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【専業トレーダーから友人へ贈る】株式投資の正しい始め方

■ 友人が株式投資を勉強してみたいらしい

・友人:30~40代エンジニア
・自分:専業トレーダー10年以上、株式の運用のみで生活している
・スキルは必要なし、すべての日本国民へ

こんにちは。
ゴリゴリの株トレーダーをしています「でーたかじり虫」と申します。
先日、エンジニアをしている友人(プログラミングの勉強会仲間)から「投資の勉強をしてみたいぜ」という相談があり、酔っぱらった勢いで投資勉強会を請け負った次第であります。

投資勉強会は、今週末。
友人は非常に優秀なエンジニアである一方、株式投資に関しては全くの初心者ですので、彼らに「易しく・正しく初めの一歩を踏み出してもらう」ための内容を、本記事にまとめておこうと思います。

この記事の内容を学ぶために、特別なスキルは必要ありません
日本人にとって必修科目である株式投資の知識をまとめていますので、株式投資に興味をもっているすべての日本国民に参考していただきたい内容です
いつも通り、科学的・客観的な視点でありながら、分かりやすい解説を心掛けていますので、安心して初めの一歩を踏み出してください。

また、かじり虫の大切な友人を相手にしていることからも、内容の本気度を感じていただければ幸いです。


■ 株式投資を行う意味

(1)お金を増やす
(2)経済格差をヘッジする

初めに、株式投資を行う意味から確認しておきましょう。
ポイントは大きく分けて2つ。

(1)お金を増やす
当然ですが、お金を増やすというのが投資目的の1つですね。
株を購入するということは、「企業」という「収益装置を所有する」ということであり、「株で利益を上げる」ということは「将来の企業成長に賭ける」という行為です(主にインデックス投資)。
ちなみに実績だけでいえば、これまで世界経済(企業全体)は成長し続けてきました。
インデックス投資の中心となる商品「S&P500」という米国株指数の成績は、過去92年間で+676%という成績です(年間平均+7.3%)
後述の動画内でもグラフを使って分かりやすく紹介しているので、ぜひご覧になってみてください。

(2)経済格差をヘッジする
金融資産を保有する意味は「お金を増やす」だけではありません。
「物価の変動を対処する」という重要な意味もあります。
僕たちが身の回りの物・サービスを見回してみて分かる通り、それは世界中の物価の影響を受けていることがわかります。
あるいは、時価総額の世界ランキングを見ても一目瞭然ですね。
それら世界を席巻する会社の一部を所有すれば、物価変動をヘッジする効果を得られるというわけです。
また、トマ・ピケティが「r > g」とシンプルに表現するように、金融資産の収益性というのは非常に強力です。
「金融資産に対するアクションを起こさない」という行為が、日々着実に経済格差を生んでいるという事実は理解しておきましょう。
肉体的な収益力は老いと共に衰えてしまう日が来ますが、金融資産の収益力は日ごとに増していきます。
ぜひ心身ともに健やかな今、株式投資について学んでいただければ、ひとりの友人として嬉しく思います。

<参考動画>

株式投資を行う意味を解説した部分

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■ 利益を上げる科学的アプローチはあるのか(簡単に教えて!)

・投資で利益を上げる方法はある
・過去の動画で投資手法をまとめている
・今回のターゲットは「インデックス投資」

さて、「株式投資に取り組む意味は2つあります」という解説をしましたが、正直皆さんが聞きたい話はそんなことではないのでしょう。
この記事を読んでいる皆さんの心の声を書き上げます。
それは、

「儲ける方法知りたいんや!」

これですね。
(急に下品になりましたが、知性と卑俗の振幅もまた金融世界の醍醐味です。)
私も10年以上このテーマについて血眼になって取り組んできたので、解説できる幾ばくかの知識はあります。
結論から言えば、「投資で利益を上げるための、再現可能な、科学的アプローチ」はあります

巷には様々な投資手法が(価値のあるものも、価値の無いものも)紹介されていますが、その中でも「価値のある手法」というものをまとめると以下のようになります▼

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聞いたことのある投資手法もあると思いますが、それらの「利益の根拠」を分類したものが以上の図になります。
(金融工学や会計学、金融系シンクタンクのレポートからベースとなる知識を得ています)

スライド内には難しい言葉も使われていますが、今回ターゲットにするのは、投資の基本であり、最も学習コストが低い「インデックス投資」です(図の左部分)。

<参考動画>

▼科学的に価値のある投資戦略を分類してみた

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▼インデックス投資戦略について解説した動画

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■ 何から学んだらいいのか

・NISAを利用する
・全世界株、米国株を基本に
・「月5万」がひとつの目標値

ゴリゴリの短期トレードで稼いでいるかじり虫ですが、それを万人に勧めようなどとは全く思っていません。
多くの日本人にとって、初めに学ぶべき株式投資はインデックス投資であると思います。
幸い、日本には「NISA」という使い得な仕組みもあるので、こういった制度を利用しながら自分に必要な金融資産を組み立てていきます
この辺の話は過去の動画にまとめているので、ぜひご覧になっていただきたいと思います。

<参考動画>

▼「インデックス投資」の基本的な部分を解説した動画

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■ 練習0:儲ける方法を探しにいこう!

・インデックス投資を有利にする方法を探る
・投資の基本的な分析を習得できる
・材料はかじり虫が用意してある

さて、「とりあえずインデックス投資をしといたら?」という話で終わるなら、かじり虫が解説する意味はありません。
今日のメインテーマはここからです。

今回は、この「インデックス投資」を題材として、そのパフォーマンス(投資成績)を最大化させるための分析を皆さんに行っていただきます
作業内容は非常に簡単なものでありながら、投資分析の基本をばっちり習得できる内容になっています。
必要な材料は全てかじり虫が用意しておいたので、面倒な作業もありません。
さて友よ、お金持ちになる心の準備はできましたか?


■ 練習1:分析の材料

・S&P500の時系列データ
・スプレッドシート

今回はインデックス投資の基本的な指数となる「S&P500(米国版の日経平均みたいなもの)」を題材に、投資分析を行います。
以下のリンクからダウンロードしてください。

▼S&P500(YahooFinanceUSから、ドル建ての時系列データ)

また、分析にはGoogleスプレッドシートを使用します。
かじり虫の友人達はプログラムで処理することが可能ですが、初めはイメージを掴むためにもスプレッドシート上でデータを触ってみましょう。
誰でも簡単に取り組むことができます。
以下のリンクからスプレッドシートを起動してください(無料で使用することができます)。

▼Google スプレッドシート

https://docs.google.com/spreadsheets/u/0/


■ 練習2:基本的な分析

(1)価格データをシートに張り付ける
(2)日次リターンを算出する
(3)累積リターンを算出する
(4)折れ線グラフで表示する

初めは、株式投資分析の基本から学んでみましょう。
プロの運用者も行う作業ですので、これができるだけでライバルを一歩リードできます。

(1)価格データをシートに張り付ける
まずはスプレッドシートを開き、「シート1」の「A1」セルへ、先ほどダウンロードした「S&P500」のデータを張り付けてください▼

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(2)日次リターンを算出する
そして、データを触る前に、必要最低限の用語を押さえておきましょう。
  ・リターン  :一定期間の株価変化率
  ・日次リターン:前日終値~当日終値の株価変化率
  ・累積リターン:日次リターンの累積値

基本的な投資用語なので、何度も目にしたり使用することで慣れてください。
というわけで早速、スプレッドシート上で「日次リターン」を計算してみます。
「H3」セルに「=(E3-E2)/E2」という計算式を入力すれば「日次リターン」が計算されます。
その後、セルの末尾(1259行目)まで計算式をコピーしてください。
(「H3」セルを選択し、セルの右下にマウスカーソルを合わせ、カーソルが「+」へ変化した状態で左ダブルクリックすると、セルの末尾(1259行目)まで関数が自動入力されます。)
以上で「日次リターン」の計算は完了しました。
難しい作業はありませんよね?▼

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(3)累積リターンを算出する
次に、「累積リターン(日次リターンの累積値)」を算出します。
「I3(i3)」セルに「=I2+H3(=i2+h3)」という計算式を入力すれば「累積リターン」が計算されます。
そして先ほどと同様、セルの末尾(1259行目)まで計算式をコピーしてください。
以上で「累積リターン」の計算は完了です。
この「累積リターン」がS&P500という商品の「投資成績」ということになり、「いくら利益を生んだか」を表す数字です▼

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(4)折れ線グラフで表示する
最後に、「累積リターン」を折れ線グラフで表示してみましょう。
まずスプレッドシートの「累積リターン」の値をすべて選択します(「I3(i3)」セルから「I1259(i1259)」セルまで)。
次に、以下の通りグラフを選択します。
「挿入」タブ >「グラフ」
以下のようなグラフが表示されれば成功です▼

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以上が、基本的な投資成績を評価する方法になります。
これを自分の手で行えるというだけで、他の投資家よりも大幅に有利になります
といっても、まだ実感がありませんよね。
大丈夫、次の項目で分析のポテンシャルを理解していただけます。


■ 練習3:積み立て投資を有利にする(歪みを探してみる)

(1)マーケットのゆがみ(α)を探す
(2)日中と夜間のリターンをそれぞれ算出してみる
(3)曜日ごとのリターンを算出してみる
(4)月別のリターンを算出してみる

「練習2」の作業ができるようになれば、積み立て投資のシミュレーションなどもできるようになります。

(1)マーケットのゆがみ(α)を探す
ここでは、積み立て投資の成績をより向上させるための分析を行っていきます。
株式市場において、平均を超える収益(超過収益)をあげる方法はいくつもあるのですが、その「超過」部分を少し専門的な言葉を使うと「α(アルファ)」と呼びます。
ここでやりたいことをシンプルに表現するなら以下の通り▼
  積み立て投資を有利に = インデックス投資(β)+ 超過収益(α)
この式の「超過収益(α)」部分を探す方法をここから紹介していきます。

(2)日中と夜間のリターンをそれぞれ算出してみる
先ほど「練習2」では、「S&P500」の日次リターンを計算しました。
ここでは、その日次リターンを、「日中のリターン」と「夜間のリターン」に分解してみましょう。
「日中のリターン」は、「J3」セルに「=(E3-B3)/B3」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「日中の累積リターン」は、「K3」セルに「=K2+J3」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「夜間のリターン」は、「L3」セルに「=(B3-E2)/E2」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「夜間の累積リターン」は、「M3」セルに「=M2+L3」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
最後に、日中と夜間、両方の累積リターンをグラフで表示すれば、どちらが成績が良いのかはっきりと認識することができますね▼

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(3)曜日別のリターンを算出してみる
次に、曜日別にリターンの傾向がないか調査してみましょう。
まず、「曜日データ(月曜=1,日曜=7)」を取得するために、「N3」セルに「=WEEKDAY(A3,2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーしてください。
「月曜の累積リターン」は、「O3(o3)」セルに「=IF($N3=1,$H3+O2,O2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「火曜の累積リターン」は、「P3」セルに「=IF($N3=2,$H3+P2,P2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「水曜の累積リターン」は、「Q3」セルに「=IF($N3=3,$H3+Q2,Q2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「木曜の累積リターン」は、「R3」セルに「=IF($N3=4,$H3+R2,R2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「金曜の累積リターン」は、「S3」セルに「=IF($N3=5,$H3+S2,S2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
最後に、それぞれグラフで可視化すれば、どの曜日の収益率が高かったのか理解しやすくなります▼

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月曜_累積

火曜_累積

水曜_累積

木曜_累積

金曜_累積


(4)月別のリターンを算出してみる
次に、月別にリターンの傾向がないか調査してみましょう。
まず、「月データ(1~12)」を取得するために、「T3」セルに「=MONTH(A3)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーしてください。
「1月の累積リターン」は、「U3」セルに「=IF($T3=1,$H3+U2,U2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
「2月の累積リターン」は、「V3」セルに「=IF($T3=2,$H3+V2,V2)」と入力し、セルの末尾まで計算式をコピーします。
3月以降も同様に累積リターンを算出し、それぞれグラフで可視化すれば、どの月に収益率が高かったのか理解しやすくなります(グラフ化のためのデータ選択エリアは「U1259:AF1259」です。)▼

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(棒グラフが11本に見えますが、一番右に12月の棒グラフが存在します。収益率がほぼ0%のため見えていません。)

直近5年のデータですので、コロナショック(2~3月)の影響を強く受けていますね。
その他気になるところといえば、いわゆる「秋枯れ」といわれる9~10月の収益率の低さでしょうか。
いずれにしても、月別のデータで米国株の購入タイミングを最適化するなら、もう少し長い期間の調査を行いたいところです。
分析の方法は今回紹介した内容のとおりですので、興味のある方はぜひデータを入手し検証してみてください。


■ まとめ

株式投資の世界への入門、お疲れさまでした。
通常の入門記事であれば、インデックス投資の価値を解説するところで終わるはずでした。
しかし、それだけならわざわざ専業のトレーダーが解説する意味はありませんよね。
今回はそこから一歩進んで、インデックス投資をパワーアップさせるための基礎分析まで行いました。
「練習3」の内容に、

「こ……これは…!!!」
「面白い…!!」

と反応してしまったあなたは、投資家として素晴らしいセンスを持っています。
データを手に投資技術を身に着けてみたいという方は、ぜひ今後もかじり虫と一緒に学び、マーケットをハックしていきましょう!

この記事の反応が良ければ、続きも書いてみようと思いますので、コメント欄でご意見いただけると嬉しいです^^


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でーたかじり虫
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