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『20代の失敗酒場 ~迷走編集者の取材日記~』第9夜 怪しいブックカフェの店長Sさん

こんにちは。
本誌連載企画「20代の失敗酒場」担当編集の笹渕です。
 
酒場ライターのパリッコさんと一緒に様々な人たちの若き頃の失敗談を聞きまわり、現在発売中の弊誌11月号では9回目となった本連載。
 
今回からは誌面と連動して、絶賛迷走中20代編集者・笹渕の目線から
「20代の失敗酒場」取材日記をこちらのnoteで更新していきたいと思っております。


「20代の失敗酒場」ができるまで

さて、まずは「20代の失敗酒場」という連載についてお話させてください。
先ほど少し触れたように、この連載はもうすでに失敗も迷走も諦めた(とおっしゃっている)40代ライターのパリッコさんと、現在進行中で日々迷いに迷いまくっている20代編集者の笹渕が人生の先輩たちに、その名の通り‟20代の頃の失敗談“を語っていただくという趣旨の企画になります。

しかしなぜ、『ダ・ヴィンチ』でそんな連載をやっているのか……というとこんな経緯がありました。

仕事が溜まるとすぐにキャパオーバーになってしまう。
スケジュールの管理や調整が仕事のひとつなのに、自分自身のスケジュール管理がガバガバ。
普段から取材現場に30分前に着くように行動を心がけているにも関わらず、電車の乗り換えを間違えまくって取材に遅れたこともあったり……。
こうして並べるだけで恥ずかしいのですが、
正真正銘の‟ポンコツ編集者“であるわたし。


本誌8月号の「20代の失敗酒場」内の西村マリコ先生によるマンガより。
「メールの返信早い人って仕事できる人が多いよね」に対する私の反応。反省の色が見られない。

日々こんな様子なので、
「なぜ失敗が減らないのか……」「仕事に全く自信がない……」など
わたしの頭の中はいつもネガティブな言葉が渦巻いています。
しかし、こうしてうじうじと悩んでいる時の、会社の先輩との飲み会がこの連載を立ち上げるきっかけになりました。

その日の飲み会では、仕事の悩みを先輩に話しつつ、ふとした瞬間に「先輩が20代後半の時ってどんな感じでしたか」と聞いてみました。
テキパキ働く”しごでき”だったんだろうな……と思っていたのも束の間、先輩はあっけらかんとした様子で、「わたしの20代のころなんてめちゃくちゃだったよ~」と話してくれたのです。

ここでは詳しく語ることができないのですが、その失敗のめちゃくちゃさにわたしは失礼ながらも思わず大笑いしてしまいました。
それと同時に「これだけ活躍している先輩でも、20代の頃はこんな失敗をしているんだ」と少し安心してしまったのです。

いつもわたしからは、同年代の人たちがみんなしっかりしているように見えていました。それもあって自分のポンコツさが余計に目立つような気がする……とずっと感じて恥じていたのです。

でも、もしかするとそれは「今の時代の風潮もあるのかもしれない」とふと思いました。
現在20代の私たちは学生時代からSNSが身近にあって、簡単に自分の言葉や行動を他人に共有できる環境で生きてきました。それは他人と気軽にコミュニケーションができて、なおかつ様々な情報を受け取りやすいという利点があります。
しかしその一方で、自分の間違いや失敗がなんらかの形で拡散されてしまったその瞬間、「すべてが終わってしまう」かのような騒ぎに発展してしまう恐れがいつも身近に付きまとうということでもあります。

だからこそ「失敗が怖い」。
そうして、たとえ失敗をしてもなかったことのようにしてしまったり、
なるべく失敗しないように行動したり。そんな人もいるのではないか。

しかし、先ほどの先輩の話を聞いた時、実はみんな失敗を通ってきて今があるんだな、と。その当たり前のことに改めて気づくことができたのです。

わたしと同じように「失敗」に悩み、恐れている人たちがもしかしたらいるかもしれない。そんな人たちと一緒に、人生の先輩たちの失敗を「酒のつまみ」のように楽しめたらいいな。
その思いに共鳴してくださったパリッコさんと一緒に、この「20代の失敗酒場」という連載を始めたのでした。


怪しいブックカフェの店長Sさん

今回の取材者は、
横浜の中華街で怪しいブックカフェを経営するSさん。

実は、わたしはSさんとは以前別の取材でお会いしたことがありました。
その時の取材がとても印象に残っていたこともあり、ぜひSさんの失敗談を聞きたい!と思いこの企画でもとオファー差し上げたのです。

この日の取材はSさんのお店で行われたのですが、ここは少し特殊なブックカフェ。
入口は布と本棚で隠されており、一目ではブックカフェとは気づかないような外観。そして小窓のようなところからフードやドリンクの注文をしてようやく店内に入れるというシステム。
ここまで全く「お客さんに入ってほしい」という気持ちを感じないのも珍しい。

隠された入口を通過して、お店に入ってみると壁にならぶ本の数々。それらは天井まで届いていて、まさに「本に囲まれている」状態。
今回が初来訪のパリッコさんは「なんだかすごいお店ですね………」とものすごく困惑されていました。お気持ちわかります。
(※ここまで話すとどこのお店かバレてしまうかもしれませんが、見つけたらラッキー!なブックカフェ、ぜひ探してみてください)

店内をチラ見せ。本の圧がすごい。

この「20代の失敗酒場」は、お酒を飲みながら取材を行うという不真面目連載。
わたしは「パリッコさん、ここにはチンタオビールがあるんですよ……」とささやき、今回も迷いなく注文。Sさんも一緒にチンタオビールや紹興酒を飲みながら、20代の頃の失敗を語っていただきました。

これも仕事です。酒がうまい。

ちなみに、以前の取材ではお店に関してのインタビューを行ったのですが、
最後に「今後店主としての野望などはありますか?」との質問に対しSさんの答えは

「いやぁ、野望はないですね!ひたすらひっそりとしていきたい」

でした。

取り繕うことをせずに正直な自分の気持ちを第一にされている姿はお店はもちろん、今回の取材でも滲み出ておりました。その姿、見習いたい……!

その他、全くしなかった就職活動や、先のことを決めずに仕事をすっぱりやめてしまったお話など。Sさんの失敗の詳細は本誌『ダ・ヴィンチ』11月号をご覧ください。(西村マリコ先生のコミカルで楽しいマンガも必見です)

最初困惑気味だったパリッコさんも、取材が終わる頃には「Sさん面白い人だな~!」とのこと。お二人は仲を深められておりました。

こぼれ話
~取材後のパリッコさんとわたし~

パリッコさんとわたしは取材を終えて、Sさんおすすめの中国料理屋へ。

「中華街っていつもなんとなく食べ歩きをしたり、目についたお店に入りがちですよね」とパリッコさん。たしかに、中華街って雰囲気全体が楽しいのでついつい行き当たりばったりでお店選んじゃいますよね。

Sさんが紹介してくれたお店は本格中華という雰囲気で、店員さんのみならずお客さんも中国人の方がたくさん。メニューを覗いてみると「豚背骨ガラ肉の特製醤油煮込み」や「ラム肉・カキ・漬け白菜の酸味土鍋」など日本では珍しいメニューに2人で大興奮。
パリッコさんはホッピーセット、わたしは角ハイを飲みながら、一つひとつの料理に舌鼓を打ちつつ、大満足な取材の打ち上げでした。

豚背骨ガラ肉にかぶりつくパリッコさん。

パリッコさんはこのまま中華街に泊まっていくとのこと。すっかり酔っ払いながら笑顔で「もうホテル行って寝るだけです!あはは!」となんともうらやましい一言。
店先でパリッコさんとは別れ、わたしは日々の鬱憤を晴らすかのように近くのゲームセンターで散財し、1時間以上かけて帰路についたのでした。


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