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[Diamond League Rome/Florence] Men 5000m Results
What The Record!!!
本記の5000mの前に衝撃的なニュースを一つ。
Faith Kipyegon(KEN)3'49"11
☆World Record☆
人類初のWomen1500m Sub50
北京世陸1500m2位。
リオ五輪1500m優勝。
ロンドン世陸1500m優勝。
ドーハ世陸1500m2位。
オレゴン世陸優勝。
かつてのSir Mo Farah並に長期かつ盤石な強さを持っている彼女が世界記録を叩き出した。
この記録は、Scoring Table上で1295 Points。
男子の記録に置き換えると、3'26"53。ほぼほぼHicham El Guerroujが1998年に樹立した世界記録3'26"00と同等のタイムであり、ポイントだけでみれば、男子でも世界歴代2位に相当する。
いかにこの[3'49"11]が凄まじい記録であるかが分かる。
(El Guerroujiの3'26"00はさらに怪物的記録)
(なお、近年の男子1500mで世界記録への挑戦は、[2021DL Monaco]のCheruiyot(KEN):3'28"28の世界歴代7位とJ.Ingebrigtsen:3'28"32の世界歴代8位、Katir(ESP):3'28"76の世界歴代10位であり、26"/27"台は2015年以降マークされていない。)
彼女の各シーズンベストは以下の通り。
[2015] 3'59"32
[2016] 3'56"41
[2017]3'57"04
[2019]3'54"22
[2020]3'59"05
[2021]3'51"07
[2022]3'50"37
着々と”強さ”だけでなく”速さ”も目指す。
昨年のDL Monacoなど彼女は3'50"07(Genzebe Dibaba,2015)に何度も挑んできた。
しかも彼女は2018に出産。レースには一本も出ずに完全なオフシーズンを過ごした。
一児の母になった後、6月の[Pre Classic]でシーズン明け一本目のレース。1500m:3'59"04で走る。同年10月のドーハ世陸に着実にピークを合わせ、3'54"22のSB/PBをマークし、2着。圧巻すぎた。
復帰シーズンで世界選手権表彰台にさらりと入ってくるランナーは世界でも両の手で数えられるほどしかいないと思う。
現在彼女は29歳。
今年のブダペスト世陸はもちろん、どこまで彼女の走りがみられるのだろうか。
Result
①Mohamed Katir(ESP) 12'52"09 ☆WL
②Yomif Kejelcha(ETH) 12'52"12
③Luis Grijalva(GUA) 12'52"97 ☆PB/NR
④Joshua Cheptegei(UGA) 12'53"81
⑤Haile Bekele(ETH) 12'54"31
⑥William(Woody) Kincaid(USA) 12'54"40 ☆PB
⑦Joe Klecker(USA) 12'55"16 ☆PB
⑧Jacob Krop(KEN) 12'55"57
⑨Selemon Barega(ETH) 12'56"18
⑩Mohammed Ahmed(CAN) 12'56"46
[2023/06/03]
展開
まず、先頭通過の1000mSplit/lapは以下の通り。
[1000m]2'35"
[2000m]5'11"/2'36"
[3000m]7'50"/2'39"
[4000m]10'27"/2'37"
[5000m]12'52"/2'25"
【1000mまで】
スタート後定石通りRobinson(IRL)・Rayner(AUS)のPace Maker2人が前に出て、400mを61"で通過。Haile Bekele/Kincaid/Ahmedと続く。800mをおおよそ2'03"で通過。1000mは2'35"。62”前後の安定したペースでRobinsonが牽く。
【3000mまで】
1600mを4'10"でRobinsonが先頭通過。ここでレーンを出る。
2000m通過はRayner先頭で5'11"。2500mでフェードアウト。
本来3000mまで7'45"(2'35"/km)の予定だったようだ。
Raynerが抜けた途端、Haile Bekeleがしきりに後ろを気にしていた。彼としては「もう1周じゃないの!?」という感じだったのだろうか。
Grijalva・Kropらが先頭にペースを作り、3000m7'50"で通過。2600mからの400mは64"と大きく遅れたわけではないが、集団がだいぶ詰まり、塊に。McSweynが20mほど離れる。
【ラストまで】
3000m以降Grijalvaが先頭を牽く。
Fisher・Katirも先頭をうかがえる位置に上がってくる。ここら辺の彼らのレース感(戦略?)は本当に尊敬する。次第にペースが上がることを見越して、対応できる1レーンの外から2レーンにかけて位置取る。スピードだけでなく、戦略として非常に重要な要素だろう。
3200mをGrijalva先頭に8'24"(およそ63”ペース=2'37"5/km)で通過。Krop/HaileBekele/Fisherと続く。
3400mでAregawi・Baregaが揺さぶりをかける。これを起爆剤に以降徐々にペースが上がり62”を切るロングスパートが始まる。
4000m10'27"94で通過し、ここでもまだ15人以上の集団を形成。Kipkorirが遅れ始める。
4400mでKejelcha・Cheptegeiが大外からスピードを上げ、先頭を狙う。なおも先頭はHaileBekeleとBarega。
4600mを4200mから59"のラップタイムで通過。スプリントがモノを言うラスト400mへ。この段階ではBarega/Katir/HaileBekele/Kejelcha/Grijalvaの順。
Almgremが4700m手前でKrop・Ahmedの接触の巻き添えをくらい、転倒。この集団のままいけば、PBの可能性も高かっただけにDNFは残念。
ラスト200mでKejelchaが仕掛ける。「ここで前に出るか!」と思ったが、Katirが許さなかった。26"8でゴールまで駆ける。Cheptegei・Grijalva・Kincaid・Kleckerがラストで順位を上げた。
(Kincaidのラスト200m26"7[13"6/13"1]はおそらく最速。いつも思うが、どこにそんなスプリントを隠し持っているのか)
Baregaは直線に入り失速。6人に抜かれてしまった。
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ほぼ着差はないように見える
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/107240167/picture_pc_29269ed3981eb0a1c96ada9595fc2ee9.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/107240166/picture_pc_86d6cd33203fc9ef07a119bd67681ffc.png?width=1200)
KatirとNdikumwenayo
雑観
【Katirの今季】
https://www.instagram.com/p/CtAJV_PM0Xw/?utm_source=ig_web_copy_link&igshid=MzRlODBiNWFlZA=
別の記事でも取り上げたが、Katirはシーズンごとに戦う種目をしっかりと絞ってレースに臨んでいるように感じる。
2021シーズンは東京五輪5000m、2022シーズンはオレゴン世陸1500mにフォーカスをして、シーズン通じてのピーキングとでもいえば良いだろうか。そんな印象を持っている。(彼が本格的に世界規模の大会に出場し始めたのは2021シーズンから)
ということは、今季は「5000m」で勝負をするのか。ブダペスト世陸に向け、今回の結果は本人にとってもオーディエンスにとってもかなり有益な材料となったこと間違いなしだ。
【Grijalvaの覚醒】
「覚醒」だとか格好のいい言葉を使ったが、本当に今回の走りには驚きを隠せない。
[2021NCAA(Div.1)5000m https://youtu.be/2nQWTDqP4fM]は13'13"14で2着に終わったが、相手は高校時代から活躍していた現BTCのCooper Teare。今回の記録はTeareのPBを14"近く上回っている。(TeareのSBは13'12"73であり、彼は今季ミドルから合わせているスタイルをとっている)
これでKincaid(outdoor:12'54"40)+Grijalva(12'52"97)+Nur(13'05"17)とかなりハイレベルなトレーニングチームとなった。
着実に成長を遂げるグアテマラ、中南米のホープ。期待せずにはいられない。
【”王者”はどこに行くのか】
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余裕そうに見える
Cheptegeiの12'53"81をどう捉えるのか。これがかなり難しい。
彼は2年前の2021シーズンにも同時期のDLFlorence(Firenze)の5000mに出場し、4400mまでフロントランをして12'54"69の6着。
(これも別記事にもあるが、同レースでJ.Ingebrigtsenが12'48"45でPB/ARをマークした。)
その後、東京五輪で5000m/10000mに出場し、10000mはBaregaに先着を許したが、5000mでは優勝。決して初戦で負けたからと言ってあまり勝負強さには影響しないのかもしれない。(2021シーズンの5000mは[DL Firenze]と[東京五輪]のみ)
しかし、今回彼は一度もフロントランをしていない。5000mでも10000mでも自分からグイグイペースを創っていく印象のCheptegeiだが、今回は終盤まで息を潜め、ラスト600mからじわじわと前を狙っていく走り。オレゴン世陸もそうだった。そして、スパートで勝ち切れないのも同様だ。
トラックを次世代に明け渡し、マラソンへの挑戦はいつになるのか。
【アメリカ勢の躍進】
Kincaidを先頭に、Klecker、Fisherらアメリカ勢は全員が12'台に収まった。今回のKincaidがアメリカ歴代3位、Kleckerがアメリカ歴代4位、Fisherがアメリカ歴代7位に相当する。今大会外だが、Nurの13'05"17もアメリカ歴代17位となっている。2010年前後を頂点に長らく止まっていた「アメリカ長距離界」の時計が確実に動いている。
オレゴン世陸10000mで惜しくも表彰台に立てなかったFisherがアメリカ記録をマークし、5000mでも樹立した。今度こそメダルを首に下げることはできるか。