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BHI 3033「Stan」(Tyrannosaurus rex)

標本紹介シリーズ、1発目はみんな大好きStan(BHI 3033)。1987年にブラックヒルズ研究所のStan Sacrisonがアメリカ・サウスダコダ州のヘルクリーク層(約6600万年前)で発見したTレックスで、5年後の1992年7月より発掘が始まっています。
全長11.7m、所謂「華奢型」骨格であることからオスとも考えられています(ここではオスと仮定する)。最終的にはほぼ完全な頭骨を含む全身の70%前後が発掘されており、Tレックス全体で見てもかなり良い完全度の標本です。キャストが量産され世界中あちこちで展示されていることからも、Tレックスと言えば彼を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか(因みに1体約1000万円で買えるのだとか)。日本では国立科学博物館・福井県立恐竜博物館・山口県立博物館・北九州市立いのちのたび博物館 でキャストを見ることができます。
そんなStanですが、ブラックヒルズが株主と揉めたことにより損害賠償を払うこととなり、その資金源としてオークションに出品されることに。最終的には日本円にして約33億円(⁉︎)にもなるとんでもない金額で落札されアメリカを去っていきました。落札主はアラブの石油王らしく、建設中のアブダビ自然史博物館に展示されるとのこと。闇に消えていくわけではなかったので一安心...といきたいところですが、そうもいかないのが難しいところ。今回はある程度記載がされた上での落札ではありましたが、Stan含めたTレックスはまだまだ研究途上。もう少し研究に使いたいところではありましたが、展示状態の標本に対する研究ハードルは中々高く今まで通りにはいかなくなってしまうのでしょう。非常に惜しいものを亡くしたような気分ではあります。

上野の国立科学博物館で展示されているStan。足元にいるのは近縁種Tarbosaurus bataarの幼体標本MPC-D 107/7をモデルとした幼体の復元骨格。
Stanの頭骨と頸椎。下顎骨には病変により空いた多数の穴が、頸椎は此方も病変の影響で癒合した跡が見られます。
北九州市立いのちのたび博物館にて、Giganotosaurus carolinii(MUCPv-Ch1)らと並ぶStan。こう見るとよりTレックスのマッシブさを感じることが出来るのではないでしょうか。因みにここ、ジュラシック・パークに登場する実在の主役級恐竜(Tyrannosaurus rex・Spinosaurus aegyptiacus・Giganotosaurus carolinii)が全て展示されている世界唯一の施設だったりします。

...というのはちょっと調べれば簡単に出てくる話なので今更語るまでもなかったような気はしていますが、今回は最初なのでお試し程度ということで。今後もこんな調子でやっていきたいと思いますので、皆様よろしくお願いします。


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