【研究】マルチ・ライムについて
マルチ・ライムというのは複数語において脚韻することを指しています。重要なのは、これは「複数の文字」、あるいは「母音を合わせる」ことではないってことです。
なぜ複数語であることが重要かというと、これが単語を交換しつづけ、最良の手段を模索し、新たな”ライムのパターン”を作ることを可能とするからです。
ライムのパターンというのは、例えばリンゴと金庫という2つの語があったとき、この韻の組み合わせはすでに使用済ということになるわけで、次に誰かが同様のパターンをやっても、そこに新規性はないわけです。というわけで、創造性の競争が起こるってわけです。
これは「何文字も韻を踏んだ」という不毛な競争とは違います。だって”量”なんて人によっちゃ気にしないですからね。量的な問題で境界線を引くなんてどんなジャンルだろうとオカシイです。
でもスキルのことでもないんですよ。新しさを発揮するってことです。
そしてこのライムのパターンに触れていると、ラップをするときにすごく有利に働きます。というのも、これは革新的な連想法で、自分が考えもしなかった言葉を生み出す事ができるからです。
積の法則の概念をご存知でしょうか。これは数学にあるもので、「ある場合が a 通り、別のある場合が b 通りあるとき、それらを同時に行う場合は a⋅b 通りある(by Wiki)」というものです。
何が言いたいかというと、韻Aが4つ、韻Bが4つずつあると、そこには16の道順があるのです。しかもこの2語には接続の語があるので、それを含めるともっとです。つまり...
韻A:甘い、硬い、赤い、高い
韻B:人魚、金庫、ヒント、リンゴ
→ 甘い人魚、甘い金庫、甘いヒント...
このようになるのです。もちろん16の道順には意味の破綻しているものがあるんですが、例えば「甘い金庫」は鍵が甘いということも言えますし、「高い金魚」は競売された人魚とも見えます。
このように、これを繰り返すと考えてもみなかった言葉が出てくるのです。単純ですが、効果的ですよね。
この例では接続語を省いたので、次はその接続する詞も入れてみましょう。例えばこうです。
① 俺は好きだぜりんごの味
いたって普通の文章から始めましょう。ではここから”味”を交換してみましょうか。こうです。
② 俺は好きだぜりんごの菓子
こうなりました。せっかく”りんごの菓子”としたので、そこに繋がる前述の文をいじってみましょう。
③ 格差社会を覗く、様はりんごの菓子
こうです。金網が見えるでしょうか?
では今度は②に戻って、接続の詞をいじってみましょう。こうなると助動詞も副詞もOKなんですが、適当にやってみましょう。
④ パイが食いたきゃ、作りなリンゴから菓子
こんな感じです。取り分欲しけりゃリンゴの”歌詞”を作ってみなって感じですね。
まあ内容ないのはともかく、ここで言いたいのは、こうやって単語を交換していると、ただのリンゴからはでなかったアイデアが出てくるってわけです。
特に接続の詞は、前提として覚えておくとかなり有効です。以前にそれらの略した表記を載せたんで、それも使うと金棒ですね。
この手法はストーリーテリングのラップのような書く意味が限られるときにも有効です。散発的な、韻先行の内容でないときでもです。
① 書きたいことを考える
② その書くことに含まれるキーワードを出す
③ キーワードを踏まえ、複数語を交換し連想する
こんな感じです。
というわけでマルチ・ライムについてでした。記事、次が最後になるんですが、熟語の省略について書こうと思います。お楽しみに。
そんではまた。