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レノファなスタジアムの話(11)街中スタジアム(その2)

前回の記事では、サッカーに限らずスタジアム・アリーナを行政(都道府県や市町村)が作ると用地の問題が難しくて郊外に作りがち、でも街中に作ろうとしている動きもあるよ、ということをご紹介しました。

実はそんな中、国が街中へのスタジアム・アリーナ建設を後押ししているのをご存知でしょうか。

国のスタジアム・アリーナ改革

それは、経済産業省スポーツ庁『スタジアム・アリーナ改革』として取り組んでいるもので、スタジアムやアリーナを「まちづくりや地域活性化の核」と位置づけ、全国の20程度の拠点を「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」として選定しよう、というものです。

現在までに11の施設が「運営・管理段階」又は「設計・建設段階」で、3つの施設が「構想・計画段階」で、それぞれ選定されています。
サッカー関係で言えば以下のものが該当します。

※他に野球場が1箇所(エスコンフィールド北海道)、アリーナ(屋内競技施設)が構想・計画段階を含めて6箇所選定済み

これらのスタジアムに共通して言えるのは、

  • 「するスポーツ」の為の施設ではなく「見る(見せる)スポーツ」のための施設である

  • 民間企業などが事業に参画している

  • 街中(市街地に近い場所)に建っている

  • 単なるスタジアムに留まらない、(周辺施設を巻き込んだ)複合施設である

といったあたりです。
(今回は「街中に建っている」「複合施設である」点について触れますが、他の項目についても次回以降触れます)

国が「街中スタジアム」を推すわけ

で、なんでこういった施策を国が後押ししているかというと、国として、スポーツを「産業」にしていきたいという考えがあるようなんですね。

政府が掲げる成長戦略である日本再興戦略2016の官民戦略プロジェクト10に、スポーツの成長産業化が位置づけられた。スタジアム・アリーナは、スポーツ産業の持つ成長性を取り込みつつ、その潜在力を最大限に発揮し、飲食・宿泊、観光等を巻き込んで、地域活性化の起爆剤となることが期待されている。さらに、未来投資戦略2017(平成 29年6月9日閣議決定)において、2025年までに20か所のスタジアム・アリーナの実現を目指すことが具体的な目標として掲げられ、今後、多様な世代が集う交流拠点となるスタジアム・アリーナを整備し、スポーツ産業を我が国の基幹産業へと発展させていき、地域経済好循環システム を構築していく。

スタジアム・アリーナ改革ガイドブック <第2版>「本ガイドブックのねらい」より

今までスポーツに関しては「体を動かすという人間の本源的な欲求」、つまり自分が体を動かすこと(=スポーツに参加すること)を前提にさまざまな施策が考えられてきましたが、これからは(見る)スポーツが飲食・宿泊・観光といった地域を活性化させる材料の一つとなりうる、ということを国が考えているわけです。

実際、レノファのこと一つとっても、アウェーサポーターの方々には「Jリーグがなければ山口に来ることはなかった」なんてことを言われる人も少なくないですし、ホーム・アウェーのサポーター問わず試合後すぐに湯田温泉で祝勝会・反省会をする人もいれば、ホームサポーターだって年に一度の下関開催の時は朝から下関に乗り込んで試合前に唐戸市場で寿司を食べるのが楽しみという人も多いですよね。

ある団体の試算によれば、2022年のJリーグクラブによるホームタウン(都道府県)への経済波及効果は、J1クラブで40億円から200億円、J2クラブでも17億円から80億円に上るそうです。(レノファは約34億円と試算)

加えて、全国には高度経済成長期に建設した体育施設群が大規模更新の時期を迎えているといった現実的な問題も控えています。
そんな中で、この国の事業(多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ)に採用されると、事業費に対して国のさまざまな補助制度を受けやすくなるというメリットもあったりします。
選定予定箇所はスタジアム・アリーナを合わせて20箇所以内(後6箇所程度)、期限は2025年(再来年)まで

ということで、全国各地で「乗るしかない、このビッグウェーブに」となっている地域が多数ある、というわけなんですね。
レノファもこのビックウェーブに乗ってくれるとみんなが楽しみになると思うんですが…どうですかねぇ?

「街中スタジアム」の果たす役割

そしてもう一つ、国の「スタジアム・アリーナ改革」では、その施設がまちづくりの中核となる事、言い換えると、スタジアムが周辺施設を含めて、複合的な機能を組み合わせた交流施設(これを「スマートベニュー」と呼んでいます)の中核となることを求めています。

スタジアム単体では、どうしても試合のない日は人が集まりません
このことがこれまでスタジアムの価値を下げていた側面が否定できないのですが、スタジアムに日常的に使える施設、例えば、ホテルやショッピングモール、福祉医療施設などと組み合わせること(同一施設である必要はなく、周辺に施設を配置するのもあり)が出来れば、試合のない日でもスタジアムの周りに人が集うことが出来るわけです。

実際、長崎スタジアムプロジェクトはスタジアム・アリーナとホテル・オフィスビル・商業施設を一体的に整備しようという壮大な計画ですし、京都のサンガスタジアムはスタジアム内に保育園が併設されています。

そう考えた場合、常日頃から人が集うスタジアム・アリーナを地域活性化により寄与させるためには「利便性の確保」は不可欠で、そのためにも街中の交通アクセスの良い場所にスタジアムを建設する必要がある、という考え方なんですね。

そんな利便性の高い施設を行政主導で整備するのにはいろいろと限界があるのですが、次回はそこら辺について触れたいと思います。

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