#ダースレイダーの音楽話 #53 ヒップホップ黄金期への想いを昇華させるビートたち
PORT AUTHORITY/MARCO POLO
ヒップホップビートのトレンドが激変していく2000年代、ニュー・ヨークの古き良き伝統と化しつつあったブーム・バップをリターンさせたのは、カナダはトロントのプロデューサー、マルコ・ポーロだった。
ロウカスからリリースされた本作に通底するのは80年代後半から90年代前半のニューヨークサウンドの復興。
サンプル・ネタを吟味して調理し、太く主張するドラムを打ち込んでいく。
ヴィデオにもなった”Nostalgia”でマスター・エースがアルバムのテーマそのものをライムするが、勿論ただの
振り返りではなく、この時代にこの手法で提示する現行のタフなヒップホップに仕上げているのが凡百の懐古趣味なビートメイカーとの違いだろう。
審美眼と構築力、ビートに乗っかるMCの選択、更にはそのMCのポテンシャルを引き出す。
かつての名人達と競う意識の高さが全体に蔓延っている。登場するMCたちは押しなべて素晴らしい仕事をしているが、バックショットやラージ・プロフェッサーは往年の魅力を再び聴かせてくれる。
小難しく解説してしまったが、全編首を振ってるうちに聴き終わってしまうシンプルにヘッド・バンギ
ンなブギー!