レノファなスタジアムの話(22)スタジアム計画が「停滞」するとき(1)
前回投稿から2か月近く間が空きました。
いかんせん、レノファ界隈では監督とGMが退任し、かつてJ2で話題となった人物が監督に就任し、といろいろ変動があったりして、スタジアム話に関して筆(というかキーボード)が進まなかったというのもありまして。
そんな中で、今般、秋田と鹿児島からスタジアム計画に関する報道があったので、ちょっとこれをネタに記事を書いてみようと思います。
両者に共通しているのは、『スタジアム計画が停滞していない?』とJリーグから指摘を受けた、という点です。
※すみません、今回と次回はレノファネタ薄めです。
スタジアム計画とクラブライセンス
クラブライセンス制度について
この話を進める前段として、クラブライセンス制度の話をしておく必要があります。
Jリーグに参加するには、アマチュア最高カテゴリのJFL(日本フットボールリーグ)で実績を上げて、並行してJリーグから承認を受けて、初めてJリーグに入会(参加)することが出来ます。
ただこの場合、成績が良ければそれでいいかというとそうではなく、プロサッカークラブとして「環境が整っている」ことが求められることになります。
これを審査する制度が「クラブライセンス制度」になるのです。
これで審査される項目には、クラブの運営法人が経営的に成り立っているか(債務超過ではないか、など)、ホームタウンとなり得る自治体(都道府県や市町村)の協力が得られるかなどの項目があり、その中に、ホームスタジアムが一定の基準を満たしているか、ざっくり言えば「プロの興行が出来るレベルのホームスタジアムが確保できるか」というものがあるのです。
これは、ディビジョン(J1/J2/J3)ごとに細かい基準が異なっています。
レノファの場合、維新百年記念公園陸上競技場の改築の際に、当時の県庁の中に知恵者がいたとみられ、レノファがまだ中国リーグ所属だったにも関わらず「最低でもJ2のライセンス基準は満たせるように」整備し、更に必要に応じて改修工事を行った結果、現状スタジアムに関してライセンス基準を心配する必要がない状態になっています。
2018年の運用見直し
で、このスタジアムに関するライセンス基準ですが、2018年末に取り扱いが一部変更になっています。
具体的には「現在基準を満たすスタジアムがなくても、近い将来に基準を満たすスタジアムを整備する計画があれば、スタジアムの基準を満たしたことにする」という形で運用方法が変わったのです。
これは、スタジアム基準を満たせなかったためにJ1昇格プレーオフに進むことの出来なかった2014年のギラヴァンツ北九州や2018年のFC町田ゼルビア、J3で優勝しながらJ2昇格を果たせなかった2017年のブラウブリッツ秋田の例を鑑みたもので、チームの実力があるのに環境が行き届いていないために昇格(の可能性)を阻まれる機会を減らしましょう、という趣旨から導入されたものです。
この制度の導入のお蔭で、かなりのクラブがスタジアムに関して上位のクラブライセンス基準を満たせることになり(スタジアム整備計画を立てればいいわけですから)、設備が整わないために昇格を阻まれるというケースはほとんどなくなりました。
但し、この制度で与えられた猶予期間は「着工から3年以内」または「計画策定から5年以内」とされており、今回の秋田と鹿児島の事例は、まさにここに引っかかってくる話になるのです。
秋田の事例
ブラウブリッツ秋田のホームスタジアムであるソユースタジアム(秋田市八橋総合運動公園陸上競技場)はスタジアム全体にほぼ屋根がないなど、J1のスタジアム基準を満たしていません。
そもそも秋田はJ3時代にあきぎんスタジアム(現・秋田スポーツPLUS・ASPスタジアム、秋田市八橋総合運動公園球技場)という球技専用スタジアムを使用していたのですが、ここは収容人員や夜間照明等でJ2のスタジアム基準すら満たせなかったという事情があり、辛うじてJ2ライセンスを満たしうるソユースタジアムを半ば暫定的にホームスタジアムにしたという事情があり、ライセンスを満たせるサッカースタジアムの確保は悲願でもあるわけです。
そんな中で、秋田は2021年に新スタジアム整備を前提としたJ1ライセンスを申請し、J1ライセンスが交付されることになります。
これは秋田市が市郊外の外旭川地区におけるまちづくり構想で、複合型ショッピングモールと卸売市場の建て替えと共に新スタジアムの整備を盛り込んだことを受けたもので、翌年には事業提案者もイオンタウンに決まり、これが実現できれば新スタジアムに前進…となるはずでした。
ところが、この構想そのものに対して商業関係者や市場関係者から異論が噴出。そもそもが穂積秋田市長の掲げた「コンパクトシティ構想」からの方針転換で始まったこともあり、基本計画から先の見通しが立ちにくい状況となったわけです。
で、この状況に対して、Jリーグが2024年度のライセンス申請に当たって「ライセンス交付のためのスタジアム計画は大丈夫なの?」とブラウブリッツ(と秋田市)にボールを投げた、というのが先日の話になるわけです。
秋田市は「市が経費面で支援したい」「(猶予期限の)2026年度には工事に着手できるよう県とともに進めていく」と書いた書面をブラウブリッツを通じてJリーグに提出するようですが、これを見てJリーグがどんな判断を示すかということになりそうです。
そして鹿児島の事例はもっと根が深い話になっているのですが、こちらについては次回に触れたいと思います。
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