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NHKニュースクリップ(2025年2月16日号)

今週は、当初より私も内容の真実性に対して懸念を表明していた「トイレ」問題に大きな動きがありました。

主に私は、構造とNHK内部の職員・スタッフの行動パターンから類推したとき、人目に付かないトイレは放送センター内に存在し得ないことと、もし可能だったとしても、トイレ周辺を封鎖したり(これ自体は旧ジャニーズの収録などではよくあること)、役員フロアのトイレを使うなどの特例的な協力をNHK職員が行わない限り成立しないことを指摘してきました。

実は、NHKがニュースで報じた時点でも、報道局内から「出稿はしたが現場となったトイレが特定できていない」、「制作フロアを知らない記者が担当していて裏付け取材が不十分」、「手柄を焦ってデスクが暴走している」といった指摘が上がっていました(私はメンバーシップで伝えてきました)。

これらの情報を私も各社に伝えてきましたが、ようやく、「事実上の“捏造”報道だった」とNHKが認めたのです。

ただし、この問題、NHKの対応は往生際が悪く、「被害があった信憑性は変わらない」などと強硬姿勢を崩していません。

当時のニュース担当者も「言い訳」を重ねていると聞きます。

石鹸の問題でもそうでしたが、NHKが社会と向き合っていないことを端的に示しています。

真実はどうだったのか?なぜ、こんな虚偽を報道したのか?責任者はどんな顔をしてニュースを出したのか?すでに起きている被害や、今後想定される損害についてどう対応するのか?など、詳しく検証して伝えるのが「知る権利」に応える公共放送の使命のはずです。

それが、「信憑性は変わらない」とか、「(当該石鹸の)被害は確認されていない」とか、汚れた情報を発信し、社会に有害な影響を与えたにも関わらず自己弁護に終始しているのは異常です。

フジテレビ問題の影に隠れていますが、旧ジャニーズのファンの力は大きいので、確実にハレーションするでしょう。何より、NHK自身もその力を借りて、若者リーチだけでなく、BS・BS4K・オンデマンドの契約を積み重ねてきた訳ですから、よく理解できているはずです。

「トイレ」問題 NHKが取材協力者を「訴訟するぞ」脅したか?新潮報道

実は、会長会見でも触れられていて疑問に思っていたのですが、新潮から衝撃的な報道が出ました。

記事内には次のようにあります。

「被告男性がスマイル社による提訴の可能性を耳にしてNHK職員に伝えたところ、“証言が事実でなかったと認めた場合、NHKはあなたに損害賠償請求を行うことも検討している”と脅しめいた話をされた。NHK内部でスマイル社の訴訟対応を相談し、中間管理職の立場にある者が判断したといいます。これらは被告男性の代理人弁護士が被告本人から聞き取った話です」

当該記事より

この問題、NHKは会長会見でも、担当者(恐らく新潮の取材に応えたのと同じ広報局系)が次のように否定してはいます。

(記者)SMILE一UP.が出した訴状で、NHKの職員から、今回証言を行った男性に対して、証言が事実と異なると認めた場合は、NHKが被告の男性に対して損害賠償請求を行うことも検討していると伝えたというくだりがあったが、NHKとしては把握しているか。

(担当者)
NHKが男性を訴えることを検討したとか、あるいは検討しているというような事実はありませんし、そのような内容を代理人の方に伝えたということもありません。

(記者)現場レベルのやり取りでも、そういう話は出なかったということは調査済みだと理解していいか。

(担当者)
現場にも確認をした上で、男性を訴えることを検討したとか、あるいは検討している事実はないということです。

(記者)検討している事実がないというのは、そういう文言を伝えた事実もないと理解してもいいか。

(担当者)
現場で話すいろいろなやり取りの中で、先方がどのように受け取ったかはこちらも分かりませんが、NHKが組織として検討したとか検討しているということはありません

https://www.nhk.or.jp/info/pr/toptalk/assets/pdf/kaichou/k2502.pdf

ただ、このやりとり、ちょっと奇妙ではあるんですよね。

あくまで新潮の質問や、会長会見では「NHKが組織として検討したことは無い」と述べている一方、ニュースデスク・記者、番組のCP・PDのレベルで「脅し」を掛けた可能性については、必ずしも否定したとは言えないのです。

今回の事案に関わっている面々の顔ぶれと性格も想像するに、私としては「NHKの取材に応えた内容が虚偽だった場合、法的措置などもありうる」くらいのことは言っていてもおかしくはないと思うんですよね。追い詰められると何かと「訴訟」を持ち出すのが好きな人物がいますから。

しかし、仮にその内容に対して疑義があるとしても、取材協力者を脅すなど言語道断です。そんなことをしたら、誰も報道機関の取材に協力しなくなるからです。

2001年説にも疑問の声

そもそも、どんな証言やインタだろうと、その真実性を検証する責任はNHKにあります。大体、自局で起きたことなんだから、まずは男子トイレをひとつひとつ検証すれば良いんですよ(たとえ女性デスクだろうと)。

その上で、関係者の動きを歴史番組のように時系列で整理していけば、事案に疑いがあることはすぐにわかったはずです(普通に考えたら、そういう検証カットも撮影するでしょう)。

今回の件は、旧ジャニーズとNHKの蜜月からまずはハレーションしました。西館7Fのリハ室占有などは、リソースである以上、NHKの中枢である編成局計画管理部も関わっています。

一方、旧ジャニーズ斬りにシフトチェンジしてからは、その蜜月さの反動なのか、ダメージコントロールを一切考えていないとしか思えない、暴走状態に突入していました。

そのため、どこかで「やらかす」という懸念は協会内にもあった訳ですが、最悪の形で表面化しました。

訂正・事後対応は不十分

今回の「トイレ」の件は、自局を舞台とする“捏造報道”であったにも関わらず、訂正も極めて不十分です。何なら、かなり無理筋の主張で「2001年だった可能性がある」と意地を張っていますが、これも有志の検証からかなり疑わしいことが示されつつあります。

一方会長は「丁寧にご説明、お伝えをしたと思っています」と会見で述べていますが、例えば、一連の「トイレ」の報道のリーチ数に対して、「信憑性は変わらない」と伝えた「言い訳ニュース」は同じくらいリーチしていると言えるのでしょうか?

さらに、報道によれば、「NHK内で男性が性加害を受けた」ことは事実だとNHKは判断しているようです。

だとすれば、誰がその加害者なのか?いくら過去の事とはいえ、職員が加害者であった可能性も含めてNHK自身は徹底調査する必要があるでしょう。

2025年度 編成計画から読み取れる「迷走」

新年度の時刻表(NHK用語で、いわゆる番組表のこと)が発表されましたが、その中でひとつ驚きの変化がありました。

11時台の「ひるまえ」が無くなったのです。

これによって、対応する要員を減らし、出演する契約キャスター・リポーターの人件費の削減も可能とはなりますが、一方で生放送対応力が更に減ることが懸念されます。

「ひるおび」のように芸能・報道ネタをやるわけでもないので視聴率は絶望的でしたが、ここで生放送を構えておくことで、突発の緊急ニュースなどに柔軟に対応することが可能だったのです。

恐らく、これによって緊急報道への対応力は更に減ります。民放各局やウェザーニュースが第一報を伝えている中、「どーもNHK」の再放送が流れているような状態も起きうるでしょう。

そんな状態が1秒でも起きたらNHKの信用は更に損なわれます。鼻くそをほじっていても良いので、昼前の時間はアナウンサーやキャスターと技術をスタジオに貼り付けておいた方が無難だと思います。

「ガッテン」の失敗の二の舞か?「サラメシ」終了

今回の編成計画では、過去の失敗を繰り返そうとしていることも伺えます。「サラメシ」を打ち切るというのです。

番組の良し悪しは別にして、「サラメシ」は恐らく名前の認知度がトップクラスに高い番組です。長期間に渡って積み上げてきた認知資産があります。中井貴一の存在感は強いですが、あくまで主役は市井の人たちである点が、NHK的と言えます(制作はテレビマンユニオンとはいえ)。

一方、後番組はバナナマン日村に乗っかったものです。NHK的な認知や、番組を通じたNHKの好意度醸成の効果は非常に薄いでしょう。

また、「サラメシ」には番組を起点とする独自のエコシステムが存在していました。

何より、取り上げられた企業の受信契約促進(営業対策)には、少なからず影響を持ってもいたでしょう。この点では、ビジネス的にも優れたコンテンツだったと言えます。

後番組はあくまで若者をターゲットとした旅番組とのことですが、「サラメシ」並みの認知を形成できるのにどれほど掛かるでしょうか?「ガッテン」打ち切り後の「トリセツショー」の伸び悩みを見ても分かるように、容易なことではありません。

普通なら、「サラメシ」を少しずつリニューアルして、子供や学校に寄せていく方が経営目標へのコミットという点では合理的です。

コスト的にも、わざわざタレントを連れて専用のバスをチャーターしてロケを行う方が明らかに高く付きますし、正直、センスの無い経営判断だなと思いました。

「ワルイコ」の打ち切りは妥当か

私は「ワルイコ」は見たことが無いのですが、間接的とはいえ、中居氏の問題やいまだに燻る旧ジャニーズとの関係性を考慮すると、こちらは止むを得ないかなという印象です。

このPostの真偽はさておき、NHKが主導権を握り切れていないとすると、トラブルにも繋がりかねません。故に、「打ち切り」は賢明かと思います。

人事に不満?アナがSNSで公式「匂わせ」

他にもキャスター情報とか色々ありますが、ひとつ気がかりなSNS投稿を見つけました。

田中アナが番組を離れる(らしい)こと、しか「PDF」で発表されていないのに、個人SNSでNHKのウォーターマークをつけて明言するのは奇妙です。

上層部は些細なことだと思っているのかもしれませんが、新年度の未発表の編成情報の「匂わせ」となると、重大な懸念があると思います。

またも大失態 AI字幕で「中国の視座」を伝える

放送ジャック問題が全く決着しない状況にあって、信じられない過ちをNHKがまた犯しました。

中身を見ると本当にお粗末です。GoogleのAI字幕をそのまま使っていて、「中国の視座」を伝えながら、後から気付いたというのです。

さらに、記事には次のようにあります。

NHKは記録が残っている過去1週間分の字幕を調査する方針だが、すでに同様の誤りが確認されているという。

当該記事より

AIは学習に用いられた教師データや、チューニングによってバイアスが掛かるものです。AIの解答に慣れ親しむ中で、自然と政治的思想などにバイアスが掛けられていってしまう懸念は研究者も指摘するところです。

しかし、今回で言えば、Custom InstructionなどでNG表記や表現を定めておけば防げた程度のことです。

NHKは、あたかもGoogleが悪いかのような言いぶりですが、AIに関してのごく基礎的な理解が欠けている上に、運用にあたってのチェック体制も不十分だったことが今回の件で露呈しました。

これで分かりましたよね?コエツ氏の問題とかではなく、国際放送局そのものが狂っているということが。

IBM訴訟問題に欠けている論点

NHKがIBMに起こした訴訟が、IT界隈ではかなり注目を集めています。

この問題、今回は訴訟という形になっていますが、私としては、そもそもNHKの責任が重大だったと思います。

というのも、歴代の担当者が将来のことを一切考えずに「技術的負債」を蓄積し続けたからこそ、今回の問題が起きたからです。

技術的負債とは、平たく言えば「ソフトウェア開発プロジェクトにおいて、その場のしのぎの改修を重ねることで、将来的に莫大なコストを要する大規模修正や改善が必要になる問題」のことです。

システム開発に少しでも携わっているか、携わろうと思ったら絶対に学習するテーマです。

多分、NHKの担当者は誰もこんなことを考えていませんが、最初に実装する時点で将来に渡っての変更の余地を考慮しておくべきでしたし、そうでなくても、修正が嵩んできた段階で抜本的改修を事前に行うべきでした。

誰がどんな判断をした結果として、IBMが主張するような「仕様書に記載ない仕様が満載」という状況が生まれたのか?

ここを検証し、遡ってでも担当者を処分しない限り、また同じことを何度でも繰り返します。

今回は、訴訟金額から見ても、プロジェクトの遅滞によって引き起こされた損害額は数億では済みません。それだけの不正経理をしたに等しいのです。ま、「今の機器を新しい機器にすることで対応できる」のだとしたら、開発自体が必要だったのか?という議論もありますが…

いずれにせよ、NHKのバックオフィスやシステム関連は全くガバナンスがきいていません。外から目立ちやすい番組やニュースという商品と違うから、適当でも良いという考えが内部にあるのでしょうか?

数千円や数万円のタクシー券で処分される職員がいる一方、こんな大きな損失を起こして誰もお咎め無しなどあり得ません。厳しい処分が必要です。

朝ドラでも「フェイク情報」医療チェックの不十分さが露見

朝ドラで検証不十分なシーンが放送されたことが問題になっています。

膵臓の腫瘍を管理栄養士がどうやったら発見できるのか、私には理解できません。

こうしたディテールを粗末に扱うと、途端にドラマ自体が陳腐に見えてくるものですが、もはやそうした感覚が現場に無いんでしょうかね?

あれだけ大人数が収録に携わっていながら、誰も疑問を呈さなかった時点で非常に残念ですし、何より、朝ドラというそれなりに影響力がある放送の内容について、NHK自身が批判的な検証をしていないことも問題です。

【メンバーシップ】NHKプラスに新たな動きか?

ピュアに職員向けとは言えませんが、ネット配信必須業務化を前に、「NHKプラス」をめぐって面白い動きが伝わってきました。

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