見出し画像

レノファなスタジアムの話(35)みらスタの芝がよろしくない理由

去る2024年7月17日、レノファ山口FCのホームスタジアムである維新みらいふスタジアムで天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会の3回戦、JAPANサッカーカレッジ vs レノファ山口FCの試合が行われました。
試合当日の雷雨の影響で一週間延期になったというのもありましたし(この日行われた試合はこの試合のみ)、JAPANサッカーカレッジは2回戦でJ1名古屋グランパスに勝利したというのもあってそれなりに注目された試合だったのではないかと思いましたが…

いかんせん芝が酷すぎましたね。

日本サッカー協会の公式サイトには天皇杯の公式記録が全て掲載されているのですが(PDFの公式記録参照)、この試合については「天候:晴」にもかかわらず「ピッチ(芝):不良」とはっきりと書かれています。

日本サッカー協会のライブ配信やNHKのゴールシーン映像でも、芝の状態の酷さは一目瞭然。

試合後のレノファ・志垣良監督も公式コメントで直接苦言を呈しています。

ひとつ苦言を呈させてもらうのであればピッチ状態が良くなかった。上から見るとまともになっているかと感じるかもしれませんが、実際に中でやっていると、土が見えている部分も多いです。天候もあり、自然相手の中で管理するのは難しいことだと思いますが、地面がデコボコしていてボールも転がらないですし、イレギュラーもおこる。土壌も柔らかいと選手の怪我にもつながってくるので、スタジアムの芝が改善されるように願っている次第です

レノファ山口FC公式サイト『天皇杯3回戦』試合情報より

ホームチームの監督から苦言を呈されるのですから、「相当なもの」だと思った方がいいですよね…

ピッチ不良になってしまう理由

では、芝がこのようになってしまう理由は何なのか。
Jリーグのスタジアムで芝の不良が問題になったスタジアムはこれまでいくつかあります。

大分ビッグアイ(現:レゾナックドーム大分)とノエビアスタジアム神戸の場合は、どちらもドーム形状に由来する日照と通気性の悪さが原因とされています。

そして味の素スタジアムや日産スタジアム、国立競技場の場合は、利用頻度の高さ、特に音楽イベントなど全面的に人が入り込むようなイベントを行った際に生じた芝の劣化が原因だと言われています。

では、維新みらいふスタジアムの場合の芝劣化原因は何か。
私は、端的に言えば「ピッチの排水の悪さ」が原因だとみています。

みらスタのピッチ劣化の原因

以前にもこのnoteで書きましたが、維新みらいふスタジアム(維新百年記念公園陸上競技場)元々田んぼのど真ん中に整備された競技場でした。

田んぼ(水田)というのは、その名の通り川から水を引き込んで、水が浸った状態で春から夏、秋を迎えますから、総じて水はけのあまり良くない場所に作られます(逆に言えば、水はけの良すぎるところではコメが作れないとよく言われています)。
なので、そもそも地理的に水はけの良くない土地であることは想像に難くないと思います。

実際、大雨のたびにみらスタのピッチが水浸しになっている…という場面を何度も見たことのある方は多いのではないでしょうか。

(レノファ公式マッチデープログラムライターの上田真之介さんの記事。2021年の話)

で、単に水浸しになるだけならともかく、水が引かない状態が長く続いたり、水が引く前に急に高温になったりすると、簡単に言えば『芝生にお湯をかけた状態』になってしまい、根腐れの原因となってしまいます。

実際、天皇杯の直前のJ2第23節鹿児島戦(2024年7月6日)の試合後の公式コメントでも、志垣監督はこういうことを述べています。

-ピッチコンディションについては、実際にどう捉えていたか?

ここ最近の降り続く雨で、芝が腐ったような状態になり、ほぼ土の状態でした。ゴール前でバウンドが変わってシュートチャンスを逃すということもありましたし、相手のロングボールに対して関(憲太郎)が難しい対応になった状況もありました。イレギュラーが起きて難しかったと思いますが、そういう中でもトライした姿勢は素晴らしかったと思います。

レノファ山口FC公式サイト『第23節 鹿児島ユナイテッドFC戦』試合情報より

この時点でもピッチコンディションはなかなか酷い状態でしたが、この試合から高温3日間→断続的な雨1週間→試合当日の晴れ模様、でしたから、この間だけでも芝へのダメージは想像に難くないと思います。

解決法はあるのか

では、みらスタの芝問題の解決法はあるのか。
端的に言えば「根本的な解決方法はあるけど、それなりにハードルが高い」とみています。

芝の修復

まず芝の修復について。

みらスタで既にやっていると思われる対処方法としては『エアレーション』という方法があります。
芝の通気性を確保するための方法で、簡単に言えば「芝に多数の穴を開けて目土をする(土や砂で埋める)」というものです。
非常にお手軽ですが、芝の自然回復力を当てにするため、然るべき「芝の育つ期間」が必要になります。(今回のように雨が続くと効果が出ない)

次に『芝の貼り替え』。
今の芝を剥がし、他所で育てた芝に貼り替えるという方法ですが、芝を張ってすぐは「自重で置かれているだけ」なので、全面的に芝を貼り替えたときは一定の養生期間(ピッチを使わない期間)が必要になります。
なので、シーズン中に行うのはかなり難しいと思われます。

なので、当面の話としては、エアレーションと部分的な芝張り替えの組み合わせで、どのくらい改善できるか待つしか無いというのが現実的なところなのだろうな、と思っています

排水の改善

次に、「構造的に排水をよくする」方法について。

実はみらスタは2016年(平成28年)にスプリンクラーの整備と共に芝生下に暗渠排水管(水抜き管)を多数埋め込んでいます。

ただ、今回の件は、これでも効き目がないということになるので、水抜き機能の向上が必要ということになります。

一つ考えられるのが「暗渠排水管の洗浄」。
暗渠排水管は水を抜くために多数の穴もしくはスリットの空いている管なので、当然しばらく使っていると目詰まりを起こします。
これを高圧洗浄により目詰まりを解消しよう、というものです。
土木工事などで実際に使っている方法で、それなりに効果があるようです。

後は、実際には調べてみないと何とも言えないのですが、こういう「水が抜けない」時はどこかで水がたまってしまっていることが多いので、途中で水を外に出してやる仕掛け(ポンプの増設とか)を考えるというのもあると思います。

根本的に改善しようとすれば

では、根本的に改善する方法はないのか。
考えられるとすればみらスタの大改修ということになります。

具体的には、ピッチを嵩上げして水がたまりにくくする(この場合はピッチ部分のみを嵩上げするのは難しいですから、トラックも含めて全体を嵩上げすることになるでしょう)か、ピッチの下を掘り下げて水を通しやすい層(砂や砂利など)を今よりも厚くすることが考えられます。

いずれにしても、億単位のお金と相応の工期がかかります。
シーズンオフの期間内に全てを解決させるのは期間的に無理でしょう。

で、あれば、新しいスタジアムをとっとと作ってしまう、というのは、割と現実的な案としてあるのではないか、とも思っています。
そもそも、山口県内にはJリーグ規格に適合したスタジアムがみらスタしかありません(セービング陸上競技場は照明設備が無いためナイターが出来ない)ので、冗長性を確保する意味でも、Jリーグ規格に合致したスタジアムがもう一つあってもいいのではないか、とは思っているところです。

じゃあ、そのスタジアムを、誰がどの金で作るんだ…という話になるのですが、その辺は次回以降にしたいと思っています。

今回はここまで。


いいなと思ったら応援しよう!