絵描きが2年くらいAIイラストと戯れての雑感-今後AIイラストユーザーに救いはあるのか?-
こんにちは、だしのやです。noteの記事更新をサボりすぎなので、なにかUnityとかイラストで書こうかな……といろいろ考えた結果、全然関係ないAIのことについて書く気になりました。なんでやねん。
※2024/03/28更新
Patreonの綴りが間違ってたり一部誤字ってたところを修正しました😇
あと話題的に「AI」「イラストレーター」のタグ抜けてる気がしたのでこれらを追加しました。
AIイラスト、細々と触る機会があったのですが、これについて思ったことを雑~にまとめて書き記しました。
ちなみに、今回の記事中画像は全部Midjourneyで生成したやつです。別の絵で忙しくてわざわざ描き下ろすの面倒だったので……
【5秒で読みたい方向けの結論】
AIイラスト、個人ユーザーレベルだと今の環境では救いがなさすぎるので、全ツッパでコスト割いて継続収益化目指すのは絶対やめたほうがいいです
だって実際キツイんですもん………………………………
開発ができる法人ならば、AIで創意工夫の余地が色々あると思いますが、個人はほんとにノーチャンだと感じてしまいます。
もうプラットフォーマーやBtoB事業者の反応を見て察してる方もおられるでしょうし、わざわざテメーに書かれるまででも無いわ!!!っていうお声もあるかと思います……そのへんはゆるして
詳しく読みたい方は以下にお進みください。
【今回の記事の前提】
●いわゆる個人生成のAIイラストについての賛成・反対には興味がないです
そもそも2024年現在、個人が行うAIイラスト生成では、マネタイズや社会的信用の獲得が難しすぎるので、わざわざコストを割いてまで賛成反対を論じる必要がないというのが私の考えです。
不法・違法な行為であれば普通に民事・刑事裁判に持ち込むだけなので……。
BtoC領域での生成AIイラストの販売はプラットフォーム毎に何らかの規制を受けていることがとても多く、プラットフォームの審査を通そうとすると、結局何かしらのコンテンツ加工・アート面での加筆を行わなければならないことから、商材的にはそこまで扱いやすい物ではないと考えています。
また、BtoB領域でも、個人の行う生成AIのグレーな使用はかなり厳しくチェックされるので、何のスキルもない状態で、生成AI活用のみでプロとして活動するのは、ほぼ不可能に近い状況です。
正直なところ、AIイラストがものすごく幅を利かせているように見えるのはある種のネット社会上幻覚とも言うべきもので、無闇矢鱈に恐れるものでもないし、また過度に期待できるようなものでもない、と思っております。
後述するように、私はデザイナー・イラストレーターでありつつもAIイラストを活用している者ですが、「ぶっちゃけ今のAIイラストはそこまで騒げるほどの品質には全然達してないやろ……神絵師の方の作品のほうがどう考えても質もいいし法的リスクも少ないし……」と思いながら生成してるような、人情がなさすぎるAIイラストユーザーなので、とてもドライに割り切りながらAIイラストを切り貼り素材あるいはモックとして使っています。
あくまで、今後生成AIのいちジャンルとして技術的にどうしていくのが良いのか、存続可能な形はあり得るのか、をベースに考えています。
●2年くらいStableDiffusionとMidjourneyを使ってます(ました)が普通に自分で描きます
筆者はデザイナー・プランナー・イラストレーターの兼任クリエイティブ事業者であり、趣味絵描きですが、同時にAIイラストサービスのユーザーでもあります。
ただ、実のところ、AIイラスト自体にそこまで期待しているわけではありません。正直、期待度合いは一番初期のNovelAIを触ってた時がピークで、その後はずっと低空飛行のままです()
イマイチテンションが上りきらなかった理由は、後述「悪かったこと」欄で大量に書いております。
私は現段階では、「生成AIで実験的に運用されているジャンルの一つで、時たま作画補助で役立つこともある、まあそれなりに面白い研究目的のおもちゃツール」という認識でAIイラストを見ていて、その文脈でStableDiffusionとMidjourneyを使ってます。
StableDiffusionは環境維持がめんどくさくなって辞めちゃいましたが……。
なので、生成されるイラストを尊重する形で加筆して作品化する、というアプローチは基本しないです。
むしろ、生成AIに百枚単位で参考資料イラストを出力させておきながら結局己では全然違う絵を描くみたいな所業を平気でしています。
AIに意思があったら今頃ボコボコにされていたかも
私は、AIにも生成イラストにも特別頓着してないし過度な期待もしてない狂人絵描きタイプなので、「手描き作画を主体とする作品制作に於いて、AIが役に立つのかどうか」「使ってて技術的に面白かったか、つまらなかったか」を主として考えています。
【2年くらいAIイラスト使っての感想】
●良かったこと
●悪かったこと
実際それくらい期待値のズレが大きかったんだから仕方ありません。
ゲームコンテンツやデザイン、イラストのモックアップを作るのがめちゃくちゃ早くなったのは間違いなくAIイラスト導入のメリットなのですが、「生成条件などの制御上の小回りが効かない」「AIだけで完結できる作業が思った以上に少ない」といった明確なデメリットもありました。
トータルの評価として見たときに、どれくらい事業上・趣味制作上プラスになったかと言うと、「間違いなくプラスではあるが、劇的なプラスとは絶対に言えない」≒別になくても大問題にはなり得ない、という、中々微妙なところに落ち着いている感じがあります。
私は事業者的に試しておく必要はあると考え、実験的投資と完全に割り切った上でAIイラストサービスを使ってますが、学生さんや会社員の方が、お小遣いの範囲で使うべきなのか?と聞かれたら、これを契約するより、他コンテンツやChatGPTなど汎用的な生成AIサービスのサブスクライブを優先した方が良いと思ってます。
【結局のところ、AIイラストは私たちを『神絵師』にはしてくれないのか?】
これは残念ながら、現段階ではYesと言うしか無いと思っています。
デジタル機器が扱えれば、誰でもAIイラストを作れる時代になりましたが、非常に皮肉なことに、凡才も秀才も天才も全員AIが使えてしまうせいで、AIイラストが人間の能力差を埋め合わせてくれるわけではなくなっていることを意味しています。
筆者自身もごく僅かに、業務で幾らか生成AIに関する活動をしたので、身に染みて理解しているのですが、2024年現在のAI活用に於いては、大手企業やゲーム会社等IT企業における元々優秀な人が、更に生成AI利用で優秀になる、という傾向が非常に強いです。
もっと言ってしまえば、何の実績もない個人よりも、開発力と資金力のある法人の方が、遥かに柔軟性のあるBtoBまたはBtoCのAI生成サービスを提供できてしまうので、結局個人がAIによって一躍有名になり尚且つ実績を残せるほどの機会は、残念ながらそこまで増えてはいない、というのが実情としてあります。
『神絵師』なるネット上概念を分析したとき、主因子として挙げられるのは「作画力の高さと際立つ個性」「ビジネス上での、ある程度の地位の獲得」だと認識しているのですが、今のAIイラストには、
●個人の個性を発揮しづらい
(類似する学習モデルを使う限り、誰でも一定の結果は出せてしまい、発注者がその環境を作ってしまえば、わざわざ部外者に発注する必要すらない)
●ビジネスシーンでの用途が限られ、殆ど地位獲得のチャンスがない
(事実上個人のAI利用は制限されており、法人の方がビジネス展開上あらゆる面で圧倒的に有利)
という、AIイラストであるが故の致命傷とも言うべき2大ネックがあり、これがあるせいで、神絵師領域への到達を非常に困難なものにしています。
これらの2大ネックが解消されない限り、AIイラストによる個人の収益活動の水準は中々上がらないと思われます。
AI開発法人が神絵師の方と学習提供・利益還元契約を締結して、疑似神絵師AIをBtoB向けに提供したりしてめちゃくちゃ収益上げました!!!!とかは今後あるかもしれませんが……。
【じゃあどうすればいいの?神絵師諦めたほうがいいの??】
めちゃくちゃ無慈悲な回答になってしまうのですが、今の生成AIイラストでのシステムと、今のAIイラストを取り巻く微妙なビジネス上・法律上の課題が存在し続ける限り、AIイラストだけで神絵師になろうとするのは絶っっっ対に止めておいた方が良いです。
プロンプト指定の手法は、技術的に後世も使えるものであるとはお世辞にも言えず、後々BtoB領域でのスキルPRとして使える可能性はあまりありません。
また、生成物を販売するにしても、プラットフォーマーの選択肢自体が限られ、そのプラットフォーマーの都合で振り回される可能性も高いことから、個人レベルでの継続的な収益活動としては相当に条件が厳しくなってしまいます。
おそらく、職業として成り立たせるレベルを目指すのであれば、AIイラストはあくまで画材や下地、あるいは開発ツールの一つとして留め、その上に更に新しい技術や販売コンテンツを乗せる……といった工夫がないとダメだと思われます。
AIイラストを販売するために、インディーゲームを丸ごと一本作って販売可能な形式に持っていく、くらいの覚悟がないと厳しいかもしれません。
今回の記事で、何度も述べましたが、AIイラストの個人ユーザーができることは、ゲーム会社などIT企業所属のハイスキルの方や、AI研究スタートアップ、大企業などがもっともっと高い水準でできてしまうため、最終的にはAIに依拠しながらもAI的ではなく、また他者(他社)が実現できないような個性化を目指すという、ある種の矛盾を追求せねばならなくなります。
ここまで来ると、AIを使っているかどうかは関係なく、アーティストの究極目標と何ら変わらなくなるので、それがどれだけ難しいことかは、ご推察いただけるのではないかと思います。
「AIは間違いなく便利なものであり、世界的にも今後研究や投資が大いに進むジャンルである。だが、AIのいち利用者でしかない貴方を、突然著名人や大金持ちにするような、安易な救済をするわけではない」
というのが、かなり無慈悲ではあるのですが、諸々の局面で実際にAIに触れた後に、私が得た感想です。
【おわりに】
救いはあるのか?という意味深な問をタイトルに掲げておきながら、全然救いのない内容を書いてしまいました。
なんというか、物凄く令和時代っぽいのですが、技術が進歩しても使う人間が進化しているわけではない、という諸行無常さを感じるこの頃です。
「生成AIは人間甘やかしマシーンに非ず」というのは、最近自分がChatGPTやMidjourneyを使うときに念仏のように唱えている言葉です。
最低限、判断基準と知識と技術がないと、何をするにしても生成AIはうまく扱えないと思います。
イラストAIとはかれこれ2年くらいの付き合いになりますが、どちらかと言えば、意図した動きをしないAIに対して舌打ちしながら使ってることのほうが多いくらいです。
それでも、100回中1回くらいは良いインスピレーションを与えてくれることもあるので、将来的に何かしらの使い道はできそうかな……とぼんやりした期待と探索的実験のマインドを持ちつつ、今後も細々と使ってみようと思っております。
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