ゴルフ場は泥棒だらけ? その2
横領の手口は隠し口座でした。
岩手のゴルフ場での話です。
ゴルフ場経営は門外漢であったため、とにかく現場に顔をだし、実際の業務の把握に努めていました。
ある日のマスター室での出来事です。
乗用カート、キャディのシフト管理の確認をしようと資料を探していたところ、デスクの引き出しから見慣れない銀行通帳を発見。
見れば口座名にはゴルフ場名が入っていますが、前の支配人名も記載された個人口座。しかも、残高が約80万円‥もありました。
なんだぁこれは〜っ?
と、開場時から在籍している経理担当者に問い正したところ、ヤマト運輸の取扱手数料の入金分だと説明をしてきました。
ゴルフ場ではゴルフ宅急便を取り扱っているところが大半だと思いますが、ゴルフ場からクラブ(キャディバッグ)を発送する場合は、ゴルフ場がヤマト運輸の業務を代行する代理店契約をしています。その代行業務に対して手数料が支払われる仕組みなわけです。
つまり、この手数料は「売り上げ」になるのですが、なぜか通常の経理処理はされずに個人口座に入金されていました。
マスター室のデスクの引き出しにあったこと自体、疑いようがなくクロなのですが、なぜ隠していたのか、どういう目的で別口座を作っていたのか、改めて尋ねました。
すると、意外な答えが‥
(前の)支配人から、従業員の冠婚葬祭や飲み会などで使っていいと言われていたので、現金で受け取る手数料をこの口座に入金していました。
マスター室で「保管」していたのは、宅急便業務をマスター室前でやっていたので通帳もマスター室にあった方が‥、という理由です。
実際、口座からの引き出し履歴は、数えるほどしかありませんでしたが、手数料は現金売上です。入金せずにそのまま使ってしまったことも疑われます。
それよりも、売り上げとして計上しないこと自体、そもそも不正行為であり本来は重加算税の対象となります。
しかし、話を聞く限り、本業でない臨時収入なので、お小遣程度にしか思っていなかったようでした。つまり、故意に隠したわけでないと‥。
この行為を当然見過ごすわけにはいかず、約20年勤務のベテラン経理担当者に、なぜか経理の指導をしました。
しかし問題はこの不正行為そのものよりも、既得権益であるお小遣いをなくされたことに対する不満を、その担当者が持ったことです。
担当者一人が自由に使っていたわけではなく、全員が自由に使えるお小遣いをなくされたことに対して、社内でどうやって説明すればよいのかと噛みついてきました。もちろん、指導では、福利厚生の目的で、飲み会費用や冠婚葬祭以外でも地元(田舎)特有の付き合い費用があるのであれば、申請してくれればいいと説明したのですが、納得できない様子でした。
教訓
簿記検定の所持者、経理経験の年数が長くても、無条件に信用はできない。
法令遵守の意味がわかっていない素人責任者がいる会社は怖い。