蔵元日記vol.496【サザビーズ】
世界最古のオークションハウスであるサザビーズ香港に獺祭を出品しています。以前から「ワインと比べて日本酒の弱みは高額な商品がないところ」「世界でワインに伍していくためにはそのマーケットに切り込んでいく商品をつくることが不可欠」とよく話してきました。その第一歩が「その先へ」だったわけですが、いろんな方から「その先へのその先はあるのか?」と聞かれていました。
私たちのその問いに対する答えが今回のサザビーズへの出品です。今年も開催する予定ですが、「日本の農家と一緒になって夢を持とう」という思いから、「酒米の最高峰を作ろう」と山田錦のコンテストを昨年開催しました。一等になった山田錦は一俵(60kg)50万円、50俵単位で購入させていただきましたから2500万円。この50俵という数字には根拠があって総米600kg程度のタンク一本分の仕込みが賄える量なんです。
「この山田錦で仕込む酒は何の酒になるのか」とよく聞かれましたが、「その先へ」の原料にするとしても2500万円という事になると原価としては合いません。ということで、どうせ合わないならオークションに出品してみようというアイデアが浮上したのです。ワインがサザビーズのオークションで絵や宝石などと共に扱われているのは知っていましたから、ここに獺祭を出してみようということです。
これまで、一本50万円を超すような高額商品に進出しようとするならどんな品質的方向性であるべきか、色々と考えてきました。現状それなりのものに到達してきたと自負していますが、しかし、自分たちで値段をつけるとなるとどうしてもお手盛り感が出てしまって、なかなかうまくいかない事が課題でした。そんなことから世界のオークション市場で獺祭を評価してもらおうという今回の出品になったのです。また、現在、ワインのオークションにおいては、ニューヨークよりもロンドンよりも、香港の取扱額が大きいという状況があり、香港への出品を決定しました。
ご存知の通り、フランスのワインが今の世界的評価を受ける上にあたってイギリス人が大きな力を発揮しました。フランス人がフランスのワインを世界最高峰の位置に押し上げたのではなく英国人が押し上げたと言っても過言ではないと思います。彼らがフランスのワインの品質に目覚め、世界に紹介して売りまくり始めたから、今の世界のワイン市場におけるフランスワインの地位が確立されたと思います。そのように世界の階段を駆け上がろうとする限り、日本以外の世界の「場」そして「人」の評価が欠かせないのです。
どんな評価が出るか私共もドキドキしながら見ています。勿論オークションですから値が付かない可能性もあります。また、付いたとしても低価格に沈んでしまうこともあり得ます。来月11月10日が最終落札価格の決定日です。サザビーズによれば落札価格は45万円から70万円の間だろうと予想されています。全部で6本の出品です。よろしければぜひ入札をお願いします。
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