レノファなスタジアムの話(18)レノファ版スタつく⑤宇部市編
(トップ画像はWikipediaからお借りしました)
レノファ版スタつく話の第5弾です。
前回までの記事はこちら。
今回は、山口市の西隣、宇部市で考えてみます。
宇部市について
宇部市は人口16万人弱。
長らく下関市に次ぐ山口県第二の都市の座を確保していましたが、山口市が合併等で規模を拡大させたこともあり、県内では3番目の規模となっています。
海底炭鉱の宇部炭田を祖とするUBE(宇部興産)が町の礎となっていて、典型的な工業で栄えた街となっています。
宇部市におけるUBEの存在感は半端なく、山口ペイトリオッツのホームアリーナ・俵田翁記念体育館、以前レノファの新体制発表会を実施していた渡辺翁記念会館はいずれもUBE(の前身会社)が建設して市に寄付してできた建物ですし、ときわ公園もUBEの創始者・渡辺祐策が個人寄付したものです。
で、改めて言うまでもなく、UBEはレノファ山口FCのオフィシャルトップパートナーでもあります。
もう一つ、レノファのオフィシャルトップパートナーと言えば、永年に亘って胸スポンサーを務めているユーピーアール (upr) も宇部市に本社を置く企業です。
というわけで、宇部市だと、こういった企業を絡めるといろんなことを出来そうだなというのが、なんとなく期待が持てるわけです。
交通アクセスを考えると
ただ、宇部市の場合、地理的な要因で少々不利な面があります。
市の中心部が幹線道路網や幹線鉄道網から少し外れている、というのがあるんですよね。
道路網では国道190号や山口宇部道路が市内へのアクセスとなりますが、国道2号や中国道・山陽道からは海側に外れています。鉄道網も同じで、新幹線駅の最寄は新山口駅または厚狭駅になります。
逆に、山口の空の玄関口である山口宇部空港は宇部市沖宇部の、市街地からさほど離れていない場所にあります。
空港アクセスを考えて道路網はそれなりに整っている上に、東側にはふれあい公園や亀浦公園という再開発の出来そうな敷地もそれなりに確保できそうなので、ここを活かすのが現実的なのかな、というのはあります。
加えて、空港にほど近い宇部市東見初地区(ひがしみぞめ、フジグラン宇部のもっと沖合)では県が宇部港の埋め立て事業を実施していて、ここの中に「スポーツ・レクリエーション施設用地」が確保されていることも判っています。
となると、やっぱり空港周辺がかなり有力な土地であることは間違いなさそうです。
もっとも、空港近くのスタジアムと言えば、福岡のベスト電器スタジアムや、松本のサンプロアルウィンが思い出されますが、どちらも空港からの交通アクセスを積極的に生かした、というわけではなく、「運動公園を作れるスペースを探したら空港のそばだった」ということのようです。(ベススタは福岡空港そのもののアクセスが良好なのを生かしている、という側面はありますが)
「空港近く」であるが故に
その一方で、空港の傍にあることで、建築物はある制約を受けることになります。
これは航空法で定められた「制限表面」というもので、簡単にいうと「航空機の離着陸の妨げになるので、一定以上の高さの建物等を建ててはいけない」というものです。
この場合の「建物等」は、建物(ビルやスタジアム、アリーナなど)だけではなく、鉄塔や樹木なども含まれます。
アルウィンに行かれたことのある方はご存知だと思いますが、あそこは山の上にありながらスタジアム全体が掘り込み式で、かつバックスタンド側の照明が観客席最後部から前方に迫り出すという特徴的な構造をしています。
これは、スタジアム全体がすぐ近くの松本空港の制限表面の影響を受けており、通常のスタジアムのような照明塔を建てることができないための苦肉の策だったりするのです。
よく考えてみれば、ベススタも照明塔がなくて屋根埋め込みですよね。
(余談ですが、最近まで福岡市の繁華街・天神に高層ビルが建てられなかったのも、この「制限表面」が理由だったりします)
ということを考えると、山口宇部空港の周辺でも同じようなことが言えるわけで、スタジアムを建てるとすれば「掘り込み式」「照明塔なし(屋根埋め込み?)」みたいな構造にならざるを得ないかな、と。
そういうことを踏まえると、空港近くにスタジアムを建てようと思ったら、普通のところに建てるスタジアムよりは建設費が高くならざるを得ない、というのは覚悟しなければいけないかもしれません。
他の場所は
であれば、敢えて「空港から離れた場所」ということも考えられるのですが、宇部の市街地(特に宇部新川駅周辺)は小規模な商業施設がぎっちり詰まっているような場所で、用地取得(特に権利関係の処理)を考えると、ここを再開発してスタジアムを…というのは、市街地再開発に本気で取り組まない限りはちょっと現実的ではないかな、とは思います。
西部の干拓地や北側の丘陵部あたりを再開発して…というのもアイディアとしてはあるのかも知れませんが、この近辺になると、以前やったきらら浜の時と同じ話で、スタジアムとは別に交通アクセスの確保のための巨額の投資が必要になるので、これも個人的にはあまりおすすめしません。
強いて言えば、宇部市西部の際波(宇部駅の南1.5kmぐらいの場所)に「際波信号場」という宇部線の信号所(単線で列車が行き違いをするためだけの施設)があって、この周辺を再開発するというのは考えられなくもないのですが、スペース的にスタジアム1個を収めるだけの土地が生み出せるかどうか微妙なのと、道路が混雑しやすい場所にあるので、これも微妙かなぁ…と思うところです。
なので、宇部の場合は資金面(企業からのスポンサード)を期待できる反面、スタジアムの「適地」を確保するのが難しいのかなぁ…というのが私の感想です。
そんなわけで、このシリーズ、もうちょっとだけ続きます。