一年経ったのでもう一度ガイドラインと向き合う記事を書くことにする
序
私がSplatoonコミュニティでなんかいつの間にか名前を憶えてもらえるようになったきっかけはこれらの記事ではないかと自認している。
これらの記事を書くに至ったのは2023年10月24日に以下のガイドラインが公開されたからだ。
今回はこのガイドラインが公開から1年を迎えたのであれから1年の間に私自身の知見や認識もアップデートされたことに伴って、改めてこれを読み解いていこうと思う。
破
ガイドラインとはそもそもどういうものか
このガイドラインはユーザーがコミュニティ大会を開催するにあたり「この内容に沿って開催するにあたっては任天堂は著作権の侵害の主張を行わない」という趣旨で作成されたもの。
ガイドラインとは(ルールや法律を守るための)『指針・指標・方向性』といった意味合いを持つ。おそらくこのガイドラインで意識しているルールや法律とはニンテンドーアカウントの利用規約や知的財産基本法、著作権法などがその主たるものではないかと推測される。
要するにこれらに違反しないために自主的に遵守されることが推奨されるルールがこのガイドラインという解釈になると思われる。
お約束事
第1にこのガイドラインではコミュニティ大会を営利目的で行うことが認められていないと読み解くことができる。
オフラインでは出場および観戦料に上限が定められており※1、オンラインではそういった金銭を一切受け取ることができないことが明記されている
その他にも金銭が絡む点についてはある程度細かく記載がなされてる
もちろんゲーム大会でよくある「賞金」についても言及されているがここは後程別の部分と供に触れる。
※1 上限自体は許諾申請で変更を申し出ることが可能
加えて、コミュニティ大会がコミュニティ大会であることをハッキリさせるために以下の文章の掲載、掲示が求められている。
この文言、告知物に掲載する必要があるのでよくあるTwitterでの告知やPVなどにもつける必要があるので要注意だ
幸いイカナカマに大会概要を記載する場合はデフォルトで追加されているようなので漏れにくくなっている。うっかり消したりしないように注意されたし
また、許諾を得て開催する場合はその際に発番される許諾番号についても掲載等の必要がある。ここもせっかくした取得したものなので忘れないように活用しよう
開催規模に関して
個人が大会を開催する場合オフラインでは200人、オンラインでは300人が動員できる上限になります。これは1日あたりの最大参加者数であり、例えばスプラだと4人チームであれば75チームです。
タイカイサポートを使用した場合は参加者数の設定が64のチームの次は128チームであるため75チームという設定ができない。そして128チームに設定しようとすると後述する許諾番号の入力が求められるため、タイカイサポートを使用して(4人制)大会を開く場合は上限は64チームと考えて良さそう
それ以上の規模で開催したい場合は以下の選択肢になる
・日程をわける(上限は1日あたりなので1日目300人、2日目150人の累計450人とかは可能)
・許諾を取得する(許諾申請時に参加人数の上限変更を申し出る)※2
※2 この場合チーム数ではなく想定の最大出場者数を記載して申請することになる。もちろん実際に集まる人数がそれ以下になっても問題はない
ところで、少し横道にそれるが許諾申請時にしか確認できないルールが存在する。それが下記の画像である。
許諾申請で開催日を記載する欄の注釈に添えられている文章だがガイドラインの本文の方にはこれに対応する記載が見当たらない。おそらく許諾を取らないケースでも適用されると推測されるが…現状該当するケースがINK WAVEかナワバリフェスぐらいなのであまり認知されていない内容だと思われる。
もう1点。これも許諾を得ようとして初めてわかったことだがガイドラインのQ&Aに以下の記載がある
この「独立したゲーム大会~」のくだりは実は学校のサークルや町内会が主催する場合以外でも適用される。しかもランキングや出場資格に影響するものでなくとも他大会と関連するような内容である時点で許諾はもらえない。
同一主催者によるものであればこの限りではないようだが、他主催者の大会と関連付けることはできない。と認識してもらえればOKだ。
大会名に関するルール
大会名に関しても使用できないものが定義されている
任天堂の商標や知的財産に該当するもの(ゲームタイトルやキャラクター名などと想定すれば良い)
第三者の法人、団体、商品、サービス名、屋号もNG
明記されてないので見落としがちだが当然他社の商標や知的財産にも注意学校名などに関しては前提条件次第では組み込むことは可能(下記画像)
商標の部分については読み解くのが難しいが雑に切り分けるならここで単語の検索をかけて「商標」で引っかかったら使用を避けるのが無難。ぐらいの認識でいれば良いと思う。ちなみにその理屈だと「甲子園」や「天下一武道会」などが該当する。
一方でことスプラトゥーンにおいてはキャラクターやブキ名が固有名詞の様で、そうではないケースも多いのでわりとそのまま使用できるものがある。
例えば「ヒメ」や「イイダ」などを大会名に組み込んだとしてそれがNG判定されるかと言えばNoと言えるのではないかと思う。それぞれがそのキャラクター以外を意味する言葉でもあるからである。もちろん名称によってはアウトなものもあるがある程度は使用できると考えてもいいと思われる
景品に関するルール
今をもっても多くの人が勘違いしている傾向が目立つのがこの記載
この中でも金券がわかりにくいものの代表格だと思う。実際にコミュニティで採用されているのを見かけたことがあるものでダメなものを上げてみよう
・スターバックスのドリンクチケット(XXX円分の~みたいなもの)
・プリペイドカード(AmazonギフトやAppleギフト、QUOカード)
・ローソンやファミマのお買物券
要は「XXX円分相当の~」みたいなものはダメだと考えよう。
「ギフトカード」「お買物券」「〇〇チケット」「〇〇ポイント」みたいな名称のものは避けるべきだと読み替えてくれてもいい
逆に「引換券」「引き換えチケット」のようなものはセーフなものが多い。よくみるのは「コンビニに引き換えられるハーゲンダッツ」「からあげくん」「お茶」などは特定の商品との交換をするものなので金券などにはあららない
paypayを景品に採用する人がたまに見られるがあれはガッツリ電子マネーに該当するので金額が少額であろうとアウトになる
特に海外だとこのあたりが大分杜撰で守られていない傾向が強い。仮に海外の大会で景品として賞金を得た場合そのプレイヤー自身もガイドラインではなくアカウントの規約違反でBANされる可能性も否定できないことを覚えておいた方がいいだろう(ホンマここしっかり任天堂取り締まってくれ…)
スプラコミュニティにおいては金銭は少しなりを潜めているのでより多くの人が気になるのはイラストを景品とする部分ではないかと思う。
これについては「景品とすること」以前に二次創作物を大会で使用すること自体について説明する形で触れることにする
二次創作物の利用
二次創作物とやや大きなくくりにしているが動画や静止画を加工したものについては「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」が適用されることもあり、ある程度許容されると考えていいのではないかと思われる。
一方で二次創作イラスト、前述のガイドラインで言えばファンアートなどに類されるものは大会ガイドラインの以下の記載に引っかかると思われる
ちなみにこれは実体験によるもので私の場合はインクリング(いわゆるイカちゃん)を対象にしたものではなかったが、あるスプラトゥーン関連のイラストを自作して大会で採用したいという要望を任天堂に出した所、NGを出されたので実体験を持って間違いないとほぼ断定できる。
先の例は景品以外の部分での利用だったがこれがダメということは景品として採用すること自体もNGだと考えていいだろう。
なお、言うまでもないが他の版権のキャラクターについては静止画や動画であっても使用できない。もちろんイラストも該当する形になる(※版権元に許可を得ている場合は例外だが)
主催と許諾について
ガイドラインは基本的に「個人の主催者」が大会を開催する場合に遵守すべきものとなっている。この「個人」がどこまでを指すかの認識がわりと人によってわかれるように思う。
コミュニティでよく見る「共同主催者」がいる場合は「個人」に該当するのかしないのかで以前舌戦を繰り広げたりもしたが、私個人の意見としては複数人による主催の時点で許諾を取るのが妥当だと考えている。
余談だが、私はEMBLEMSなどの大会をやるにあたり「あかつき企画」名義で許諾を取得しているが、「あかつき企画」自体は現状私1人で運営している。
私のケースでは単に「ガイドライン的にグレーなところがありそうだったので許諾を取りに行くことでそこを説明して許諾をもらって堂々と開催する」という目的でこれを行うことにした。
なので実態としては1人なのだが「これからスタッフが増える」あるいは「必要に応じてスタッフを募る」というような記載を行った上で申請をしている。
このことからわかると思うが、極論を言えば主催者単独による運営であっても許諾を取ることは可能なのだ。なぜなら許諾申請時に任天堂に送付するのはあくまで代表者の情報とその団体のWebサイトやSNSアカウントであるからである。
なので
・ガイドライン的にグレーゾーンな企画を考えている
・主催者に該当する人物が複数人からなる
これらに相当する場合は許諾を取りに行くということを個人的にはおススメしたいと思う。
ただ、許諾を取ることのデメリットも一点ある。例えば先の「あかつき企画」については許諾を取ったことによって任天堂からは団体であると既に認知されている
このため、大会内容的にはガイドラインの範疇をでない企画であってもあかつき企画の名義で開催する場合は任天堂による認識としては『団体』による開催なので許諾なしでは大会を行えないのである
このため、ガイドラインの範疇の大会を開く場合は個人名義のアカウントで別途開催する必要があることになるわけだ。
時折アカウントを分けて大会運営をされている運営の方がいらっしゃるのはおそらく私と同じ背景からだと思われる。
これに準じていらっしゃらないパターンの方もたまにお見受けするが、実際に注意が入ったケースもあるというので、基本的に許諾を受けた団体名義のアカウントで大会をやる場合は今後も許諾を取って行うということと認識してもらいたい
制限と排除
ガイドラインの中で「規定」という表現が出てくる記載箇所が以下になる
この中でとしてコミュニティ引っかかる要素としては以下があげられるのではないかと思う
年齢
国籍
酒類(・薬物)の使用を看過
深く考えずに読み下すと年齢や国籍を大会のレギュレーションに組み込むことはできないと判断してしまいかねないがこれは違うと思う。
あくまでここで書かれているのはそれらの属性による不当な差別や嫌がらせを排除するために(主催者が)最大限努力することだ。
よって年齢制限を設けたりすることがそれすなわち不当な差別や嫌がらせに当たるのかと言われればそうではないと思う。
もちろんいかなる人も対象とすることが望ましいと言えばそうかもしれない。しかし大会の趣旨や運営側の能力…特に外国籍の方を参加の対象とする場合は必然的に対応する言語でコミュニケーションが取れることを想定する必要がある。しかしながらそういった環境は誰しも整備できるわけではない。こうした事情から止む無く参加の対象とないというのは排除ではなく配慮であり不当な差別や嫌がらせには該当しないと思う。
年齢に関しても世代が違えば出力(パフォーマンス)は大体異なる。これに配慮したものとして制限をかける。あるいは運営上の都合を考慮して下限を設けるといった対応もより多くの人に親しんでもらうという意味では非難されるようなものではないと思う。
酒類の使用に関しては主催者側が想定できないあるいは対処不能なトラブルが起きる可能性が考えられることなどを考慮すると制限せざるを得ないというのが正直なところだと思う。雰囲気だけでいいならいっそみんなでノンアル持ち寄ってやるとかどう…こればかりは任天堂の企業イメージ的にも「良し」とは言えないのだと思われる。
急
ガイドラインと共に歩んだ1年がもたらしたもの
およそ1年前に公開されたガイドライン、そしてその副産物であるタイカイサポートはコミュニティの大会運営シーンにかなりの変化をもたらした。
これまでよりも大会を運営するにあたって求められる能力のハードルは下がり、結果爆発的に大会は増えた。
その一方で大会自体の質は少々低下したようにも見える。またガイドラインに対する取り組み面でも運営の中で多種多様となっておりよく読まずに軽率に違反しているものや、読んだ上でグレーゾーンや危ない橋を渡って運営するなどルールが敷かれたことでそれぞれの運営のスタンスみたいなものが浮かび上がるようになった気がする。
プレイヤーの皆さんにも知ってもらいたいのだが、大会ガイドラインは運営だけが守っていればOKというものではない。
プレイヤー、運営、観戦というコミュニティに関わるすべての人が正しく理解してそれに準じて大会を楽しむという営みこそがこのガイドラインに対するあるべき向き合い方だと思う。
よってまだ他人事だと思っている人はこれを機に一度ちゃんと目を通して欲しい。
わかりにくいところがあったら気軽に聞いてください。できる限りで答えるし、一緒に考えますので。
ガイドラインはルールだと冒頭で説明しましたが、それは『今の段階では』と言えると思います。
運用から1年、任天堂も実態調査をまったくしていないなんてことはないと思います。コミュニティにおいてガイドラインが守られていないと判断されれば『ガイドライン』は『規約』に代わりより厳しい制約が課せられるようになる可能性も0ではないわけです。
私達はあくまで任天堂が創出したコンテンツを借りて楽しんでいる側です。
どこまでいってもイニシアチブは開発元にあります。
遊び方にもルールがあるものです。ルールを守ってみんながより楽しめるコミュニティにしていけたらきっともっと自分にも恩恵があるのではないでしょうか。
この記事がより多くのコミュニティの方の目に届き、そして多くの方の意識を変えることに繋がれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。