![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/165934111/rectangle_large_type_2_203692fc8c1482bcb5f52ea4ac191543.png?width=1200)
Cinderella Express
―――シンデレラ・エクスプレス。
日曜夜の東海道新幹線・下り新大阪行き最終列車。離れて暮らす恋人たちが週末を東京で過ごし、また離れ離れになる。まるでシンデレラの魔法が解ける様に例えたところからこの呼び名がついた。
年の瀬も迫ったある日曜日の夜、東京・丸の内。
??「ヘクシッ!寒っ……」
??『マフラーとか手袋すりゃいいのに。』
??「そうしたら手繋いだ時に暖かくないじゃん…」
○○『かわいいところあんじゃん。』
イルミネーションに照らされた並木道を歩く1組のカップル…堂上○○と岡本姫奈、今回の主役2人である。
岡本「あ!ねえ、あれ飲みたい!!」
○○『アレって…ホットワイン?』
岡本「うん。」
○○『姫奈お前、お酒強くないでしょ?』
岡本「…そうだっけ??」
“ピンッ”
岡本「いたっ!」
○○『そうだっけじゃないよ、ハタチになった当日にケルベロストリオでさんざん飲んで大失敗したのはどこの誰ですか??』
岡本「……私です。」
○○『そうですよね?そういうことでお酒は我慢してください。』
岡本「ケチ!」
○○『ケチで結構。それに明日も収録あるんでしょ?明日に響かれても困るから。』
岡本「……」
○○『……姫奈さーん?』
岡本「…( ˘ ˘)フン」
ホットワインを飲ませてもらえず、完全に拗ねてしまった姫奈。何とかしなければと思った○○、すると…
○○『そうだ、あそこで写真撮らない?』
岡本「…撮りたい!行こっ!!」
○○『ちょ、急に動くな!』
フォトスポットを見つけ、写真を撮ろうと提案する。姫奈もそれを見て顔をほころばせ、彼の手を引いてそちらへ向かう。
“カシャ”
○○『さすがに自撮り上手いね。』
岡本「アイドル2年やれば○○も上手くなるよ。」
○○『何でアイドルやる前提なんだよ。』
岡本「www」
○○『あ、お酒はダメだけどこれだったらいいんじゃない?』
岡本「ホットチョコレート?美味しそう!」
○○『買う?』
岡本「うん。」
キッチンカーで売られていたホットチョコレートを買い、姫奈の元へ戻る。
○○『はい。』
岡本「ありがと。」
○○『…あったけえ。』
岡本「おいしい…」
○○「こういう穏やかなのもいいね。」
岡本「そうだね。」
ふと、○○が腕時計を見る。
○○『…もうこんな時間か。』
岡本「そっか、新幹線の時間あるもんね。」
時計は20時55分を表示していた。○○が乗る新幹線は21時24分発、もうじき東京駅へ向かう必要がある。
○○『……』
岡本「……」
行幸通りを歩いて東京駅へ向かうが…その道中、2人はずっと無言だった。
やがて改札を入り、新幹線ホームに上がる。彼の乗る新幹線…のぞみ263号、“シンデレラ・エクスプレス”の発車までまだ少し時間があるので、待合室に入って暖をとることに。
岡本「ねえ…」
○○『なに?』
岡本「○○は…寂しくないの?」
○○『??』
岡本「私は…○○を見送るのが毎回寂しい。見送って家に帰った後、いつも泣きそうになるの我慢してる。」
○○『……』
岡本「なかなか会えないのは分かるけど…ほんとはもっと会いたいしそばにいたい。離れ離れはやっぱり寂しいし、会えないのが怖い…」
か細い声で話す姫奈。その声はだんだんと涙まじりになっていった。
○○『オレだってちょっとは寂しいよ。でも…オレは姫奈のこと、信じてるから。離れ離れになっても、会うたびにオレの知ってる姫奈でいてくれてる、だから…姫奈も、オレのことを信じてほしい。』
岡本「○○…」
○○『…時間だ。』
姫奈の手を引いて待合室を出る。
○○『じゃあ、そろそろ行くね。』
岡本「うん、着いたら連絡してね。」
○○『分かった。なんか…』
岡本「??」
○○『姫奈、さっきより表情明るいね。』
岡本「そうかな?」
○○『まあ、そっちの方がいいよ。』
岡本「でも…」
○○『なに?』
岡本「最後に、ぎゅってしてほしい…やっぱりまだちょっと不安…」
○○『わかった。』
そう言って姫奈を抱きしめる○○。
○○『安心した?』
岡本「うん。もう大丈夫。」
○○『じゃあ、行くね。』
岡本「気を付けてね。」
○○『またね。』
岡本「うん、またね。」
のぞみ263号の扉が閉まり、列車が一気に加速していく。あっという間に○○の姿は見えなくなってしまった。しかし、姫奈の心には一点の曇りもなかった。
岡本「(私…もう怖くない。○○のこと、信じてるからね。)」
走り去るテールランプを見つめながら、姫奈は優しく微笑んでいた。
シンデレラ 今 魔法が消えるように 列車出てくけど
ガラスの靴 片方 彼が持っているの
最後までご覧いただきありがとうございました。暗黒龍は二度死ぬです。今回はたーつ(@ta_ttu1936)さんの企画作品という形で初の乃木メン、5期生・ナッツでの作品となりました。実際問題、今作のようなイメージをナッツに抱いていたか、と聞かれたら疑問符が付きますがあえて“しっとり”した?雰囲気のもいかがでございましょうか、ということで自分の中で押し切って書いてみました。
さて、タイトルの”Cinderella Express”ですがもちろん題材は松任谷由実さんの名曲「シンデレラ・エクスプレス」です。この曲は1985年に発売されたアルバム『DA・DI・DA』に収録された曲で遠距離恋愛をテーマとして作られた曲です。翌1986年にTBSで放送された『シンデレラ・エクスプレス -48時間の恋人たち-』の主題歌として作られ、1987年にJR東海のキャンペーン「シンデレラ・エクスプレス」テーマソングとして起用されました。
このシンデレラ・エクスプレスが好評だったことからJR東海は「エクスプレス・シリーズ」と呼ばれるキャンペーンシリーズを展開、かの有名な「クリスマス・エクスプレス」もこの一環として制作されました。
…このままだと本編よりあとがきの方が長くなりそうな気がしたのでここまでにして、最後にこのような機会を設けてくれたたーつさん、本当にありがとうございました。そして、この作品をもって2024年のnoteは打ち上げとなります。2025年はもう少し作品を出せたらと思っていますのでどうぞよろしくお願いします。
それでは皆様、Merry X'mas。そしてちょっと早いですけど、よいお年をお迎えください。お相手は暗黒龍は二度死ぬでした。ごきげんよう、さようなら!