NHKニュースクリップ(2024年12月8日号)
韓国の政変に続き、シリアでもアサド政権が崩壊するなど世界情勢が混迷を極めています。本来、このような局面はNHKにとっては、「莫大なコストを払って海外取材ネットワークを維持していること」の正当性を主張できるチャンスでもあります。
放送ジャック事件でメディア総局のEP(でしたっけ?)へと横滑りした傍田前理事も、海外支局行脚に繰り出すくらい国際情勢に知見がおありだとしたら、名誉回復のまたとない機会になったはずです。
しかし、実際には第一報は世界のメディアに大きく遅れを取り、ちょろっと特設ニュースをやったくらい。再放送とフィラーのような番組を流していただけでした。
韓国の政変 なぜ第一報が出なかったのか?
日本と関係の深い隣国で戒厳令が出されたという大ニュースを受け、世界の放送局は直後から緊急の生放送を行っていました。
一方NHKはわずかに特設で概要を伝えたのみ。事態が起きた背景や、今後の推移、日本への影響などについて掘り下げた報道は皆無。有識者も苦言を呈していました。
普通に考えたら、貰い物の画や資料映像をループさせながら、アナウンサーが画解き(えとき)しつつ、現地記者が中継に繰り出し、記者デスクが舞い込んでくる情報を整理しながら伝え、さらに専門家への電話やリモートインタを挟むようなオーソドックスな緊急報道が行われるべき事案です。
放送が出なかった理由は幾つか考えられます。
まずは「働き方改革」の影響です。記者職場だけでなく、送出を担当する制作・技術も相当に「働き方改革」という名の「めんどくさい業務忌避」が進んでしまいましたので、深夜に放送を組むことが難しかったと思われます。しかし、こんな場面で顔出しの生中継のひとつも出来なかったら、何のために韓国に駐在しているのかわかりませんね。
次に「国際政治への無関心」が考えられます。無関心まで言うと、言い過ぎかもしれないと一瞬躊躇したのですが、当日のNHKの動きなどを探っていくと、残念ながらそう言わざるを得ない状況です。
編集主幹は緊急報道をやろうとしたが報道局長が消極的だったとか、逆に、編集主幹が「事態を見極め確かな報道を行う!」と言ったとか説が色々あって私も掴めませんが、韓国の政変について常日頃からウオッチして、長丁場を乗り切れるような人材が当日いなかったことは間違いなさそうです。
今回の件は、有識者だけでなく、ニュースに敏感なXユーザーも呆れていました。
日本でも同等の事態が起きないとは言い切れません。そんな時も、「事態を見極めるために慎重に取材を重ねていた」とNHKは主張するのでしょうか?
速報性と独自取材を捨てたら、もはやTVニュースの存在意義は失くなってしまいます。翌日以降は、過剰なまでに速報や特設を入れていますが、それでは信頼は回復できません。
九州・広島などで画質低下の「放送事故」 シリア関連特設ニュースの影響か?
緊急報道への対応力低下を窺わせる事案が、12/8にもうひとつ発生しました。シリア関連の特設ニュースを伝えた後、九州や広島などで総合テレビの長時間に渡る画質低下が発生したのです。
少し専門的な話になりますが、事案が起きた地域では特設ニュースの前に「マルチ編成」が行われていました。これは、地上デジタル放送の帯域を分割し、画質を落として2つの番組を放送するものです。
オリンピックの際にも行われましたが、SD画質(縦480ピクセル相当)になるため、通常のテレビで見たら「眠たい」映像になってしまいます。QRコードなどのテロップにも読み取りに支障が出ることがあります。
こうした事案は、起きたとしても早期に回復するものです。が、今回は違いました。2時間余りが経過した「ニュース7」の際にも回復せず、そのままだったのです。
結果的には、23時前までこの「放送事故」は続いたとのことです。
詳しい人に聞くと、このような事案は過去にもあったらしいとのことでした。ただ、私は見たことがなかったので驚きました。
普通に考えて、副調整室のモニターでも居室のテレビでも画質低下はすぐにわかるはずなんですよね。また、そこまで異常なシチュエーションでもないため、地デジ化した時点から想定はできていたことだと思います。
にも関わらず、今回のような長時間の事故が起きた背景には、運行技術の低下もありそうです。技術職場もローカルの運行や送出には消極的な職員が多く、委託が進んでいますからね。
電気・ガス・鉄道などのインフラと同じく、NHKも情報インフラを自称するのだとしたら、正しく運行することは最も基本的なミッションです。
なぜこのような事故が起きたのか?NHKは詳しく調べた上で、経緯や再発防止策に加えて、当該地域の視聴者への措置をどうするのかについても伝える責任があるでしょう。
PFASで誤情報発信 NHKによる情報汚染が深刻に
先日のPFAS問題を扱ったNHKスペシャルでも信じられない誤りがありました。
まるで水道水の影響で流産したと断定するかのようなコメント、不安を過剰に煽る画作りや音響効果など、見るからに危険そうな番組だと思っていたところ、とんでもない「誤情報」を発信していたことがわかりました。
NHKが公開したサイト上のデータの紐付けがあべこべで、誤情報を拡散していたのです。
現在は修正されたとのことですが、私の取材によると、全国の自治体からクレームが多数寄せられて初めて気付いたそうです。データの紐付けが不適切など、あまりにも初歩的な誤りで、伝えている私の方が恥ずかしくなります。
さらに、本放送でも問題があったようで、再放送では「12月1日の本放送の際表示の一部に誤りがあり 修正をしています」というテロップがマップのCGのカットに挿入されていました。
一体何がどう間違っていたのか?私が本放送と再放送の同一カットを重ね合わせてみたところ、大分県の国東が再放送で「黄色」になっていたことがわかりました。
他にも微妙な修正は加えられていそうですが、解像度の問題もあってよくわかりませんでした。
健康にも関わる重大情報を誤った形で伝えたわけですから、何がどう間違っていて、どう修正したのかを示す責任がNHKにはあると思います。これで「情報的健康(インフォメーションヘルス)」など珍奇な概念をぶちあげるNHKはどうかしています。
ちなみに、当該サイトは修正履歴を伝えるどころか、「国の調査結果をもとにNHKが作成した『水道水PFAS検出状況マップ』であなたが住む地域の水道水の状況を確認してみてはいかがでしょうか?」と、極めて軽いトーンにで視聴者を挑発しています。
確認したから何ができるというものでもないですし、こんなスタンスで国民の生命・財産に関わる情報発信を行っていることが恐ろしいです。
総務相も激おこ? 子会社の配当出し渋りが明らかに
NHK職員の皆さんはピンとこないかもしれませんが、ひとつ衝撃的なニュースがありました。
要は、「NHKは株主としての権利を適切に行使して、子会社が溜め込んでいる利益を吐き出させて、視聴者に還元しろ」と総務相に指摘されているのです。
では、実際、どのくらいの利益が溜め込まれているのでしょうか?
ざっと調べても、利益剰余金の総額だけで1,000億円に達します。一部の報道でもあったように、子会社に溜め込まれた「資産」を全て合計すると1兆円近いと見られます。
また、グループ会社の中には、やたら儲かっているところもあれば、赤字に転落しているところもあります。NHKが株主としての責任を果たしていないことは明白です。
出版や文化センターあたりは、もう明らかに時代遅れです。さっさと清算する方が良いと思いますね。
一方、二元体制と反する子会社設立の動き
そんな中で、妙な子会社設立のニュースも入ってきました。
要は、放送ネットワークをNHKと民放で折半して共同で維持しましょうって話ですね。一見、合理的かつ、NHKにも民放にも旨みがある話のように思えます。
私が懸念したのは、NHKのコメントです。
私には、二元体制とは矛盾するように思えるんですよね。
中継局の共同保守・共同利用を進めると、例えば災害や戦争による攻撃で中継局が破壊されたら、NHKも民放も両方ダメになってしまいます。既に、共同利用している設備は多いわけですが、これが加速すると、有事の際に共倒れのリスクも高まるのではないでしょうか?
より分散させて、何かしらの放送は届くようにする方が民主主義の維持・発展には繋がるのではないかと思います。
また、NHKと民放が今以上に密接な関係になることで、相互批判が今以上に乏しくなることも考えられます。
NHKは経営計画でも地域の放送事業者との「共存共栄」を謳っていますが、競争原理が働かなくなったら終わりでしょう。
改めて放送が終わりゆくオールドメディアなのだと実感したニュースでした。
「どーも、NHK」のYouTube配信は何のため?
NHKの皆さんの代わりに宣伝します。「どーも、NHK」のYouTube配信が人知れず始まっていたようです。
目がチカチカするような下品なサムネイルに加えて、「これを見ればNHKのことがまるわかり」という景品表示法の理念とは正反対の内容が概要欄に記述されていて、クラっとしました。
NHKはXだけでなくYouTubeも偽情報が溢れると指摘しています。にも関わらず、海外の事業者が運営するYouTubeというプラットフォームに乗っかるのは、どういう判断なのでしょうか?
【メンバーシップ】東京と地方の分断が招くもの
最近、NHKの情報発信で、今まで御法度だった「地方」という単語が頻繁に使われています。
表記が微妙に揺れていて、Xの投稿文には「地方」とあるのに、開くと「地元」となっていたりしますが、かつては「地方」自体が差別的な表現であるとして使用を控える対象となっていました。
そんなわけで、私もあえて「東京と地方」と表記しましたが、NHKにおいて今恐らく進んでいる分断について考察してみます。
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