DifyとMakeによる生成AIシステムインテグレーション開発入門:概念とユースケース
1. はじめに
生成AI技術の急速な進歩により、ビジネスプロセスの自動化や効率化が進んでいます。しかし、生成AIシステムを既存のワークフローに統合することは、多くの企業にとって依然として課題となっています。この記事では、DifyとMake (旧Integromat)という二つの強力なツールを使用して、生成AIシステムを効果的に統合する方法を探ります。基本的な概念から実際のユースケースまで、段階的に解説していきます。
2. DifyとMakeの基本概念
Difyとは
Difyは、生成AI開発を省力化できるオープンソースツールです。以下のような特徴があります。
LLM(大規模言語モデル)を活用したアプリケーション開発のサポート
ビジュアルインターフェースによる直感的な操作
プロンプトエンジニアリングの効率化
APIを通じた他システムとの連携
Makeとは
Make(旧Integromat)は、アプリケーション間のデータ自動化とワークフロー構築を可能にするプラットフォームです。以下のような特徴があります。
ノーコードでの複雑な自動化シナリオの構築
300以上のアプリケーションとの連携
スケジュール実行や条件分岐などの高度な機能
カスタムWebhookやHTTPリクエストによる柔軟な拡張性
DifyとMakeの組み合わせのメリット
DifyとMakeの組み合わせることで、以下のようなメリットが得られます。
生成AIの力をビジネスプロセスに簡単に統合
複雑なワークフローの自動化が可能
プログラミングスキルがなくても高度なシステム統合が実現
迅速なプロトタイピングと実装
3. DifyとMakeの基本的な使用方法
Difyの基本的な使用ステップ
プロジェクトの作成:新しい生成AIアプリケーションのプロジェクトを開始
ワークフローならびにプロンプトの作成:目的に応じたワークフローならびに生成AI応答を設計構築
API準備:作成した生成AIアプリケーションのAPIを生成(Difyであればここは自動生成される)
テストと調整:生成されたAPIをテストし、必要に応じて調整
# Dify APIの基本的な使用例(MakeではこのようなAPIをNocodeで呼び出せます)
import requests
url = "https://api.dify.ai/v1/chat-messages"
headers = {
"Authorization": "Bearer YOUR_API_KEY",
"Content-Type": "application/json"
}
data = {
"inputs": {},
"query": "こんにちは、生成AIアシスタント",
"response_mode": "streaming",
"conversation_id": ""
}
response = requests.post(url, headers=headers, json=data)
print(response.json())
Makeの基本的な使用ステップ
シナリオの作成:新しい自動化シナリオを開始
モジュールの追加:必要なアプリケーションやアクションを追加(DifyをHHPモジュールとして設定)
フロー設計:モジュール間の接続とデータフローを設定
テストと実行:シナリオをテストし、問題なければ実行
// Makeのシナリオ設定例(Makeではblueprintと呼ばれるJSONファイルのエクスポート/インポートが可能です)
{
"name": "DifyとSlackの連携",
"modules": [
{
"name": "Slack - 新しいメッセージを監視",
"type": "trigger"
},
{
"name": "HTTP - Dify APIにリクエスト",
"type": "action",
"url": "https://api.dify.ai/v1/chat-messages",
"method": "POST",
"headers": {
"Authorization": "Bearer YOUR_API_KEY",
"Content-Type": "application/json"
},
"body": {
"query": "{{1.message}}"
}
},
{
"name": "Slack - メッセージを送信",
"type": "action",
"message": "生成AIの回答: {{2.response}}"
}
]
}
4. DifyとMakeを使用した生成AIシステム統合のユースケース
以下ではDifyとMakeを利用した、3種類のユースケースを考えました。
ユースケース1: カスタマーサポートの自動化
シナリオ: 顧客からのメール問い合わせに対して、生成AIが自動で回答案を生成し、人間のオペレーターが確認後に送信する。
実装ステップ:
Difyで顧客サポート用の生成AIモデルを作成し、APIを生成
Makeで以下のシナリオを構築:
トリガー: 新規メール受信
アクション1: メール内容をDify APIに送信
アクション2: Difyで生成された回答案をSlackに通知
アクション3: オペレーターの承認後、Makeで顧客にメール送信
利点:
回答時間の大幅短縮
一貫性のある回答の提供
オペレーターの作業負荷軽減
ユースケース2: ソーシャルメディア投稿の自動生成
シナリオ: ブログ記事から自動的にソーシャルメディア用の投稿文を生成し、スケジュールに従って投稿する。
実装ステップ:
Difyでソーシャルメディア投稿生成用の生成AIモデルを作成
Makeで以下のシナリオを構築:
トリガー: 新規ブログ記事のRSSフィード更新
アクション1: Difyに更新データを送信し、ブログ記事の要約をDify APIから受信
アクション2: Makeで、生成された投稿文を各ソーシャルメディアプラットフォームに投稿
利点:
コンテンツマーケティングの効率化
一貫性のあるブランドメッセージの維持
マーケティングチームの時間節約
ユースケース3: 営業リードの自動スコアリングと対応
シナリオ: CRMに入力された新規リードの情報を生成AIが分析し、優先度を判断して適切な営業担当者にアサインする。
実装ステップ:
Difyでリードスコアリング用の生成AIモデルを作成
Makeで以下のシナリオを構築:
トリガー: CRMの新規リード登録
アクション1: リード情報をDify APIに送信
アクション2: スコアリング結果をDifyから受信、その値に基づいて、Makeから営業担当者にSlack通知
アクション3: 高スコアのリードには自動的にフォローアップメールを送信
利点:
営業活動の効率化
リードの優先順位付けの精度向上
迅速な顧客対応による成約率の向上
5. 導入時の注意点と今後の展望
導入時の注意点と今後の展望では、以下の点が考えられます。
導入時の注意点
データセキュリティとプライバシーの確保
生成AIモデルの定期的な評価と更新
ユーザーへの適切な説明と同意の取得
システム障害時のバックアッププランの準備
今後の展望
より高度な自然言語処理タスクへの対応
リアルタイムデータ分析との統合
音声認識や画像認識などのマルチモーダル生成AIとの連携
エッジコンピューティングを活用した生成AI処理の分散化
6. まとめ
DifyとMakeを組み合わせることで、生成AIシステムのシステム間のデータ統合が格段に容易になります。これらのツールを活用し、ビジネスプロセスを改善する第一歩を踏み出しましょう。
Difyはまだまだ発展中のOSSです。それを上手く利用することで、生成AIの力を最大限に引き出し、企業の競争力に変えていくことが可能です。
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