DXとデータ利活用の関係性と目指す姿【DXレポート解説1】
はじめに
近年DXとデータ利活用が取り沙汰されています。
DXと並列してデータ利活用が語られるとこがありますが、DXはすなわちデータ利活用であるといった誤解であったり、両者の関係性が正しく語られていることはあまりない印象です。
そのため、DXとデータの関係性がしっくりこないという人も多いと感じています。
今回はDXレポートを参考にDXとデータ利活用の関係性を解説し、目指す姿を解説します。
データ利活用、データマネジメントについてはこちらをどうぞ
データ利活用に必須なデータマネジメント、そのデータマネジメントの教科書ともいえるDMBOKを解説した記事です。
上記DMBOKの解説記事をまとめたkindle本です。
DXとデータ利活用の関係性とは
DX、デジタライゼーション、デジタイゼーションの関係性
DXとデータ利活用の関係性を書く前にまずはDXについて説明する。
DXを理解する上では関係性の深いデジタイゼーションとデジタライゼーションのことを理解しておく必要がある。
DXレポートによるDXの定義は以下のようになっている。
この定義が原因なのか、あくまでも本来のDXに至る過程も含めてDXであると示したいはずが、過程であるデジタライゼーションを達成することがDXと呼ばれていることが多くある。
DXとはデジタルによる変革であり改善ではない事は携わるものとしては忘れてはならない。
DXとは
DXとは「Digital Transformation」の略で、デジタルによる変革を指す用語である。以下に内容を詳細に説明する。
デジタルによるビジネス環境の激しい変化が起きており、従来のビジネスを継続的に続けているといつの間にか継続が難しい状況に陥ってしまう。
従来のビジネスをデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、ビジネスモデルを変革することがDXと呼ばれる。
なぜDXが注目されているかというと、デジタルディスラプターと呼ばれるデジタル企業によって既存企業が危機に陥っているからである。
例えば既存企業である町の本屋さんはデジタル企業であるAmazonにユーザーをとられてしまって閉店するようなことが増えている。
本屋だけではなくあらゆる産業がこのような関係になってきており、このまま指をくわえてみていても、デジタル企業による既存企業の浸食は止まらない。
そのため、既存企業はDXを見据えて投資をして自分たち自らデジタル産業にならないと生きのこる道が無いという危機感からDXが注目されている。
正直、既存企業とデジタル企業の間には資本もスキルも天と地の差があるために今更DXに向けて投資したとしてもうまくいく可能性は低い。
それでも現状を認識して進んでいかなければ、抵抗することなくおいしい所はデジタル企業に取られて植民地のような状態となってしまうので、DXの推進を行っていくべきと考えられる。
DXレポートによると、いきなりデジタル企業に到達するのは困難であり、過程となるデジタイゼーション、デジタイゼーションを経てデジタル企業を目指すべしと書かれている。
デジタイゼーションとは
デジタイゼーションはアナログ、物理データのデジタル化のことを指し、プロセスのデジタル化は含んでいない。
アナログの業務プロセスはそのままで、単純にやり取りするデータをアナログからデジタルにすることを指す。
DXはデジタルによる変革という名の通り、デジタルで考える必要があるためデジタイゼーションは非常に重要である。
単純にデジタル化することは何も価値を生み出さないため、デジタライゼーションやDXを見据えたデジタイゼーションを行う必要がある。
デジタイゼーションで終わってしまうと、ただデジタル化するプロセスが増えただけで、ビジネス的には何の意味もない取り組みになるため避けなければならない。
デジタライゼーションとは
デジタライゼーションとは業務そのものや、組織、プロセスのデジタル化のことを指す。
デジタイゼーションによってデジタル化されたデータを活用することで、可能となったプロセス改善を行うことである。
デジタライゼーションの事例としてはRPA、ノーコード、名刺管理などが挙げられるが、世間ではこのデジタライゼーションのことをDXと読んでいることが多いように感じるが、本来のDXの意味ではない。
デジタライゼーションを行うことで、業務を効率的に行うことができるのでやること自体はすごく意味があるが、これをゴールとしてはならない。
DXという言葉が生まれた背景を思い出してみると、デジタル企業による侵略を防ぐために自らがデジタル企業となるという事が目的なので、名刺管理をデジタルで行ったところで、デジタル企業の侵略は止められない。
改めてDXを目的として、自らがデジタル企業となり、デジタル産業に打ち勝てるようになるべしと、ここで終わることなく本質的なゴールにたどり着くためのアクションを行う必要があると認識する必要がある。
DXとデータ利活用の関係性
DX実現の手段としてデータ利活用は必須となる。
関係性は目的と手段の関係性で、DXが目的で手段がデータ利活用である。
データ利活用はあくまでも一手段なので、DXを行うためにはその他の手段も必要である。
データ利活用を行わなければ、DXの実現は不可能なので関係性は必要条件となる。
なぜDXにはデータ利活用が必要なのかを知るためには、デジタル企業はデータ利活用によってどのようなことを行っているか、メルカリが「mercari AI Web」というサイトを作っているので事例を見てみるとよいだろう。
メルカリはリサイクルショップという既存企業にとってのデジタルディスラプターとなるデジタル企業と言える。
例えば、リサイクルショップでは店員さんがお客様と1対1で応対して必要な商品をお勧めするが、メルカリはスマホを通してみている数百万人のお客様に対してデータを活用して見せたAIが商品をお勧めしている。
人のほうがピンポイントに商品をお勧めできるかもしれないが、1対1の関係性のリサイクルショップと、店に出向かなくてもいつでも商品を購入することのできるメルカリでは、メルカリの利用を行う人が増えるのも当然だろう。
このようにデジタル企業はデータを使ってDXを行っている。
データ利活用とは
DXを成し遂げるために必要な手段がデータ利活用であると書いたが、データ利活用とは一般的に「意思決定」「マーケティング利用」「プロダクト利用」の事を指すことが多い。
ただし、DXレポートなどDXの文脈ではデジタイゼーションによってデジタル化されたデータを使ってプロセス改善をおこなうこともデータ利活用の範囲としていることもある。
意思決定
世間的に一番データ利活用だと思われている領域である。
データサイエンティスト、データアナリストなどがデータ分析を行って事業に貢献するためにデータ利用するパターンと、プロダクトマネージャー、セールスなどがKPIを達成するためにデータ利用するパターンがある。
事業の調査
KPIダッシュボードの作成
ファネル分析
施策の効果見積もり、効果測定
マーケティング利用
データ活用によりエディア媒体によるマスマーケティングから、One to Oneのマーケティングが可能になってきた。
この分野は従来からデータ活用されているが、手動によるフィルタによるセグメンテーションから、機械学習のよってセグメンテーションされることが増えてきた。
ABテスト
メールマーケティングのためのセグメンテーション
広告のセグメンテーション
プロダクト利用
DXを成し遂げるための活用方法の本命ともいえるデータ利活用領域である。
利用者からは一見よくわからないが、検索、youtube、メルカリ、Amazonなど分野のトップは必ずプロダクトにデータ利活用によって生み出された結果を組み込んでおり、ユーザーを話さないような仕組みを作っている。
不正検知
レコメンド
ダイナミックプライシング
業務のデジタル化による改善
一般的にはデータ利活用?と思われる領域だが、DXレポート的にはここも含んでいると思われる。
アナログ媒体をデジタル化(デジタイゼーション)することでデータとなり活用することで業務プロセスが改善できるためデータ利活用ともいえる。
RPA
CRM
ローコードノーコード
データ利活用の目指す姿
データ利活用の中でも主に「意思決定」「マーケティング利用」「プロダクト利用」を行う時にはまずはデータを一元的に管理して活用できる状態にする必要がある。
この領域がデータマネージャー、データエンジニアと呼ばれる人が専門領域としている範囲で、データマネージャーはデータ利活用するためにはデータをどのように関すればよいのかを検討し、データエンジニアは実装する。
データマネージャーとデータエンジニアはわかれている事のほうが少なく、データエンジニアがデータマネジメントを意識して実装することが多い。
データ利活用の目指す姿に到達するための必要なアクション
データ利活用上記のような目指す姿に到達するためには、DMBOKにアクションが書かれているので、詳しく知りたい人は過去の要約記事を参照してください。
上記DMBOKの解説記事をまとめたkindle本です。
おわりに
自分の知識をまとめるためと今後誰かがデータマネジメントをやってみたいと思った時のきっかけとなるためにnoteを書くことにしました。
モチベーションのために役にたったという人はぜひ、フォロー&スキをお願いします。
ツイッターでもデータマネジメントに係る情報をつぶやいてますので、よろしくお願いします。
データマネジメントを学ぶ人が抑えておきたい本
今すぐわかるデータマネジメントの進め方
著者のDMBOKを用いてCDO室を立ち上げデータマネジメントを推進した経験を基にデータマネジメントの進め方をまとめたkindle本を執筆しました。
DXを成功に導くデータマネジメント
DXを成し遂げるために必要なデータをどうマネジメントしていけばよいかが書かれている。
データ環境より、セキュリティの観点であったり、プライバシーの観点であったりといった非技術者向けの内容が多く書かれている。
データマネージメントに興味を持った人はまずは読んでみるとデータマネジメントでなすべき概要が理解できる。
実践的データ基盤への処方箋
データ利活用を行うために必要なデータ基盤の考え方と、利活用するためにはデータをどのようにマネジメントしていけば良いかを具体的な例を用いて説明されている。
技術が中心になるので現在データ技術に係る人がデータマネージメントに興味を持った時には、まず手に取ることをおすすめする。
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個人情報保護法を順守するための基本的な考え方が実務ベースで書かれている。2022年4月に施工される改正個人情報保護法で新たに追加される概念も同様に記載されている。
政府の出しているガイドラインよりも俯瞰的に読めるためデータプライバシーにかかわる人、データを使ったビジネスを推進する人は読んでおくとスムーズに業務が進められる。
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読めば読むほど味が出てくるので、データマネジメントを進めようとしている人は各家庭に1冊は是非買っておきたい。
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著者もDMBOKを読むためには非常にボリュームが多く読み解くには苦労するので、かみ砕いた解説書をまとめたと書いてある通り、DMBOKを独自解釈してわかりやすく書かれている。
DMBOKを技術者目線で読み解いた内容になっているので、実践的データ基盤への処方箋と同様データ技術に係る人におすすめする。
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