区分所有権を考える
建築設計のお仕事をしていて、いっときマンションの大規模修繕にいも関わっていました。
マンションの不具合を調べて報告し、図面を書いて予算を決めて、総会を経て工事が設計通りしっかり行われているかを監督して完成させる。
そんな事をしていました。いわゆるマンション大規模修繕コンサルタントと言われるお仕事です。
色々あって今は関わっていませんが、マンションの事を色々知るようになり、興味を持つようになったのが『区分所有権』というものでした。
分譲マンションの住人になる時、土地と建物を所有する事になり、その事で所有権が発生します。
建物については自分の自由に出来る『専有部』と、管理組合を通した共同所有という形をとる『共用部』に分けられます。
土地については、共同で持っているものをそれぞれの持ち分(専有面積の割合で案分)がありますよと言う体を取っています。
専有部はまあ良いとして、共用部の所有の権利って、具体的にどこを所有しているの?となると、ちょっと実感持ちにくいものがあるように思います。
土地の所有権があると言っても、それじゃあ居住者全員で分けますかとなったら、ほとんどのマンションで所有が無意味な使えない土地だらけになります。敷地が広かったとしても、道路に面していなければ出入りできませんし、電気や水道の引き込みがもらった土地に当たるとは限りません。
まあそもそも持ち分あるからと好き勝手出来ないのが区分所有法なのですけどね……
なので土地の所有者ではあっても、その土地も、専有部以外の建物も自由にできないのが区分所有者となります。
自由に出来ない代わりに、共同管理となる共有部では自己負担が少ないのに充実した設備を利用出来たりしますし、メリット・デメリット両方ある仕組みと思います。
この仕組み、住み続ける間は色々あるでしょうがまだ何とかなります。しかし将来的に問題が噴き出すだろうと思うのが、マンションの建て替えが迫って来た時です。
建て替えとなると管理組合員の80%が同意が必要となり、この権利を持つのが区分所有者です。
会社のように方向性が大体一緒の人間が集まっているならまだしも、住まいへの考え方や立ち位置が十人十色な住人が、八割同意するのがどれだけの難関か、考えたくもないですね。
資金面とこの同意の難しさは建て替えの大きなハードルとなってしまうのです。
そしてそろそろ大量供給が始まった頃の分譲マンションが建て替え時期を迎えます。
このご時世の例に漏れず人手不足が深刻化してゆくこの業界で、時間と手間のかかる建て替え事業が賄えるのか、そっちも結構心配なんですよね……
datoko