スーダン日記2018.8.20(2)
翌日はイードルアドハー。日本語では犠牲祭。イスラムの2つの大きな祭りの一つだ(もう一つの祭りは断食明けのイードルフィトル)。
ここでは祭りのご馳走のメインは羊。というわけで、私たちも家族で食べる羊を買うために車で出かける。
と言っても我が家には車が無いので、彼の友人が車で迎えに来てくれて、一緒に羊を探すらしい。
幹線道路を走ると、道沿いのいたるところで羊たちが群れている。群れのそばには羊飼い(?)の男性がいて、誰かが買いに来るのを待っている。
お目当ての羊を入手した客は、車の荷台に羊を積んで家に向かうようだ。タクシーの上にも羊が積まれている!
私たちも車を降りて羊を見る。お尻をつかんだり口の中を見たりしてめぼしい羊をチェックする。激しく値段交渉の言葉が飛び交う。
交渉が折り合わなかったらしく車に乗り込むと、ちょうど前の車では羊を積み込んでいるところだった。嫌がっているような羊たち。餌の草も付けてくれている。
さっきの交渉相手が私たちの車まで追いかけてきて、ドアをつかんで何か言いながら引き止めようとする。振り切って発車!次の場所へ移動する。
道路の反対側でも羊を見るが、どうも気に入らないようで、買うには至らず。
羊探しの合間に携帯ショップに寄った。スーダンに到着後すぐにSIMをこちらの電話会社のものに入れ替えたのだが、うまく繋がらなかったのだ。
店員さんがあれやこれやと試した挙句、埒があかず新しいSIMに替えてくれた。有効になるまで15分ほどかかると言われ、その間に車の不具合を直しに行くことになった。
10分かそこら走って到着した辺り一帯は、工具を売る店やさまざまな修理をする工場が集まっているようだ。
大通りから路地に入る。3日間降り続いた雨の後で、舗装されていない道はぬかるみがひどい。水が引かない巨大水たまりもある。轍が幾重にも交差した地面を、車は上下に激しく揺れながら進む。
知っている店なのか、ある工場の前で車は止まった。ここは流石に男性しか見当たらない。車の修理が終わるまで車の中で待ちぼうけだ。暑い。泥の中を犬たちが走り回っている。
15分経っても電話はつながらず、ため息が出る。車の修理は終わったようで再び電話ショップに戻る。
電気の切れた薄暗いショップで待つのもくたびれ、電話が使えなくてもいいよと私と妹は諦め始めるが、ショップの店員は諦めない。
トイレを借りたら、その汚さにため息が出る。便器の座る部分の板はないし、水を流す場所が分からない。
ちなみに便器の座る部分の板がないのはよくあることだ。筋力とバランス力が試されるトイレである。水はどうやって流したんだっけ。今となっては忘れてしまった。
トイレから出て時計を見るともう4時半だ。。。と思った頃、店員が携帯を手にニコニコやってきた。「今度こそつながったよ!」私の携帯だけかろうじてつながった。
薄ピンクと水色の入り混じる夕暮れの空に背中を押され、羊を入手しないまま一旦ガソリンを入れて家に向かう。
肝心の羊は買わず、携帯ショップと車の修理で日が暮れてしまい、大したことはしていないのに待ち時間が多くて疲れてしまった。
そういえば、日本にいるときに、ガソリン不足で車が長ーい列をなしているとスーダンの記事を読んだが、今は状況が少しは良くなったようだ。
代わりに今はパン屋に人が列を作っている。小麦粉危機だとか。
この記事を書いている2021年になって、その時を振り返ってみると、このパン屋の行列が、民衆デモの直接のきっかけとなったのだった。そして2019年4月にバシール大統領を辞任に追い込んだのだった。
30年間も続いた独裁軍事政権の崩壊…
スーダンが良い国に発展していきますように。
まな板がないのでマンゴーも手の上で切る。フルーツが癒しだ。