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AIが切り拓いたワクチン製造の可能性

新型コロナウイルスのパンデミックは、ワクチン開発の世界に劇的な変化をもたらしました。
開発から認可が下りるまで10~15年程度かかると言われているワクチン開発が、わずか1年足らずで完了した背景には、AIの力がありました。
AIは設計、製造、試験の各プロセスで重要な役割を果たし、迅速なワクチン供給を可能にしました。


1.ワクチン設計を加速させたAI

AIはウイルスの構造解析や抗原の特定において重要な役割を担いました。
ウイルスのスパイクタンパク質の解析では、AIが膨大なデータを迅速に処理し、重要な構造情報を特定しました。
さらに、AIは抗原として適切なターゲット部分を予測し、効果的なワクチン候補を選定する能力を発揮しました。
通常数年程度かかるワクチン設計が、モデルナ社の新型コロナワクチン製造の場合、3日間でmRNAの設計を完了しています(※)。
※具体的な期間などは『fourth annual science day 2021』から引用

2.開発期間の短縮を可能にしたAI

AIはワクチン開発の効率化にも貢献しました。
AIを利用した分子モデリング(※)を使い候補物質の効果をシミュレーションすることで、実験前に候補物質の効果を予測することができ、有望でない物質を早期に除外することができました。
また、従来は目視で行っていた品質検査にAIの画像認識技術を使用し、自動化したことで臨床試験前工程を42日間で行ったとモデルナ社は発表しています。
同じプロセスで開発したSARSワクチンでは20カ月ということなので、約93パーセント削減されたことになります。
※分子モデリング:コンピュータを使用して分子の3D構造を作成し、その構造に基づいてターゲット物質の分子とどのように相互作用するか予測します。

3.臨床試験の効率化にも寄与したAI

臨床試験の段階では、AIが臨床データの分析や試験計画の最適化に大きな役割を果たしました。
AIは試験に適した被験者を迅速に特定し、リスク要因や有効性を予測することで、臨床試験期間の短縮に貢献しました。
さらに、リアルタイム解析を可能にするAIは、即時フィードバックを提供することで意思決定を迅速化しました。
また、副作用の予測や早期検出を通じて安全性の確保にも貢献し、ワクチンの承認プロセスを効率化しました。
これにより、従来は十数年かかると言われている臨床試験を9ヶ月間で完了しています。

4.まとめ

設計、製造、試験の各段階でAIが効率化を実現し、新型コロナワクチンの開発期間を劇的に短縮することができました。
AI技術は医療分野での可能性を広げ、人々の健康を支える技術として大きな期待が寄せられている一方、データ収集・活用基盤の整備やプライバシー保護といった観点からの議論も必要になるでしょう。

昨年、モデルナ社とOpenAI社がmRNA医薬の進展を目指して協力するとの発表があり、創薬分野における生成AIの利用がさらに加速していくことが期待されます。

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#新型コロナ #ワクチン製造 #パンデミック #DNA解析


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