atgt2020gwのGMふりかえり② 16匁(積分謎)の制作談
こんにちは、KaDiです。前回に続き、今回はatgt2020gwのGMとして作問した問題のひとつの16匁(積分問題)の制作談を書こうと思います。そのため、この記事には16匁に関するネタバレが含まれます。下のリンクから問題と解説を読んでおくことをおすすめします。
あと一番最初に貼った画像がツイートするときに見えるっぽいので問題画像も貼っときます。
16匁ができるまで
この謎は、
①左上の座標特定
②左上のグラフ特定
③7つの積分の表す領域と積分範囲特定
④積分結果(面積)を左下の表で変換
⑤格子点と文字からセンター試験で変換
⑥現地(what3words)特定
と画像1枚にしては結構なステップ数がありますが、一番最初に決まったのは⑤のセンター試験を利用した変換です(以降センター暗号と呼びます)。GM内では最初制作班に分かれる前にみんなで謎にできそうなもの、謎にしたいものを出しあう期間がありました。ちょうどその時期に僕は受験後の部屋の片付けをして、その時にふとセンター試験のマークシートが目に入り、マークシートの中でも特徴的な数学ⅡBのマークシートで何かできないかと提案しました。これをうりよしきばさんが拾い、センター試験の出題年度・大問番号・答えの数字/文字の3つから解答場所(「ア」〜「ホ」)1つを導く暗号を考えてくれました。これがそのまま16匁のセンター暗号になってます。
その後制作班に分かれ、Cubeさん、現地担当のこだまんさんとセンター暗号をひとつのステップにした謎を作ることになりました。
そしてCubeさんがセンター試験を使うなら数学はどうかと提案してきたのが「積分」です。一番最初の案はこれ↓
・格子点のある座標平面上にいくつかの二次関数と一次関数のグラフがあり、別にいくつかの積分式がある。
→グラフの式を導出し、積分式を2つのグラフの式に分離させる。
→該当する領域を塗ると何らかの形になる。
なにこれ面白そう。二次関数の積分なら数学ⅡBの範囲でちょうどいいし数学の全体戦謎は作るのも楽しそうだな・・・
ということでこの方針でいくことになりました。
この時に領域の内部の格子点を1つだけにしてx座標、y座標で年度と大問番号を示すのを思いつき、これも採用。
その後x座標を西暦の下2桁にする案がでたり、現地を埼玉県秩父付近で「ア」〜「ホ」の清音で表せるところにしたいと決まったりと、早いうちに全体の方針がほぼ固まりました。かなり余裕だな・・・
ひとまずできる作業として、ネットで解答が確認できる2001年度以降のセンター数学ⅡB20年分の答えのうち、各大問で1回だけ出てくる記号をまとめることに。また、メインである積分の分割が積分範囲があることで簡単にできることや、答えの情報(-,0~9,a,b,c,d)をいい感じに入れられないことに悩みましたが、前者はx軸とy軸を取り除くこと、後者は領域の面積を何らかの方法で数字/文字に変換することで解決しました。
そして現地もwhat3wordsを使うことになって制約がゆるくなり、「北朝霞駅」が現地にしやすい場所もあってちょうど良さそうということになりました。その後現地ヒントを抽象的な図にしてはどうかというCubeさんの意見をもとに、こだまんさんが国旗っぽい現地ヒントを作りました(これめっちゃ好きです)。
この時点で4月18日、設定された作問期限まであと2日です・・・ん?
細かいことが何も決まってない!
全然余裕じゃなかった。GMスプシの進捗欄を見ても遅れてる。やばい。
この日の夜にCubeさんが「キタアサカエキ」を導く座標のうちちょうどいいのを選んでくれたのですぐに左上のグラフの制作にとりかかりました。ちなみにグラフを作る際の制約はこんな感じ↓
・二次関数と一次関数のグラフのみで作る。
・すべてのグラフの式を解く側が導けるようにする(=格子点を多く通る、係数を簡単な有理数にする)。
・1本の積分式で面積を出せる7つの領域があり、その内部には格子点をちょうど1つ含む。その格子点は、Cubeさんが選んだ特定の7つの点である。
・逆にその他のどんな囲まれた領域も、内部の格子点の数がちょうど1個であってはならない(このときは内部の格子点が1つの場所が7つであることも導線にしていたため)。
・上記7つの領域の面積は簡単な有理数であり、すべて異なる値である。
制約が重すぎる・・・
特定の点だけを領域内部に含むように格子点を通るグラフを書いて、2次方程式を解いて交点を出して、1/6公式で面積を出してみて、他の点もうまく囲めるか確かめて・・・という作業を何度も繰り返しました。
↑これが
↑こうなって
↑こう
なんとか完成。あとはこれを西暦の下2桁から平成に平行移動させて領域の面積を出す積分の式を作って、画像は座標軸を外して・・・
できた!具体的なところが決まったからあとはこれらを画像化すれば完成・・・
と思っていたらここでCubeさんから「Y座標の確定ってどうやる想定でしたっけ」というメッセージが。
盲点でした。2つのグラフの式の差をまとめてしまったためにグラフのy座標の特定が不可能になっていました。この時点ですでに制作期限を過ぎていて、y軸を書くとx座標も特定できるためやりたくなく、また、面積を数字/文字に変える方法も未だ面白いのが思いついてなくてピンチでしたが、ここで深夜テンションが発動、Cubeさんとの話し合いの末、とても良いアイデアが出ました。
それが、「7つの式の積分範囲をすべて隠すかわりに、他にもう一つ、分割されたグラフの式でできた、積分範囲が書かれた積分を例示として書く」というもの。これにより、
・座標をx軸y軸両方隠せる。
・積分範囲から領域が特定できない(1/6公式を使う方法は防げないけど)。
・例示から座標特定、グラフ特定、積分の示す領域と積分範囲特定の流れが強くなる。
と今まで微妙だった部分が一気に良くなりました。
そして面積を文字に変える方法についても、「分母分子の組み合わせで決める」というのを思いつき、ここに「-,0~9,a,b,c,d」全てを入れることで、ひらめきステップを一つ増やせ、センターⅡBであるという導線も上手くつけられました。
さらにCubeさんから、上の図を直線の傾きで表す、フォントと背景の色をセンター試験に寄せる、図のグラフの範囲を2~32にする、など導線と完成度を大幅に強化するアイデアが出て一気に進捗が生まれました。そのままデバッグ担当のあーくさんにデバッグもしてもらうことに。y座標バグが見つかってからここまでたったの一日で大きく進みました。
そのままCubeさんに画像を作ってもらい画像が完成、タイトルも内部の格子点の「1点」と試験の点数の「1点」をかけ、センター試験の終了という時事ネタも含んだ「1点にかける思いは変わらない」に決定しこれで謎の制作が終了・・・
と思っていた最後の最後で「このとき」を「『コ』のとき」と読ませることを思いつきました。グラフの追加、面積と数字/文字を対応させるやつの修正、例示の積分式の変更を一瞬で終え、ミスがないことも確かめてついに謎の制作が完了しました。16匁、完成です。あらゆるところに意味がある、とてもきれいな謎になったなと思います。
ちなみにスプシに「関係ないグラフがある」と書かれていましたが、1本はグラフ特定を助けるために意図的につけた接線で、残り2本はこの最後の調整時の消し忘れです。惑わせてすみません。
16匁が解かれるのを見て
16匁が解かれたのは5月2日の9時〜12時、41匁と違いリアルタイムで謎判明から解読までの全てを見ることができました。解読所要時間は3時間13分、今煎唯一の3時間台でヒントなしでは最長です。個人的にはあらゆる点で理想的だったなと思っています。想定していた導線にそってグラフや積分の特定がすすみ、甜菜が面積と数字/文字の関係をひらめき、センター試験の数学ⅡBにも気づいてもらえ、短いpspsの後に甜菜が内部の格子点に気づいて現地を導き、意味不明な現地ヒントが一瞬で解かれてすぐに突撃され、その後「『コ』のとき」が気づかれる。集合知で謎が想定通りに完璧に解かれるのは見ていて本当に楽しかったです。
最後に
結果的に「謎としてのひらめきが何箇所もある数学問題」になり、どうなるか不安したが、無事に解けたうえいくつか称賛のツイートもあってとても嬉しいです。Cubeさん、こだまんさん、あーくさん、そしてGMのみんなとあんたがたのみなさん、改めてありがとうございました。
あと数学を謎にするのは楽しい。今度確率とか整数問題とかで謎を作ってみようかな・・・
かなりの長文でしたがここまで読んでいただきありがとうございました。
KaDi