執筆日:2023年12月01日(金)
執筆日:2023年12月01日(金)
オフィシャルサイト(ポートフォリオサイト)
はじめに
わたしが所属する東京信愛教会(旧日本基督教)のホームページに、「当教会は、統一協会(世界基督教統一神霊協会 ※一部報道で「統一教会」と表記されていますが、正式には「統一協会」となります。)、エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)、モルモン教(末日聖徒イエスキリスト教会)とは一切関係ありません。」と、記載しました。3つの団体は、2,000年以上継承されてきたキリスト教の教義と異なり、伝統的なキリスト教の教派である東方正教会、カトリック教会、聖公会、プロテスタント教会の教理とも異なります。先日、毎月開催している教会を案内する教会めぐりのアフターにおいて、参加者やスタッフから日本人の宗教に対する嫌悪感は、オウム真理教が大きいと感じる方がおりました。わたしは、小学校から中学校にかけて、オウム真理教が出馬した際に、選挙のときに歌っていた曲を学校内で真似する友達がいるほど社会に浸透してきていました。キリスト教会(プロテスタント教会)の牧師の子(5代目のクリスチャン)として生まれ、たくさんの牧師や信徒を見たり、接したりすることが多かった環境で育つ中で、どことなく違和感を感じたのを覚えています。世紀末の日本では、カルト宗教問題として、オウム真理教の地下鉄サリン事件(1995)や1990年代の統一協会の合同結婚式騒ぎ等において広く知られるようになりました。「カルト」は本来、祭式、崇拝、礼替、流行といった意味であり、その語源はラテン語のcultus(「耕作地」後に「宗教儀礼」の意)にさかのぼります。カルトが「カルト宗教」として邪教や偽宗教といった意味で使われるようになったのは、南米ガイアナにおける人民寺院の集団死事件(1978)の頃からと思われます。米国人の教祖ジム・ジョーンズがつくったカルト団体は、夜明けから夕暮れまで週6日労働を信者に強要したり、脱退者を麻薬の使用や飢餓、性的虐待などを行い、数百人を「洗脳」し、信者に自殺を強要し大人と子ども計914人が集団自殺させた。ちなみに、洗脳は、虐待や拷問、違法薬物、電気ショックなど、暴力的手段を用いて相手の心を支配することに対し、マインドコントロールは、心の隙に入り込み、情に訴えたり巧みな会話で相手の心を変えるよう導くことです。
カルト宗教とは
「カルト」を岩波国語辞典で調べると、「特定の対象を熱狂的に崇拝したり礼賛したりすること。また、その集団。異端的宗教。「―教団」「―映画」(その分野の愛好者たちが熱狂的に支持する映画)」の意味である。カルト宗教は、非倫理的なマインド・コントロールの手法を用いて信者を獲得し、その人格を破壊し、人権を侵害し続ける宗教や宗教的な装いをもった擬似宗教(団体)のことを言う。宗教以外にも、商業、政治、教育等の分野で同様の手口を用いて活動を展開しているものを「破壊的カルト」と呼ぶ。カルト宗教が用いるマインド・コントロールは、物理的な身体拘束等の状態において強引になされる「洗脳」とは違って、環境や情報を制限するなどして、個人の人格を自分たちの教義や思想に従う新しい人格と置き換え、その思考、感情、行動を操作することである。その内容は、病気や生活上の問題等についての不安感を増幅させたり、世の終わり(終末)を強調して恐怖心をあおるなどして自分たちの教義を一方的に教え込み、さらに、現実の諸問題について善か悪かの二者択一を迫ったり、「告白」を要求して罪と恥の意識を掌握して人格の変革をなすなど、さまざまな手法が使われる。マインド・コントロールに陥りやすい性格とか年齢、性別といったことはなく、誰でもそれに陥る危険性があると言える。
カルト宗教における「礼拝」はそれぞれ独自の形式を持っているが、その中で教祖が教えを説いたり(法話、講義など)、伝道師あるいは講師と呼ばれる人物が教義を解説する場合が多い。その内容は、教義を強烈に教え込んだり、感情を刺激し、さまざまな束縛からの自由を説いて精神の高揚感や快感を与えたり、さらには恐怖感を植えつけたりといった特徴がある。また、「修行」という形で、信者が教祖に帰依する内容の言葉を繰り返し唱えさせたり、瞑想の中で教祖と“一体化”するイメージを与えたりする形式もある。
カルト宗教の問題は、それに取り込まれてしまった人自身が被害者でありつつ、同時に、他の人を勧誘することによって新たな被害者を生み出す加害者でもあるという点にある。カルト宗教に取り込まれてしまった肉親をもつ家族の悩みと苦しみは深く大きい。
キリスト教系大学の注意喚起は何か
カルト宗教は、学生たちへのアプローチ方法が70年代、80年代は、統一協会が路上で「手相を勉強している者ですが」と言って、手あたり次第に声をかけていくというのがメインであったが、コロナ禍以降は、SNSを非常に巧みに利用している。いわゆる大学生たちが利用する、非常に良質な出会い系のSNSである。その中にカルトの布教者たちが紛れ込んでいて、巧みに、自分たちの集まりに誘導している。
青山学院では、「キリスト教」を名乗る団体について、ホームページで注意喚起をしている。キリスト教は、あくまでも個人の主体的決断を尊重し、強制的手段に頼ったり、自分たちの名前を隠して勧誘したり、理性的判断を鈍らせるような手段を一切否定する。同時に、指導者の考えを一方的に押し付ける権威主義や、感情にのみ訴える熱狂主義も、聖書では厳しく批判されている。青山学院大学宗教主任会が公表している二つの文書(「青山学院大学とキリスト教」「サークルのふりをした危険な宗教団体に注意しよう!!」)でカルト宗教の勧誘に対する注意喚起を行っている。
フェリス女学院大学では、カルト宗教から心と身を守るための注意喚起として、「破壊的カルト」以外に、自己啓発セミナーやマルチ商法などに代表される「経済カルト」、法律に違反する行為はしなくとも人道上の問題を含む行為を行う「ソフトなカルト」が存在することを伝えている。サークルだと思っていたら実は宗教団体だった、「友だちになってほしい」と相談してきたなど、いずれの場合も巧みに心の隙間をついて勧誘してくる。「今の自分が嫌い」「もっと上を目指したい」という皆さんの向上心を利用する場合もある。これらの団体は、「しつこく勧誘する」「個人情報を聞き出したがる」「家族や友人などとの接触を禁じる」「住む場所を指定し監視する」「信者獲得などノルマを課して働かせる」「結婚相手を指定する」など、徐々に皆さんを追い詰め、生活を壊す。つまり、人の心と生活のすべてを縛ろうとするのである。自分を守るために大切なことは、一人ひとりが自尊感情を育み、人権意識を養うことである。あなたと他者、特に、様々な意味で弱い立場にある人を大切にする感性を身につけることだ。一方で、どれほど注意していても、そのような団体に近づいてしまうことがある。なぜなら勧誘する人はプロだからだ。近づいてしまった人が悪いわけでも弱いわけでもない。ただし、「このサークル、何か変だな?」「友だちのようすが最近おかしい」と感じたときは迷わずに行動する必要がある。マインド・コントロールを拒絶する一番よい手段は、友人や家族に相談するなど、第三者に話を聞いてもらうことである。「これは深い話だからあなただけに話した。ほかの人には話さないで」などというのは、マインド・コントロールの始まりである。合わせて、「自分たちだけが真理」「外部には私たちに対して陰謀を抱く者たちがいる」などと言われたら、情報操作や情報規制を感じたら逃げる。あなたはもうその集団の一員と思われています。心の不安を乗り越えて、とにかく逃げる。
おわりに
先日、1890年(明治23)から約130年に渡る歴史をもつ伝統的なプロテスタント教会の牧師と交わりのときをもちました。その際に牧師が口にした言葉が今でも力強く残っています。それは、「キリスト教会は、誰に対しても開かれている」と、ここまではよく耳にする言葉であったが、牧師の言葉は続いて、「出口も開かれている」ということであった。カルト宗教は、正体を隠し、甘い言葉で誘い込み、中に入ったら、拘束し、情報を遮断し、出さない。つまり、「出口が開かれていない」のだ。宗教は自由である。
カルト宗教の洗脳を描く衝撃作!映画『わたしの魔境』予告編
参考文献:教会建築家の推薦書籍
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