画像生成/ビデオ生成/3Dモデル生成といった機能を持ちます。

例えばビデオ生成に関して著名半導体メーカーNVIDIAは、ジェネレーティブAIを駆使して画像を再構成するニューラルグラフィックス技術DLSSを開発しました。

AIでまったく新しいビデオフレームを作成して画像を再構成するこの技術を上手く使えば、ジェネレーティブAIが半ば自動的にゲーム画面を作成してくれるのです。

NVIDIAはさらに、3Dモデル作成技術にも力を入れています。
NVIDIA GET3Dは、リアルに忠実なテクスチャや複雑な幾何学的ディテールを備えた3Dモデルを生成することができます。

生成されたオブジェクトはゲーム/ロボット工学/建築/ソーシャルメディアといった業界において、建物/屋外スペース/都市全体の3D表現等で使用可能であり、その活用の幅はさらに広がる見通しです。

ここで話をゲーム業界に戻すと、当該業界は
ゲーム制作は特にアートアセットに関して莫大な金銭的・時間的・人的コストがかかる ▶︎ゆえに、参入障壁が高い
といった慢性的なペインを抱えていました。

上記の投稿ではゲーム開発予算の40%はアートアセットにあると紹介されており、他にも世界観にこだわるほどに制作コストは巨大化していきます。

例えば人気ゲームRed Dead Redemption 2は、5億ドルの製作費、8年の構想期間、1,000 人以上の声優付きキャラクター、30平方マイル規模の世界、100人以上のミュージシャンによって作成された約60時間の音楽などによって構成されています。

(引用:https://a16z.com/2022/11/17/the-generative-ai-revolution-in-games/)

しかしここで莫大な制作コストのソリューションとなるのが、NVIDIAのサービスのようなジェネレーティブAIの自律的な画像生成/ビデオ生成/3Dモデル生成機能なのです。

当該AIのサービスは、
・簡単なツールを習得できる人なら誰でも利用可能
・無数のアセット開発を反復可能
・開発プロセスではほぼ瞬時に結果が得られる
という利点を持ちます。

これによりアセットコンテンツ価格はほぼゼロに、制作時間は120分の1まで凝縮されるとの仮説を、Slackやコインベース等錚々たる投資を行うa16zのJames GwertzmanJack Soslowは示しました。
その上、『エンターテインメントの中でジェネレーティブAIの影響が最も大きいのはゲーム業界である』と断言しています。

PwCは、ゲーム市場規模は2021年の売上ベースで2,357億ドル(約34兆円)だが、2026年には3,211億ドル(約47兆円)に拡大すると予測しました。
当該AIが新たなビジネスツールとしてゲーム業界で地位を確立して莫大な利益を出す可能性は、非常に高いと言えるでしょう。

一番右上に『Games』の文字。
リアルタイム体験と複雑なアセットにより構成されるゲームは、ジェネレーティブAIとの親和性が非常に高い
(引用:https://a16z.com/2022/11/17/the-generative-ai-revolution-in-games/)




いかがでしたでしょうか?
他にもジェネレーティブAIを活用した大企業のサービスとしては、MetaGoogleによる動画生成事業やIBMによる創薬事業Amazonの音楽生成キーボード等が注目を集めています。
これらの事例はまだ明確なビジネス化には至っていないためご紹介しませんでしたが、当該AIがあらゆる企業間の開発競争に組み込まれる日も近いでしょう。



最終回となる次回記事では、ジェネレーティブAI分野の注目ユニコーンに焦点を当てて活用事例をご紹介します。
米国スタートアップ業界の最新動向が学べる記事となっておりますので、是非ご覧ください。

文・リサーチ/八並映里香
写真・クリエイティブ/池田龍之介



〈前回記事〉:ジェネレーティブAIの具体的機能や使用リスクについて
(読了時間目安7分)

〈前々回記事〉:ジェネレーティブAIの定義や仕組みについて
(読了時間目安5分)