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FACTFULNESS【書評】: なぜこの本は「欠かせない1冊」なのか?

こんにちは。THE GUILDの渡邉です。

今回、共訳者の上杉周作さんからFACTFULNESSをご献本頂きましたので、書評を書いていきたいと思います。

*ちなみに書籍の販売は1/11ですが、KINDLE版はすでに先行販売中です。これは日経BP社初の取り組みだそうです。

これはどんな本?

著者のハンス・ロスリングさんはスウェーデン出身の医師・公衆衛生学者。
さらにWHOやユニセフで保健アドバイザーを務めたり、1993年にはスウェーデンにて国境なき医師団を共同設立したりと、アカデミックと現場の両方の経験を持つ人です。

TEDでのプレゼンテーションも説明が明快かつ面白いので、日本語字幕もあるので興味をもった人は是非みてみてください。

そうした豊富な経験から書かれたFACTFULNESSは、ビジネス界ではビルゲイツ、政治界からはオバマ元大統領といった名だたる有名人に絶賛されています。

名作中の名作。世界を正しく見るために欠かせない一冊だ
―ビル・ゲイツ
思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進める。そんな希望を抱かせてくれる本
―バラク・オバマ元アメリカ大統領

特にビル・ゲイツは、2018年にアメリカの大学を卒業した学生のうち、希望者全員にこの本をプレゼントしたほどこの本を激推ししております。

さて、では内容はどうでしょうか。

FACTFULNESSは、「大半の人の事実認識は歪んでいるので、世界を正しくみる必要がある」ということを一貫としてテーマとしています。

本書では、人間は本能的に10個の間違った思い込みをする結果、世界を歪んでみてしまうと言っています。

1.分断本能 「世界は分断されている」ex.先進国 vs 途上国       
2.ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」ex.犯罪は増えている
3.直線本能 「XXXはひたすら増え続ける」 ex.人口は増え続ける
4.恐怖本能 「それほど危険でないことを、恐ろしいと考えしまう」
5.過大視本能 「目の前の数字が重要だと考えてしまう」 
6.パターン化本能 「ひとつの例が全てに当てはまる」
7.宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」
8.単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」
9.犯人捜し本能 「誰かを攻めれば物事は解決する」
10.焦り本能 「いますぐ手をうたないと大変なことになる」

あなたはこの中で「これは・・・」と思い当たることはありますか?おそらく、何か1つは思いあたる節があるのではないでしょうか。

では、本題。

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なぜこの本は「欠かせない1冊」なのか?

ビルゲイツはなぜこの本を「欠かせない1冊」としておしているのか。

僕なりにこの本を読んで思ったことは、

・正しい事実認識をもつことは、課題解決の第一歩だから
・誤った事実認識は、気づかぬうちに人を傷つけしまうから

です。1つずつみていきましょう。

正しい事実認識は、課題解決の第一歩だから

異なる言語を話す人同士の対話が成立しないように、異なる事実の認識を持つ人の間でも効果的なコミュニケーションは成立しません。

むしろ、

・同じ言葉を使ってるのにどうしてわかりあえないんだ
・言葉は同じなんだから、言い続ければいずれわかりあえるのでは

というフラストレーションや期待がある分、言語が同じでも正しい事実認識の共有がない対話は、より始末が悪そうです。

効果的な対話が成立しないということは、課題解決に向かって進むことができないことを意味します。

その例として、本書の「過大視本能」の章で、実際の医療現場での友人と著者との壮絶なやりとりの話があります。

スウェーデン人である筆者と友人は、当時最貧国の1つであるモザンビークで医師として働いていました。

2人の目的は医療で人の命を救うことで同じでしたが、現実に対する認識は大きく異なっていました。

著者は患者以外の命を救うことも医者の役目と考える一方、友人は目の前の患者の命を救うために最善を尽くすことが医者の役目と考えていました。

そのため、2人の議論は平行線を保ち、ついには交わることはありませんでした。著者は「目の前にある命と同じくらい、見えない命は重い」と考える一方、友人は著者に、「お前は血も涙もないやつだ」と言い放ちました。

結果として、課題に対するアプローチも全く異なっています。

結論として著者の仮説は正しく、著者自身が診療できたのは亡くなった子供のうちの1%に過ぎず、より多くの命を救うためには著者のアプローチを採択する必要がありました。

このエピソードの興味深い点は、2人ともスウェーデン人の医師で、話す言語も文化的背景、知識レベルもほぼ同じであるにも関わらず、共通の正しい事実認識がないために最後まで分かり合えなかったところです。

もし2人が正しい事実認識を共有していたならば、協力してより多くの子供を救えた可能性もあります。

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医療現場に限らず、こうした場面は日常でもよくあります。

身近なところでいうと、友人関係やSNS上での意見の対立、夫婦喧嘩や仕事上の軋轢...etc

例えをあげたら枚挙に暇がありませんが、こうした多くの摩擦や対立は、持っている知識や話す言語の違いによるものではなく、共通の正しい事実認識がないことが原因の場合が多いです。

著者が行なった調査によると、多くの情報に触れているより「賢い」はずの人間の方が、無知なチンパンジーよりも世界への認識が歪んでいるそうです。

本書では世界の基本的な事実にまつわる12個のクイズを紹介していますが、大半の人は正解率が3分の1以下で、ランダムに答えるチンパンジーよりも正解率が低いそうです。

もしあなたが正しい事実認識を持っているとしても、相手が世界を歪んでみている可能性が高い。もちろん、逆も然りです。

そしてそれは、よりよい課題解決への道を妨げてしまうのです。

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誤った事実認識は、気づかぬうちに人を傷つけてしまう

自分が間違った事実認識で恥をかくだけならいいのですが、時にそれは自分や他人を傷つけたり、最悪の場合は死に至らしめる可能性だってあります。しかも知らず知らずのうちに。

本書の中で、ひとつの例が全てに当てはまると考えてしまう「パターン化本能」という章がありますが、その中で実際に筆者自身がしてしまった重大な失敗の紹介があります。簡単にまとめると、

戦場から担架で運ばれてくる兵士が、あおむけよりうつぶせの方が生存確率が高いという「パターン」を知っていた著者は、それを赤ちゃんにも適用していた。
しかし、実際それは赤ちゃんには当てはまらず、あお向けにする方が妥当であったのに、10年以上もの間赤ちゃんをうつ伏せにする対応をし続けていた。
もしかしたらそのせいで命を失ってしまった赤ちゃんがいるかもしれない。


というお話。
もちろん著者は、良かれと思ってその行為をし続けていました。

この種の善意による間違ったパターンの押し付けは、多くの事柄に当てはまるのではないでしょうか。悪気がない分、逆にタチが悪いかもしれません。

例えば医療(◯◯◯でガンが治りました)やビジネス(成功した人は◯◯◯をやっている!)など、この類の話が多い気がします。

人はパターン化を好むので、毎日ある種の「パターン」が生み出され、私たちは正解かどうかもわからずに無意識に触れ、疑うことなくそれを使用します。

もちろん、パターン化は適切な分類であれば情報伝達の上で非常に便利な手段ではありますが、多くの間違ったパターンがあることを知っておく必要があります。

なぜなら、あなたが良かれと思って押しつけている「事実」は、もしかしたら多くの人を知らず知らずのうちに傷つけているかもしれない。

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最後に

★間違えた人を叩いても、世界はよくならない

本書にある10の思い込みを知ることはとてもパワフルですが、個人的に訳者あとがきにある上杉さんの言葉が心に残っています。

それは、「間違いを認めて許せる空気」というものです。

特に最近はインターネットやSNSの普及とともに、間違いが晒され、炎上するケースを多々みます。間違いを見つけると寄ってたかってそれを叩く風潮があります。

それよりもその過ちを許し、みんながよりよいファクトを共有できる雰囲気作りが大切ではないか?という投げかけでした。

ハンス自身も本書の中でたくさんの失敗エピソードも紹介してくれています。中には人の命に直結するような悲惨なものもあります。

それを公開しないという方法もとれたかもしれませんが、自らの過ちを許し、それをあえて公開することで、同じ間違いを繰り返す人を抑止したのではないでしょうか。

僕もこの考え方には大賛成で、もしそういう人に出会ったら丁寧に正しい事実を共有したいし、自分が間違ってしまったことは謙虚に受け止め、次に生かそうと思いました。

★国際問題は対岸の火事ではない

本書で取り扱っている内容の多くは、世界の貧困や教育についての事柄が多く、もしかしたら自分には関係ないと思う人もいるかも知れません。

「世界を正しくみる」というタイトルもスケールが大きく少し身構えますが、

僕は本書はむしろ「自分や身近な人の生活をよりよくするために、どう考え、どう行動すべきなのか?」に対して非常に示唆に富んだ本であると思いました。

なぜなら、本書で取り扱われる事例の多くは、日常で起きていることの縮図であることが多いからです。

中にでてくるエピソードを読む事で、自分の身近な出来事や失敗に紐づけ、振り返ることができるはずです。

まとめ

・正しい事実認識を共有することは、課題解決の第一歩である
・誤った事実認識をもつと、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまう
・みんなが繫れる時代になった今こそ、間違いを認め、許せる空気が大事
・世界で起きてることは、日本の縮図。自分の行動に結びつけてみよう

正月休みにじっくり読むべき一冊として、是非FACTFULNESSをおすすめします。もし読んだ人がいれば、コメント欄に感想などいただけると嬉しいです。

追記:
訳者である上杉さんが翻訳のプロセスを全公開してくださっています。翻訳のプロセスって中々見れないと思うので、大変面白いです。

"翻訳で大事なのは、気合いと根性!!!"



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渡邉 真洋 / Streets / THE GUILD
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