蔵元日記Vol.502【終息しないコロナウイルス】
終息しませんね、コロナウイルス。共産党政権下の中国はともかくとして民主政権下の台湾やニュージーランドが感染者数を抑え込んでいること、またお隣韓国と比べてもはっきり多い日本の感染者数(人口比で約二倍)。民族的弱点があらわになっているようで日本人としてはちょっとショックですね。
とにかく首相が悪いとか、自民党が悪い、いや厚労省の対応が悪いとか、危機感をあおるだけの知事やマスコミが悪いとか、犯人を作って留飲を下げても解決にはならない。「結局突き詰めてみると自分たちの社会の問題に行きつくんだなぁ」と、最近しみじみ思います。
なかなか増えなかったPCR検査だって、結局意味がないところまで『きちんとする!!』を要求する我々の社会の問題のような気がします。また、ワクチンだって、日本の技術力を持ってしたら国内企業による開発も不可能ではなかったでしょう。これだって、あらゆるリスクをゼロにすべきという社会の要求に厚労省が従って、製薬会社をおさえこんだからできなかった。結果として、本当にワクチンが他国の製薬会社から必要量が供給されるかどうかわからない、ヨーロッパでもアメリカでもすでに接種は始まっているのに日本ではいつになったら本当に始まるのか不明確なまま。この現状を招いたのは我々自身のように思います。
ということでこの話の結末は、我々の社会が問題であるならコロナウイルスの問題解決は相当長引くということです。少なくとも4~5年の覚悟をすべきと思っています。
となると獺祭はどうするか? 政治家じゃありませんから社会の機構を変えるとかはできませんが、この社会の中で少しでも酒造りを通して社会に貢献できたらと思っております。
まず、この苦境化でなんとかして生き残ること。つまり、社員の雇用を守ること。そして、8千トンから1万トンある獺祭の山田錦の使用量を落とさず、私たちと共に歩んできてくれた山田錦の生産農家を守ること。私たちのできるところで経済を守るということです。
そのためには、お客様の支持を頂ける酒を造るのが一番大切です。つまり、美味しい酒。そして、昨年から顕著な流れになっていますが、国内から海外に売上のウェイトが移ることを妨げない。おそらく、今期の決算では海外売り上げが6割近くなると思います。周囲にはそれに対する微妙な抵抗もあるのですが、仕方のないことと思っています。
そして、しつこいようですが、これを可能にするのは「品質の優秀性をいかに保てるか」だと思います。一部の方々の間で、旭酒造の「絶対的に美味い酒を追求する」「原料米は手に入る最高のものを、技術も最高で最新のものを」「酒は伝承ではない」という姿勢に対し批判的な意見があることは承知しています。「データーやテクノロジーで造った酒は飲みたくない」「俺たちはその地の米で造った酒を飲みたい」とか「寒い冬の朝、白い息を吐きながら法被を着た杜氏さんが造った酒を飲みたい」とか、今の酒造業界の枠組みを壊したくない事から出てきた批判があるのはよく分かっています。しかし、そのことに屈する気はありません。それに屈してたらなかなか功を奏しない日本のコロナ対策と一緒になってしまいますから。
少し話を変えて、実は最近、「世界のワイン市場の構成」についてよく考えるのですが、やはりあれはボルドーという柱があるから世界のワイン市場はできていると思うんです。ボルドーがなくてブルゴーニュしかないとしたらちょっと弱かったと思います。いわんや南フランスとかでは、美味しいけどなかなか主役は張れそうにない。そしてフランスがなければカリフォルニアもチリも今とは違った形になっていたと思います。(イタリアだけは無くても関係ないかな)
ど真ん中に投げ込む直球が剛速球でないとどんな優れた変化球も輝きを見せない、ということです。日本酒が世界に出ていこうとするとき、直球がなくて変化球ばかりだったら日本酒の市場は健全に出来上がりません。獺祭はど真ん中に投げ込む剛速球を目指したいと思います。
そして、獺祭だからできる事、獺祭にしかできない事があり、それをやるのが使命と考えています。次回はその今やるべきこと、今やらなければいけないことを少しお話したいと思います。
ところで、ちょっと自慢、というより感謝ですが、今月号の日経トレンディ―の特集が「おうち酒ブレイク予測!!」ということです。日経読者1000人に聞いた「重要な取引先との接待で注文したくなる日本酒」「今まで飲んだことがあるもののうち最もおいしいと思った日本酒」、この二つのランキングでともに一位になりました。
私に時には無茶苦茶を言われながら、ちょっとでも美味しい酒を目指して技術を積み上げてきた製造の連中が報われた結果でした。そして、ぶっちぎりに近い差で一位に選んで頂いた皆様に感謝したいと思います。ありがとうございます。
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