ついやってしまう行動や思考の意味

以前、就労移行支援に通っていた時、勿体無いなぁと思っていたことがある。

一応、はじめに書いておこうと思うが、これはあくまで私個人の感想だ。
当人には言うに言えずモヤモヤしていたことなので、ここで吐き出すことで、この気持ちには成仏していただこうと思う。

私が通っていた就労移行支援は、自己分析に特化していた。
グループワークを主体として、毎日のように自己分析を行い、参加者同士でシェアしてフィードバックを貰う。

そこでは、毎日行った自己分析の集大成として、
自分の特徴をまとめたり、今後はどのように生きていくのかを書いて自分専用の資料を作る。
それだけで終わらず、その資料を職員と一緒にさらに掘り下げる、という工程を2回行う。
なので、生きる指針となるような自分専用の資料が出来上がる。
それを元に就活をしたり、自身の私生活を改善していくので、その後の行動でのミスマッチが少なくなる。
これがこの就労移行支援の良いところだと思う。

ある日、とある通所者のおじさんに資料を見て欲しいと言われて渡されたことがあった。
今回ちょっと吐き出したいのは、その資料を読んでいて、惜しいと思ったことだ。

おじさんがダウンしてしまったのは、人間関係に失敗したことに起因する。
相手に踏み込みすぎてしまうあまり、関係をこじらせてしまうことが多かったという。
なので、今後は踏み込まないようにして生きるのだそうだ。
その後のページでは、どのようにして自分を抑え込むかという話が書かれていたが、力技のように感じて、うーん、と唸ってしまった。

私は、ついやってしまう行動や思考の裏には、相応の理由が隠れている場合もあると思っていて、いつもその可能性も考えるようにしている。
おじさんの話で言えば、人に踏み込みすぎてしまうことに、何かおじさんなりの意味があるかもしれない、ということだ。
そうだとすると、それを抑え込むということは、少なからず存在していた意味も失ってしまうことになるのではなかろうか。

言いたいことが漠然としてしまうので、私の経験を例にもう少し書いておきたい。
私は、会社へ隷属的に尽くそうとするところがあって、自分を大事にせず、結果、いつも心身ともに無理をしていた。
もちろん、最終的には自分を大事にする、という方向性の対策をとることになったわけだが、話はそう単純じゃない。
なぜなら、会社へ隷属的に尽くすこと自体に、私にとっての意味はあったからだ。

詳細は省くが、いつも自分が消えてしまいそうな空虚な感じがして、幸福感が低かった。
しかし、この空虚さは、会社に貢献できたその一時だけ癒された。
つまり、私はこの空虚さを一時でも解消するために、自分を捨ててでも会社に隷属することで対処してきた、というわけなのだ。
なので、隷属的に生きてきたことは問題ではあるのだが、空虚さの解消という点では役に立っていて、その意味で私にとってはメリットがあったのだ。
そのおかげで、苦しみながらも社会生活を送れてはいた。

もちろん、スマートな解決方法ではなかったと思う。
空虚さの問題と会社へ隷属的になってしまう問題は切り分けられるので、自己理解してからは分けて対処するようにしたところ、今ではスッキリ解消している。
空虚さがなくなったので、会社へ隷属的に尽くしたいという気持ちが、そもそもない。
なので、自分の気持ちを抑え込もうということもしなくて良い。

この時、もし、隷属的に尽くさないよう、行動だけ抑え込むような対策をとっていたらどうか。
私の空虚さは解消されず、それどころか気持ちを抑圧するストレスも加わってしまい、強いストレスにさらされ続けて生きていくことになる。
下手をすると、またダウンしかねない。

同じように、他人に踏み込んでしまうことに、何かおじさんなりの意味があったのではなかろうか。
そこを考えず、踏み込むことだけを止めてしまったら、そのエネルギーはどこに向かってしまうのだろう。
見立てが外れているかもしれないが、そういった可能性が検証されていないあたりが気になって仕方ない。
もし、そこまで深掘りして分析していたら、きっと根本的に対策を打つことができ、自分を抑圧するような対策にはならなかったんじゃないかなと思ってしまう。
だから、惜しいなぁ、と思ったのだ。

ただ、当時は、本人が納得しているなら良いかと、特にこのことは伝えないことにした。
行動自体に意味がないことだってあるかもしれない。突発的な衝動であるなら、力づくで止めるしかないかもしれない。

しかし、私が就労移行支援を卒業してから2年くらい経った頃、人づてに、復帰後におじさんがまた休職してしまった、という話を聞いた。
理由は分からないが、きっとどこかしらで無理があったのだろう。
どうか、おじさんも、おじさんなりの最適解を見つけて欲しいと思う。


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