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NHKニュースクリップ(2024年12月1日号)
11月末、NHKでは毎年の「秋の闘争」が行われていました。並行して勤務特定(一般職が勤務時間と休憩時間を事前に決めた通りに厳守し残業拒否をすること)も行われていまして、現場はいつもと違う体制だったはずです。
大体、こういう時には何かが起こるものです。今回も、信じられないような誤情報をNHKが全国に発信していました。
過去20年続けてきたNHKの緊急地震速報の特設ニュース、
— _Shifttrr (@_Shifttrr) November 26, 2024
緊急地震速報の発表直後のニュースの中で、対象地域ではない地域の地震情報を伝えるのは史上初ではないだろうか pic.twitter.com/fkTOoNI8xb
当日の録画を私も見て驚きました。能登を中心とする北陸エリアの緊急地震速報の第一報で、男性アナウンサーが少し取り乱したような様子で「近畿地方で震度1の地震」と述べたのです。
確かに、能登の地震の直後、近畿地方でも震度1の地震があったようでした。そのため、アナウンサーの手元の端末には最新の地震情報として、「震度1」の方が表示されていたと思われます。
しかし、緊急地震速報で「招集」されて震度1の地震を伝えるわけが無いのですよね。能登半島では今も災害が相次いでいる中、あまりにも「緩んで」います。能登半島でNHKを頼りにされていた方は、混乱したでしょう。
緊急報道はNHKの生命線です。緊急事態が唯一、多くの人が自主的にNHKを見ようと行動してくれる機会です。にも関わらず、緩んだ不適切な放送を出しているようでは、見限る人が増えていくばかりです。
教養番組で「フェイク」発信とサイレント修正
宮沢賢治の詩の解釈についてNHKが重大な誤りを放送していました。
録画とNHKプラス配信を見比べたら、NHKプラスはしれっと修正していました。報道じゃない番組でも、前に「クラシック倶楽部」で小説のセリフをバッハの言葉として紹介したやらかしのときはホームページや別日の同番組でお詫びを出していたけど、このレベルだと黙って直すだけなのね… https://t.co/YSBvmAz6SD pic.twitter.com/hnbql0s7v6
— nonchan (@nonchanmile) November 27, 2024
お粗末な「解釈の間違い」をやらかすのは、高学歴の学生を取れなくなった以上仕方ないかとも思いますが、問題はそこではありません。
最大の問題は、誤りを放送したにも関わらず、NHKプラスでサイレント修正を加えたのみで、NHKが正しい情報をほとんど周知していないことにあります。
NHK自身、「誤情報は正しい情報より10倍だか伝搬しやすい」とよく喧伝していますが、まさにブーメランといえます。
当日放送を見た全員を特定して修正を伝えるのは無理でも、例えば100GRP(計算上、放送エリアの視聴者全員が1回はCMに接触したとみなせる“のべ視聴回数“)に達するまで「おことわり」を放送するくらいのことは出来ますし、やるべきでしょう。
では、なぜ誤情報の訂正に対してNHKはそこまで消極的なのか?無謬性神話だけではない実情もあります。
異常に高い NHKのサイレント修正頻度
実際にNHKが「サイレント修正」を行う頻度はどのくらいか?取材をしてみると、「年間1800件程度」に達するようです(※数ヶ月分の月間訂正数をもとに筆者が算出)。
これほどの数だとすると、100GRPもの「おことわり」をマストにしていたら、NHKの放送が全部「おことわり(お詫び)」になってしまいますね。
もちろん、私も在職中、NHKプラスでテロップ等の誤りを簡易修正(画面にオーバーレイする形のもの)をしたことは何度かあります。本編の修正は、完成番組を修正して技術試写まで行うため手間が掛かるのですが、NHKプラスの簡易修正=訂正表示はすぐにできます。
この簡易修正が実装されたのは良いことですが、結局、WebサイトとNHKプラスを注視した人にしか正しい情報が伝わっていないことになります。恐らく、本放送を見た人の1%にも伝わっていないのではないでしょうか?
「情報の参照点」とか「フェイク情報対策」をうたうのなら、まずは自局から始めるべきです。
また、NHKを批判し改善を促したいと思われる方は、ぜひこうしたデータを元に主張して頂くことをオススメします。
NHKが災害情報で法令違反か?
X上で興味深い指摘を発見しました。
気象庁、行ってはならない「特定予報業務の一般への提供」の事例として8月28日に放送した協会を取り上げた(読む限り法令違反?)https://t.co/7B5cC63lcP pic.twitter.com/nHm6GqV2BS
— ろか (@hr16r5) November 29, 2024
この問題について、私はあまり詳しくないので、あくまで現時点での私の理解に基づく発信ですが、要は本来的には一般に伝えることが禁止されている災害リスクに関する情報をNHKが緊急報道で発信したと言えるようです。
NHKの皆さんは、元Postのリンクを参照してみてください。
NHKが参考にしたのは、恐らく、日本気象協会が出したこちらのレポートです。
防災レポート2024 Vol.6 台風第10号に伴う今後の大雨・災害の見通し(第3報)
https://www.jwa.or.jp/news/2024/08/23730/
気象庁の主張によると、私の解釈では、以下の点が問題と思われます。
NHKが民間気象予報会社の資料から「氾濫のおそれがある河川」として具体的な河川名を列挙して放送したが、これは実質的に洪水予報と解釈されうる内容だった。
当時、民間気象予報会社は「洪水の予報業務許可」を受けていなかった。
仮に洪水の予報業務許可を受けていたとしても、洪水予報は「特定予報業務」に該当するため、テレビ等で不特定多数向けに発表することは禁止されている。
防災情報の「シングルボイス」(単一の情報源からの一貫した情報提供)を重視する気象庁の方針に反する放送だった。
気象庁としては、洪水予報に関する法的な規制(気象業務法)に違反する形で情報がNHKから放送されたことを問題視した模様です。
この問題に関してNHKは特に声明を出していませんが、私としては、本件についてはNHKの肩を持ちたい気持ちもあります。
実際、リスクが高まっている際には、いち早く身を守るための行動を取る必要があります。気象庁からの公式の情報発信を待たずとも、一定の信頼性がある民間気象会社や独自の調査情報(例えば、天カメ映像や職員の取材)に基づいて、NHKが避難を呼びかけることは公共放送の理念にかなうものです。
ただ、NHKはそこまで思慮深く放送したとも思えないんですよね。だとしたら、「気象庁の方針には反しますが、このような根拠を持って避難を呼びかけます」と放送で正面切って言うとか、事後のニュースや特集で、災害が激甚化し予測困難になる中での避難情報の発信について問題提起していたはずなのです。
一連の顛末をみるに、NHKは「善かれ」と思って現場のノリで情報を出したと思われます。
今回、NHKの情報によってパニックなどは生じませんでしたが、敢えてやるなら気象庁含めて関係者と適切に合意形成したり、視聴者にも背景が伝わるようにするなどの「工夫」は必要です。
でなければ、NHK報道局が問題視して半ば「お蔵入り」となったドラマのエピソードが現実になるでしょう。
共同通信「靖国参拝誤報」NHKの関与が明らかに
共同通信が生稲晃子議員の靖国参拝についてフェイク情報を発信した件について、NHKの関与が疑われています。
NHKはニュースで「他社記者」と他人事ですが、実態は異なるようです。
こちらの記事内で紹介されている「共同通信の内部文書」によれば、以下のような体制で当日の取材が行われていたとのことです。
共同通信社が記者1人を靖国神社に配置し、そのうえで普段から「首相動静」取材などで協力関係にある時事通信社、NHKとタッグを組んだ。生稲議員が参拝したとされる午前10時~同10時半の時間帯は「到着殿」を時事通信社、「参集殿」を共同通信社、「拝殿」前をNHKという配置になっていた。それぞれの記者は1人ずつ。合計3人ですべての入り口を観察し、重要人物が参拝したり、突発的な出来事が起きたりしたら速報する体制を整えていた。
共同通信社の文書によると、現場にいた記者はLINEグループを作り、国会議員の出入りを確認するたび、LINEに入力する形だったという。
私たちディレクター(PD)が他社の人とグループLINEで取材情報を共有しあうなど、まず無いことなのですが(少なくとも私は1度も無い)、実は、記者は割とこういうことをしています。
受信料を財源に取材するNHK記者が、他社と情報を融通しあうことなどおかしいですし、情報管理上も懸念があると私は思いますが、これって本当に一般的に行われているんですよね。
記者はなぜか他社も含めて「同期」として深く繋がっていたりするもので、例えば遅刻したとかで大事な取材情報を取りそびれたりすると、他社の記者が「塩を送る」みたいなことはよくあるんです。
もちろん、NHK記者に限らず、新聞記者や週刊誌記者の間でも広く行われていることです(よほどのスクープでない限り)。
「取材源の秘匿」のおかげで表沙汰にはならないのですが、今回、共同通信の誤報でもって白日のもとに晒されることとなりました。
私がNHK記者の立場だったら、他社の記者に重要情報を委ねることなど怖くてできません。また、そんなことで貸し借りを作ってもリスクしかないでしょう(今はよくやってますが)。
どうせ、問い合わせてもNHKは「個別の取材過程についてはお答えしません」と突っぱねてくると思われますが、独自の取材網を維持できず、他社に依存している時点でもう崩壊が進んでいるのですよね。
せめて、NHKも当事者のひとりとして、共同通信の件を改めて報じて欲しいものです。共同原稿に頼りっきりなわけですし。
「歳末たすけあい」から伺えるNHK離れ
今年も恒例の「歳末たすけあい」の呼びかけをNHKが行っています。
こちらのサイトには過去の実績があるので確認してみたところ、少し興味深いことがわかりました。
2023年度分の「歳末たすけあい」の募金額が、4.4億円あまりと、直近10年で最低となっているのです。ちなみに、2023年度までの10年間は6億円前後で推移していたことがNHKサイトからはわかります。
しかし、ちょっと考えて欲しいのですが、もはや「歳末たすけあい」などNHKがやるべきことではないのですよね。
まず、NHKのような中間事業者が入ることにより、コストが増加することが無駄です。今はプラットフォームも充実していますから、NHKに払わず、支援団体に個人が直接払う方が合理的です。
また、この呼びかけのために掛かる人件費や、そのために割く放送も無駄です。他に取材して伝えるべきことは幾らでもある中、このような事にNHKがリソースを割くこと自体、「不正経理」のようなものです。
慈善事業を隠れ蓑にしていますが、公共放送の使命に照らした時、明らかに無駄です。一刻もはやく止めて頂きたいですね。
【メンバーシップ】秋の闘争をみて思ったこと
最後は、「秋の闘争」関連です。NHK職員の皆さん以外にはあまり関係ないと思いますが、正直、もの凄く大きな懸念を抱きました。
もし宜しければチップ(サポート)を頂けると幸いです。取材費などNHK健全化の為の取り組みに活用させて頂きます。