「データアーキテクチャ」データマネジメント知識体系(DMBOK)第4章の解説
はじめに
データアーキテクチャとは「データニーズをかなえるための青写真である」と書かれていたところが結構印象に残っていて、成果物を見ながらステークホルダーとここを目指すぞということが共通化されて、イメージが沸くようなものを作ればよいのだと認識している。
ここで語られているのはあくまでもデータの青写真であり、ITの青写真ではない。第3章の「データガバナンス」でも触れられていたように、データとITを1つにして考えるのではなく、データの青写真をかなえるためのITを構築せよと語られている。
自分の経験として、イメージが沸く青写真を作って何をしなければいけないかと言うと、経営陣と合意し投資を受けられるよう支援体制を作らねばならないと考えている。
DMBOKの各章の要約・解説
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データマネジメント知識体系(DMBOK)第4章「データアーキテクチャ」について
データアーキテクチャとは
データアーキテクチャとは企業のデータニーズを明確にし、ニーズに合うマスターとなる青写真を設計し、維持する。
マスターとなる青写真を使ってデータ統合を手引きし、データ資産をコントロールし、ビジネス戦略に合わせてデータへの投資を行う。
DMBOKが定めているアーキテクチャ領域
エンタープライズ・アーキテクチャ
企業のシステムの基本的な構成を具現化したもの。
エンタープライズ・アーキテクチャは、ビジネス、データ、アプリケーション、テクノロジーの4つの要素から構成される。
エンタープライズ・ビジネスアーキテクチャ
企業のビジネス構造を具現化したもの。
企業が顧客に対してどのような価値を提供しているのか、またその過程となる業務プロセスがどのようになっているのか明らかになっている。
エンタープライズ・データアーキテクチャ
企業のデータフローを具現化したもの。
ビジネスアーキテクチャによって作られ、要求されるデータをどのように整理。管理されるべきか明らかになっている。
エンタープライズ・アプリケーションアーキテクチャ
企業のアプリケーション構造を具現化したもの。
ビジネス要件に基づいたアプリケーションの機能と構造が明らかになっている。
エンタープライズ・テクノロジアーキテクチャ
企業の実装技術を明確化したもの。
アプリケーションを稼働してビジネス価値を提供するために必要な技術を明確にしたもの。
エンタープライズ・データアーキテクチャの構成要素
エンタープライズ・データモデル(EDM)
企業のどこまで詳細に作るのかという粒度はリソースによって決める必要がある。これを見たらシステムが作れるレベルまで詳細化することもできるためニーズとリソースにあったものを作る必要がる。
例えばECサービスだったらまずはこんな感じかなと思っている。
・商品情報(店舗:商品情報、写真)
・商品一覧情報(ECサイト:写真、見出し、複数)
・商品決済情報(ECサイト:価格、カード番号、配送情報)
・配送情報(店舗:価格、カード番号、配送情報)
データフロー設計
エンタープライズ・データモデルがビジネスプロセスをどのように移動するのかをわかるようにする。
エンタープライズ・データモデルはあくまでもエンティティと業務プロセスが明確になっているだけなので、エンタープライズ・データモデル間がどのように流れるのかを図示したもの。データフローは様々な記述方法があると書かれており、矢印で順番をつないだだけのものも超簡単なデータフローともいえそう。
商品情報→商品一覧情報→商品決済情報→配送情報
作成したエンタープライズ・アーキテクチャを使って何をするのか
劣化を防ぐ
システムが長く運用されるにつれ、スパゲッティ化は進みシステムは劣化していくのはよく言われていることである。
その時に場当たり的に保守を繰り返すだけではなくて、アーキテクチャを管理しながら進めることでシステムの劣化を防ぐことができる。
イノベーション
新しいビジネスを創造するときに今の会社のビジネス構造、システム構造がどのようになっているのかを一目で把握することが出き、必要な新しい技術を早急に取り入れることができるようになる。
「データアーキテクチャ」のゴール
企業のデータニーズを明確にし、ニーズに合うマスターとなる青写真を設計し、維持する。
青写真を使ってデータ統合を手引きし、データを資産としてコントロールし、ビジネス戦略に合わせてデータへの投資が行われている。
1.データの保存と、処理の要件を明確になっている
2.企業の現在および長期のデータ要件を満たすデータ構造と計画を設計されている
3.先端技術がもたらすビジネスチャンスをうまく生かすために、組織が製品、サービス、およびデータを迅速に展開できるように戦略的に準備されている
「データアーキテクチャ」の進め方
既存のデータアーキテクチャを評価する
データアーキテクチャを実現するのは企業にとって価値があるものだと共通認識を持ち、全社レベルで取り組める状況を作る必要がある。
戦略、ロードマップを策定する
エンタープライズ・アーキテクチャを作ることが目的となると必要な支援を受けられずにビジネスへの効果を出すことができなくなるため、エンタープライズ・アーキテクチャを作る目的をはっきりと定めステークホルダーと認識を合わせる。
今までエンタープライズ・アーキテクチャを作ってこなかった企業にいきなり作りましょうと言っても難しく、組織と文化の変革もセットで取り組むことが成功のカギとなる。
全社要件を定め、管理を行う
データアーキテクチャの実現に向けて、開発プロジェクトを立ち上げ要件定義とプロジェクト管理を行う。
エンタープライズアーキテクチャとの統合を行う
データアーキテクチャを実現するために、エンタープライズアーキテクチャと統合し、企業のエンタープライズアプリケーション開発や統合計画作成に含めることで、プロジェクト成果を向上させる
「データアーキテクチャ」の成果物
データアーキテクチャの構築プロジェクトとしての成果物と、エンタープライズ・アーキテクチャへの統合が成果物となる。
データアーキテクチャデザイン
データフロー
データ・バリュチェーン
エンタープライズ・データモデル
導入のための戦略とロードマップ
データアーキテクチャの解説動画
AI事務員宮西さんでおなじみの宮西さんと松田さんの解説動画となります。
データアーキテクチャについて解説しているので、動画で学びたい人は是非ご覧ください。
おわりに
自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。
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読めば読むほど味が出てくるので、データマネジメントを進めようとしている人は各家庭に1冊は是非買っておきたい。
データマネジメントが30分でわかる本
著者もDMBOKを読むためには非常にボリュームが多く読み解くには苦労するので、かみ砕いた解説書をまとめたと書いてある通り、DMBOKを独自解釈してわかりやすく書かれている。
DMBOKを技術者目線で読み解いた内容になっているので、実践的データ基盤への処方箋と同様データ技術に係る人におすすめする。