読書録|論点思考
仕事上で課題を解決しようとすると、やることは山積みで、時間も人も足りていない。よく「やらないことを決めるのが大事。」と言われるが、何がやらなくてもいいのかわからない。とりあえず上司から与えられた課題は解決しようとする。
ただ、本当にこれで良いのか…?そんな思いを抱いている人も少なくはないと思う。私も実際にそんな悩みを抱えているなかで、本書に出会った。
全ビジネスパーソンに読んでほしい良書だったので、ぜひ手に取ってほしい。
論点思考とは
論点とは「達成すべきゴール」、
論点思考とは「論点を定義するプロセス」のことである。
大前提として、人も時間も足りないなかで、問題のすべてを解決できない。
そのため、最優先で解決すべき問題を設定し、その解決に注力することが求められる。頑張って仕事をしているのに成果が上がらないのは、間違った「論点」を解決しようとしているからかもしれない。
では、どのようにして確からしい論点を設定するのか。
以下の4ステップを行ったり来たりしながら設定してく。
論点候補を洗い出す
論点を絞り込む
論点を確定する
全体像で確認する
論点設定のプロセス
ステップ1:論点候補を洗い出す
①問題点と論点を区別する。
一般的に問題点と呼ばれるもの:現象や観察事実
論点:解決すべき問題
例)少子化問題
→これは問題?論点?
少子化は単なる現象にすぎない。
少子化の何が悪いかを設定するのが論点
論点候補1:労働人口が減少し、経済活動が停滞する
論点候補2:社会保障制度の維持による若者の負担増加で少子化加速
論点候補3:地方の高齢者の割合が増え、活気がなくなる
どの論点を解決するのかで、解決策は全く異なる。
観察事象にとらわれず、そこから解決すべき論点候補を出していく。
②一般的な論点は論点ではない
一般的に問題といわれるものであっても、その会社にとっては論点ではないことが多い。
例)リクルート
業績を上げる若手社員が独立していくため、社員定着率を見ると問題がある会社といえるが、起業家精神の高い社員がいることがリクルートの強み。
③本当に論点かを常に疑問をもつ
上司から「問題」を与えられ、そのまま解決に動こうとしてはならない。常に「なぜなのか」を繰り返し、課題の深掘りをしていくことで、本当に設定すべき論点が見つかる。
留意すべきこと
論点は人によって異なる。
誰の問題を解決したいのかを常に意識する必要がある。論点は動く。
外的要因・内的要因によってダイナミックに動く。
作業をするなかで進化することもある。
ステップ2:論点を絞り込む
①当たりをつける
●白黒つけられそうな問いを設定する
例)競合にシェア争いで負けている
・認知されているのか、認知されているが店舗で売れていないか
・店舗に並んでいるか、並んでいるが新規購入がないか
・リピートされているか、リピートされているが年間購入数が少ないか
●依頼者の関心が低い分野を探る
依頼者が問題と認識している部分は、マネジメントされていることが多い。
むしろあまり関心をもっていないところに改善のヒントが隠されていることも多い。仕事の依頼主の関心が薄いことろを疑ってみるのも一つの手法
●「なぜ」を5回繰り返す
例)商品が売れなくなってきた
・売れなくなった商品はいくつあるのか
・すべての関連商品が対象か、それとも一部か
・自社だけか、他社も同様か
・ジャンルごとで消費者の母集団の売れ行きはどうなっているか
・母集団の縮小が関係しているか、ニーズや志向が変化してるか
②筋の良し悪しを見極める
●「解決できるか」にこだわる
「いかに難問を解くか」ではなく「いかに成果が上がるか」
見極める3つの視点
1.解決できるか、できないか。
2.解決できるとして実行可能か。
3.解決したらどれだけの効果があるか。
●筋の良し悪しの判断
善し:
長期的・広域的な視点で考えられている。
簡単に解け、容易に実行でき、短時間で大きな成果が得られるもの。
悪し:
短期的・局所的な視点で考えられている。
実行が難しく、時間がかかる。かつ効果が見込めないもの。
ステップ3:論点を確定する
①プロービングを行う
依頼時点では論点が明確に設定されていないことが多いので、質問を繰り返すことで、論点を設定する。
アキネーターのように、Yes/Noの質問を繰り返しながら核心に迫るやり方。
実際に現場に赴き、一次情報を得ることも重要。現場感覚がないままに、聞いた話や資料などの情報をもとにした判断は間違うことがある。
②依頼者の真意を探る
常に依頼者がどんな問題を解きたいのかを考える。同じ指示内容でも裏側に込められた意味が異なることもある。
評論家の立場ではなく、相手の立場で考えることが重要。
そして、提案時には「わくわく、ドキドキ」させることを意識する。
③引き出しを参照する
自分の引き出しを参照しながら相手の話を聞くことで、聞こえ方が変わる。
以下、引き出しの蓄積例
・類似事例・他社事例
・顧客視点
・鳥の眼、虫の眼
・過去の経験
ステップ4:全体像で確認する
拾い出した論点を整理していく。
イシューツリーなどのフレームワークを使っても良いが、独自の方法でもOK。
大事なのは、大論点からつながっているかを確かめることである。
目的があって手段があるため、その目的を意識して仕事を見極めることが重要。
まとめ
論点の設定をロジカルに説明されている本書だが、経験や勘などに頼る部分も必要とある。
あくまで問題解決のプロセスや論点とは何かを意識する上で本書は役立つが、実際の現場では思うようにいかないことも多いはずだ。
試行錯誤を繰り返しながら、一歩ずつ成果を上げていきたいと思った。