自治体別平均年収上位の小さな町
はじめに
毎年ネット記事などで話題に上がる、自治体別の年収ランキングですが、上位の顔ぶれとして、港区や千代田区、芦屋市などいかにもお金持ちが住んでいそうな街や、大企業の本社などが置かれていそうな都市部が並ぶのはなんとなく想像できるかと思います。しかし、よく見てみると上位に村や町、地方の小さな市などがたまに現れるのがわかるかと思います。これはいったいなぜなのでしょうか。
本日は地域別の自治体の年収を見て、上位に来ている違和感のある自治体を見ていきましょう。(今回は2021年3月の結果を用いてみていきます)
なお、今回の年収の出典は下記サイトになります。
全国上位ランキング
まずは全国を見てみましょう。
地図でみるとこちら
赤いほど年収の高い自治体になりますが、200万円~500万円で色が付けられるようになっており、500万円を超える自治体はすべて同じ色になっています。
やはり、都市部の値が強いですが、一部明らかに商工業地帯ではないような部分にも真っ赤になっているエリアがあるのが伺えます。
具体名で見てみると上位は以下のようになります。(政令指定都市にNullが入ってしまってるのはご愛敬)
東京近郊や西日本最強の高級住宅エリアを有する芦屋市などはわかりますが、よく見るとあまり大きな産業がなさそうなエリアの地名もちらほらあります。これはどのような要因になっているのでしょうか。
福島県川内村
福島県の人口2,000人の小さな村ですが、平均年収が553万円にもなっています。これは、2020年度の結果のみでみると高いのですが、2019年以前の結果を見ると300万円を切るような結果となっています。人口の小さな自治体ですので、一時的な株の売却益などで一部の人が莫大な利益を上げた結果、この年だけ平均が大幅に引き上げられたものと思われます。ちなみにもし仮に1名の上げた利益でこの変化が起きなとした場合はその人の2020年度の年収は50億円を超える計算になります。
北海道猿払村
北海道の北端に位置するこの村では、ホタテ漁が盛んで、漁師たちや水産業者が非常に高い収入を得ている為、年収が都心部並みになっています。ホタテ御殿と呼ばれる高級住宅が待ちに広がっているようです。詳細に関しては下記記事が面白いのでお勧めです。
山梨県忍野村
山梨の山奥にあるこの村、平均年収高いよくわからない自治体界ではトップの知名度を誇るので、ご存じの方も多いかもしれませんが、世界最大の産業用ロボット・工作機械メーカーであるファナックの本社および工場が所在している自治体になります。ファナックは業界内でも屈指の高利益率を誇る優良企業であり、社員の給料もメーカーとしては高いことで有名です。彼らが村の人口の一定割合を占めるため、自治体別に見た際に平均年収が上がる結果になっています。
神奈川県葉山町
逗子や鎌倉に隣接する、湘南と呼ばれるエリアの一角を占め、別荘地やマリーナの多い景勝地となります。都心に運転手付きで通うような層も多く住んでおり、このような人々が平均年収を上げていると考えられます。
地方別ランキング:北海道
北海道の自治体別の平均年収を見てみると上記のような状況となります。意外と同庁のある札幌市が低く、ランキングには登場していません。上位の猿払村は全国のところでも取り上げたホタテ産業で儲かっている街になります。ほかの自治体を見ても市ではなく、町村が上位を占める結果となっており、これらは基本的にいずれも農林水産業が盛んな地域となっております。
地方別ランキング:東北地方
東北地方を見てみると上記のようになっており、全国でも出てきた川内村が1位となっており、中心と市である宮城が5位となっております。宮城と川内村にある地域を見ると、大熊町・富岡町に関しては東日本大震災の津波で発生した原発事故の関係で、最近まで避難区域に指定されていたため、人が住んでないエリアのため、ここに記載の値は何かの異常値である可能性があります。それ以外の大潟村についてはどうか、みていきます。
秋田県大潟村
大潟村は秋田県に1964年まで存在した、日本で2番目に大きかった八郎潟という湖を干拓して生まれた村になります。コメを生産するために干拓され、入植されたこの村では田畑が今でも広がっています。
近代に入り開墾された土地であるため、国内の他の農家よりも1農家当たりの農地が広く、大型の機械を使った農作業が行われており、農家の年収が非常に高いエリアとなっています(村内にある500戸の農家のすべてが専業農家という珍しいエリアです)。その結果として、平均年収が大きく引き上げられていることが伺えます。元々は稲作中心でしたが、近年はコメの需要の低下などの危機感からメロンやニンニクなど単価の高い商品作物に力を入れており、それがさらに年収を引き上げる要因となっているようです。
なお、上記話については下記記事が詳しいので興味ある方はご覧ください。
地方別ランキング:関東地方(東京を除く)
関東地方を見てみると上記のようなランキングとなり、1位の忍野村に関しては全国の方で述べた通り、ファナックの本拠地てあることが原因となっております。ほかの地域は日本の主要な商工業エリア・別荘等の景勝地となっており、あまりサプライズはない印象です。
地方別ランキング:北陸地方
北陸地方を見てみると上記のようになります。1位の金沢は北陸の文化の中心地であり、2位の鯖江市も眼鏡産業が有名でその観点で納得かと思われますが、北陸最大の街である新潟との間に、いくつか町村があり、これらは何が原因で年収が他の市よりも高くなっているのでしょうか。
富山県舟橋村
この村には大きな産業はありませんが、近年ベッドタウンとして急速発展しており、人口増加率が日本でも最も高く、子供の割合も人口の20%を占め、さらに平均年齢が40歳と働き盛りの人口も多く存在している自治体になります。生産年齢ど真ん中人口の多いことがほかの自治体よりも年収が高くなっている要因であると考えられます。
福井県高浜町
舞鶴に隣接する、福井の北端の高浜町は厚賀と並ぶ北陸における原発の街になっており、関西電力や国からの補助が非常に手厚い自治体になっており、その関係で潤っていることが考えられます。
地方別ランキング:中部・東海地方
中部・東海では名古屋市よりも上位に4つ小規模な市区町村が入っています。
愛知県長久手市
こちらは名古屋の北東に隣接する自治体であり、愛知万博の会場にもなっている自治体です。名古屋のベットタウンとして発展し、国内では最も人口増加率の大きい市の1つとなっています。平均年齢も若く、働き盛りのファミリー世帯が多いため、平均年収が高くなっていると考えられます。また、トヨタの中央研究所もここに置かれています。
愛知県みよし市
こちらも名古屋にほど近い自治体で、トヨタを代表とする日本の大企業の工場が多く立地しています。そこで働く社員たちが多く居住している為平均年収が押し上げられていると考えられます。
愛知県日進市
こちらも長久手市と同じく名古屋市に隣接する自治体であり、ベッドタウンとして成長している自治体です。長久手市に次ぎ、人口増加率の高い市となっており、働き盛りのファミリー世帯が平均年収を引き上げていると考えられます。
長野県軽井沢町
いわずと知れた日本最大の避暑地である軽井沢のある町になります。江戸時代は宿場町として栄えたが、明治に入り、宣教師が軽井沢を目につけ、避暑地として開発してから人気を博し、現在まで至っています。軽井沢に別荘を持つお金持ちを相手にした商売や、地主などが潤っており、平均年収が周辺に比べ著しく高くなっています。
地方別ランキング:関西地方
関西地方は上記のようになっており、芦屋の高さが目立ちます。芦屋は国内でも有数の富裕層の邸宅が密集しており、彼らが平均を大幅に引き上げています。ほかの自治体を見てみると神戸市と芦屋市の間に2つ町がランクインしています。
京都府精華町
ここは学研都市として開発されており、京都府立大学のキャンパスや大企業の研究所が集積しており、そこで働く職員たちが平均年収を引き上げていると考えられます。
奈良県広陵町
ここは大阪への通勤を意識した宅地が複数造成されており、そこに住むファミリー世帯が平均年収を引き上げている可能性があります。また、畿央大学のキャンパスも置かれており、そこで働く職員も多く、年収を引き上げていると考えられます。
地方別ランキング:中国・四国地方
中国・四国地方はやはり産業の中心である広島・岡山が上位に来ていますが、岡山市より高いランクに2つの町村が存在しています。
広島県府中町
府中というと東京の府中市の方がメジャーだと思いますが、私のような中国地方出身者からすると広島の府中が先に来ます。小学生の時に読んだこち亀の漫画で、中川がフェラーリに乗って、この車なら府中まで30分ですよ見たいな発言があった記憶があるのですが、その見た時広島と東京そんな時間でいけるのかと幼心に思った記憶があります。
話は脱線しましたが、府中町は実は町村の中では最大の人口を誇り、小さな市よりは大きな人口を抱えます。また、マツダの本社があり、マツダ関連の施設が集積している為、そこの社員が平均年収を大きく引き上げていると考えられます。
高知県北川村
高知の山奥にある小さな村ですが、風光明媚な場所で観光客も訪れます。ゆずが有名で、ゆず農家が平均年収を引き上げている可能性が考えられます。
地方別ランキング:九州地方
九州を見てみるとやはり福岡市が上位に来ていますが、福岡市よりも上に1つ町があります。
福岡県新宮町
ここは福岡市に隣接する自治体で、Wikipedia出典ですが、町内の40%以上の人口が福岡市に通勤をしており、町内で働く人よりも多く福岡市に出かけている状況となっています。つまり、ほぼ福岡市といっていい状況であり、事実福岡市との合併の話はたびたび出ているようです。ですので、福岡市とほぼ同じような年収構成になるのでしょうか。さらにベットタウンとして発展しており、人口の増加率も全国トップクラスです。ベッドタウンとしての性質として、40代前後の労働者人口が多くなるため、若年層を多く抱える福岡市よりも平均年収が僅かですが上回る結果になっている可能性があります。
地方別ランキング:沖縄
沖縄の自治体別の状況を見てみると那覇市よりも上位に2つの町村があります。
嘉手納町
嘉手納町は米軍の基地があることで有名ですが、ここはなんと町の面積の82%が米軍基地となっています。そのため米軍の軍人さんや基地に向けた商売で潤っており、那覇よりも高い平均年収になっていると考えられます。
北谷町
読み方は「ちゃたん」。ここも米軍基地があり、町の面積の半分以上を米軍施設が占めています。また、アメリカンビレッジというショッピングモールとエンタメ施設が融合した巨大な施設があり、そちらも賑わっています。米軍やアメリカンビレッジなどで落ちるお金で潤っている町であると考えられます。
まとめ(小さな町の強さ)
さて、日本全国の小さな街で年収が高い自治体を見てみましたが、全自治体を人口と平均年収でプロットすると下記のようになります。
こちらのプロットは色が濃いところほど多く点が集まっていることを表しています。
見てみると人口が少なさが一定(1,000人くらい)を下回ると平均年収が上がっていく傾向が見て取れます。これは人口が少なくても街を維持できる財源があり、周辺の市区町村との合併が必要ないということの証左でもあるため、実が現代においても市制に移行せず、町村を維持している自治体は、イメージと異なり財源であり、収入の良い仕事も豊富なところも多いのです。
最後に
私の働くデータインサイトでは、"地図×データで新しい未来をつくる" ことを目指して、様々なデータとテクノロジーを活かした取り組みを進めています。
現在、コア技術である地図AIエンジンを活用したモバイルアプリを開発・運営しており、事業拡大のためにデータサイエンティスト、アプリエンジニア、フロントエンジニア、デザイナーの仲間を募集しております。
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