散文詩 / suvorexant
遅れてやって来た言葉は波となり渦を産み出す。鼓膜と聖歌のセックス。30年前のイメージ、40年前のイメージ、連なる列車、誰も微笑んでいない乗客たち。複数の暗闇が光の糸を手繰り寄せ、中央に鎮座する髭面の男がそのすべてを操作する。
撮影しろ、記録しろ。複製不可能な現在など存在しない。すべての過去が現在へと目掛けて投射し、すべての未来が現在へと遡及する。
神の思し召し──触れたい方はご自由に。
音の中に於いて、時間は古代から地球の終わりまで自在に行き来する。永遠にこだましない響きなど存在しない。悲鳴も呻きも歓声も、あらゆる時代に刻まれ続ける。
響きという焔を守る番人が居る。彼らはいかなる顔も持たない。そして飲まず食わずで踊り狂いながら、一つ一つの焔を絶やさぬよう祈り続ける。
私たちは見たい時に見たい夢をその棚から取り出す。求める快楽だけで全身を充足してゆく。時速200kmで与えられる快楽にただ付き随う。
苦悩は語るに足りない、除去されるべきバグである。肩の埃を払うように安定剤を一錠飲めばいい。最早いかなる苦悩にも思索にも人間の居場所は無い。
きみの揺れ動く文学性は、あまりにも放埒な現在の反復を前に死に絶えた。
人間は自分たちを打ち砕く巨大隕石の落下を待望している。人間は存在を破壊し、時間を破壊する。
神はまだ手を下してくださらないのか?
あとどれ程の罪を産み出せば、相応の罰が下されるのか?
私たちはまだ見ぬ最大の罰を待望している。司法の扉は硬く閉ざされ、人々は己に相応しい罪状を、その判決を言い渡されるために長蛇の列をなしている。列の左右には売春宿が建ち並び、容疑者たちを相手に春を売る。
顔の無い女ほど美しい。
体の無い男ほど美しい。
無形のガラス窓の向こう側に固有の瞳が反射する。奪った生命の数だけ輝きを増すその瞳。最も罪深い者だけが最も清らかなものを知る。
嘔吐する。
純粋な花はそれを取り囲んで収縮する。
か弱い頭蓋からあなたの思考を守る。
光よりも柔らかく、葉よりも明るく、輝きよりも水のように、雨よりも優しく触れるその手よ。