教会建築と教会建築家の仕事(設計)で大切なこと
執筆日:2023年11月28日(火)
更新日:2023年11月28日(火)
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はじめに
「教会」は、信仰を持つ人びとの集まりを指す言葉である。その人びとのための建物を「教会堂」と言う。「教会」はギリシャ語の「エクレシア」に由来し、使徒(信徒)の集まりを示す。つまり、教会堂(教会建築)がなくても、教会は存在する。事実、初代教会の時代や迫害が激しかったとき、使徒(信徒)たちは教会建築の建設が難しく、代わりに家や地下の墓地で集会が行われていた。写真は、シリア東部のドゥラ・エウロポスで3世紀に発見された遺跡であり、民家をキリスト教の教会建築(通称「家の教会」)として使用していたものである。右側が礼拝堂で、中央に洗礼室がある。洗礼室に残っていたフレスコ画は、おそらく現存する最古のキリスト教絵画とされる(初期キリスト教美術)。
教会建築の御言葉
「教会」は、建物ではなく、人びとの群れであることは、下記の聖書の御言葉からも明らかである。
教会建築家の御言葉
教会建築の歴史による継承と改革
宗教建築は、建築の発生にさかのぼるもっとも古い存在である。それは人間の集まり、それと世界の関係の本質に関わるだけに、その設計は、誰にとっても可能であると言えるが、同時にまた、専門の設計者にとってはもっとも困難な課題だとも言える。とりわけキリスト教の教会建築は、二〇〇〇年の長い歴史をもっている。その歴史の中で行われてきた継承と改革の内容を正しく知る必要がある。
教会建築の知識と感性
教会の教会建築を設計する建築家には、知識と感性が求められるが、その設計を正しく見分ける見識は、信徒や教職者に備わっていることが大切なことである。
神を讃美する教会芸術
教会の中から総合的な芸術としての教会建築、教会美術、教会音楽などが生み出されてきた。最高の業を捧げようとする努力から生まれ、信仰を深めてきた。最高の業とは、決して最高の物質的な贅沢を行うことではない。大きな聖堂の豪華さではなく、小さな礼拝堂の中にも最高の芸術があり、与えられた環境で最善を尽くすことが神を讃美する最高の業なのである。
教会建築の設計で大切な光
キリスト教の教会建築での私の設計の中心は「光」である。それは単なる視覚的な対象としての光ではなく、人びとを包み、人びとを一つにするような光である。光は空間の本質であり、キリスト教の聖書を貫く一番大切な概念で、神学や建築の歴史を通じての主要なテーマである。スコラ哲学者トマス・アキナスは、光は「精神と物質の媒介者」と定義したのである。キリスト教の教会建築は、「光の形」を設計する、光の設計といっても過言ではない。
共有の場所が形を与える
教会は、信仰を持つ人びとの共同体を意味するが、この共同体を生み出す大きい条件のひとつに人びとがひとつになる場所、ひとつの空間を共有することが大切である。場所と空間の共有に形を与える存在が建築である。この建築の特徴こそ、哲学者ジョン・デューイが『経験としての芸術』の中で、建築芸術の本質として賞賛している。
人びとをつなぐ場所である教会芸術
さらに哲学者ジョン・デューイの芸術感は、「全ての芸術が、表現するゆえにコミュニケートする。芸術は私たちに、真理を、生き生きとまた深く共有させるようにしてくれる。芸術を織りなしている表現というのは、このコミュニケーションが純粋無垢な仕方で現れたものである。芸術は、人類を分断している障壁を、日常的な繋がりでは通り抜けられない障壁を、突き破る」ものである。
祈りが沁み込んだ場所
人びとの集まりがある特定の場所で持続し、形成され、ひとつに統合される大切な条件は、その特有な場所における持続が形において確認されることである。ローマ人が守護の霊という意味の「ゲニウス(Genius)」と場所・土地という意味の「ロキ(Locī)」の二つのラテン語からなる「場所の精霊」(ゲニウス・ロキ)を考えた。このことをキリスト教的にいえば、数多くの人びとの祈りが沁み込んだ場所の記憶といえる。
おわりに
教会建築の建設は、費用の工面から設計案の決定に至るまで大変な仕事である。それを教会の人びとの総意として決定するのは、信徒にとっても、神父・牧師にとってもとても苦しい困難な業である。教会建築の建設が、しばしばひと握りの人びとの下で、多くの意見を無視して強引に行われるのは、その故でもある。しかし、教会という共同体としての群れにおいて、もっとも相応しくないプロセスである。
教会建築家の仕事は、教会の一人一人と、共につくることが大切である。
参考文献:教会建築家の推薦書籍
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